完 暗殺姫は、今日も溺愛王子を殺せない

水鳥楓椛

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40 寝起き

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▫︎◇▫︎


「ん、」


 自らの身じろぎをする声によって目覚めたアザリアは、自らのことをぎゅうぅっと抱きしめる王子に溜め息をこぼした。
 ここに来てから幸せを逃してばかりいる気がする。

 無防備に眠っている王子は控えめに言って美しい。
 流石は美女と名高かったメイドと美青年と名高かった王弟の間に生まれた子供だ。天使のように愛らしい。
 これは神にいくつもの贈り物をされるわけである。


「ふぁう、」

「つっ、」


 寝ぼけた王子がアザリアの肩を少し強く噛んだ。
 口が空いたなと思った次の瞬間には噛まれていたため、避けようがなかった。
 というか、がっつり噛みすぎだ。


「りにゃ………、むにゃむにゃ、」


 ぎゅうぅっと抱きつく腕が強まって背中からぼきぼきと嫌な音が鳴る。


(いや、これ本当に締め殺されるわ)


 思いっきり胸を叩いて王子を起こそうとしたアザリアは、けれどその少し上にある痛々しい包帯を見てぴたっと手の動きを止めた。

 先日アザリアが深く刺したナイフの跡は、彼の首にしっかりと刻み込まれている。
 これはしばらく治らないだろうし、下手したら傷跡も残ってしまう。


(いいえ、残っても構わないのよ。
 だってわたくしはこいつを殺すのだから。
 ………そもそも、わたくしは何故今こいつを起こそうとしているの。
 今殺してしまえば、今悩んでいること全てが解決するのに、何故わたくしは、今の状況に縋りついているの?何故、わたくしは………、)


 ———分からない、分からない分からない、分からない分からない分からない、分からない分からない分からない分からない分からない!!


 彼の寝巻きをぎゅっと握りしめたアザリアは、目を見開いた状況で固まり、背筋をぐっしょりと濡らすほどの冷や汗をかいた。


*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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