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39 足りない情報

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 その選択肢に首を振ったアザリアは、右手の人差し指の爪を噛む。


(もしも仮にそうであるのならば、ハンドラーはわたくしが彼に近づくことを良しとしなかったはずだわ。
 ハンドラーは異常なまでに赤の一族にこだわり、嫌悪し、憎悪している。
 赤という単語が出るだけで過剰に反応し、赤の一族の任務を受けようとした人間を容赦なく折檻するハンドラーがこのわたくしに、組織の中でもナンバー2、女性だけの中ならばナンバー1の実力の持ち主であり、ハンドラーのお気に入りであるこのわたくしが、この任務を受けることを許されるはずがない)


 窓の外に見える黄昏を睨みつけながら、アザリアは瞑目する。


「分からないわね。圧倒的に情報が足りない………、」


 大きく溜め息を吐いたアザリアは、王妃の部屋に漂っていた甘ったるい匂いを落とすためにシャワーを浴びる。

 さっぱりとした後は冷たく冷やした紅茶を飲み一息。
 サクサクふわふわに焼き上げられたスコーンをお供にするというのは至福の時間だ。
 べっとりと生クリームを乗せたスコーンを口の中に運び、冷たい紅茶と一緒に楽しむアザリアは気だるげな溜め息をこぼす。


「明日は第1王子、明後日は国王、か………、」


 瞼を開けていることすらも億劫に感じてしまうぐらいに今日は疲れた。

 暗殺者はいついかなる時いかなる瞬間も気を抜いてはならない。
 そのはずなのに、アザリアは最近ここを自らの巣だと錯覚し、ぐっすり安眠してしまうようになってきてしまっている。


(ほんとうに、………よくない、わ………………、)


 マシュマロみたいにふかふかのベッドにばさっと倒れ落ちたアザリアは、食べかけのスコーンを持ったままとろとろとした微睡の中に落ちていってしまった。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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