完 暗殺姫は、今日も溺愛王子を殺せない

水鳥楓椛

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61 癖

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「あ、アザリアっ!?」

「な、なんでも、ございません。ただ、無性に、懐かしく………?」

「………………」


 無言で固まったアルフォードに安心させるように微笑んだアザリアは、心の中で渦巻く不可思議な感情に、一瞬首を傾げるも、すぐに首を横に振った。


「王子さまは、何か癖がありますか?」

「癖、か?」

「はい。癖ですわ」


 アザリアの突然の話題転換に、アルフォードは僅かに怪訝そうな顔をした後に、じーっと考え込む。


「膝を組むこと、だろうか。
 幼い時に左肩に大怪我を負っていた時期があったんだ。その時期、左半身を庇うために足を組んでいたのだが、今はそれが当たり前になっている。こういうものでいいのか?」


 至極真面目に返された言葉に、アザリアは満足そうに大きく頷いた。


「ありがとうございます。暗殺の参考にさせていただきますわね」

「………普通、それを堂々と言うものか………………?」

「ふふふっ。ちなみに、わたくしの癖は振り子時計の扉の中に隠し物をすることですわ」

「それ、言ったら隠し事にならないだろ」


 ふはっと吹き出したアルフォードに笑いかけたアザリアは、メイク道具を取り出しながら、アルフォードに向けてしっしというジェスチャーをする。


「お化粧がしたいので、今度こそ出ていってください。お化粧まで見せるつもりはありませんわ」


 一瞬粘ったアルフォードだったが、アザリアの意思が強いことを感じ取り、短いため息を吐いてから部屋を出ていった。

 彼の背中を見送ったアザリアは、今度は大きなため息を吐いた。
 一生分の気を使い切ったような感覚だ。


「………少しでも多く、書き記さないと」


 暗殺のために必要な情報が事細かに記されているノートに、アザリアは新たな情報をいくつもいくつも書き記す。

 数カ国をも軽く滅ぼすことのできる情報が詰まった手記の表紙を撫でたアザリアは、次の瞬間には、王宮から姿を消していた———。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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