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6 口付け

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「それで?今日はどんなふうに殺してくれるの?」

「………………この状態では殺すも何もないと思うのですが………………」

 アザリアの身体の上には、指一本動かせないくらいにかっちりとアザリアをベッドに縫い付けている王子がいる。
 そもそも武器すらも手に取れない状況なのだから、殺すも何もない。

「えぇー、つまらないなぁ」

「………なら、さっさと、大人しく、早急に、死んでください。というか、殺されてくださいな」

「俺より強くなったらねぇ」

 軽薄に笑う王子に、アザリアはぷくぅっと可愛らしく頬を膨らませる。
 その愛らしい仕草に大抵の男はころっと騙されて死んでくれるのだが、彼は全くもって騙される気配も死んでくれる気配もない。
 厄介極まりない人間とはまさにこういう人間のことを言うのだろう。

「もうっ、そんなこと言って殺されてくれる気なんてさらさらないのでしょう?意地悪なお方ですわ」

 やっとのことで身体を解放されたアザリアはナイフを王子の顔面目掛けて全力で振るが、手は簡単に握り込まれ、武器を落とした手は恋人繋ぎに結ばれる。

「ひゃっ、」

 ベッドに戻された瞬間には顔中目掛けて口付けが落とされるのだから、心臓に悪すぎる。

 ———ちゅっ、ちゅぅ、ちゅ、ちゅ、

 額に、頬に、鼻に、首筋に、ふわふわと落とされる口付けは恥ずかしいのに、あったかくて心地いい。
 こんな口付けがあるなんて、この任務で死なない王子さまに関わるまで全く知らなかった。

「可愛い可愛いリア。今日も俺の掌の上で踊っておくれ」

 なんだか耳の奥に碌でもないことを吹き込まれたような気がしたが、アザリアは聞かなかったことにしてふわっと微笑んだ。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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