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番外編③

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「それじゃあ、父上に告げ口に行こうか」
「は、い………?」

 甘い空気が霧散したあたりで彼女を抱きしめるのをやめた俺は、魔王と恐れられる父上譲りの空気を纏い、エルナに手を差し伸べる。

「今回の件、感謝もしているがやはりアリエルの行動は気に食わないし、人の恋路に勝手に頭を突っ込んだ挙句、掻き回すだけ掻き回して自分は全く関係ないという態度はよろしくない。噂によれば、アリエルの行動のせいで縁談が潰れてしまった案件もあるらしい。………まあ、あれは浮気性の男の浮気が表に出ただけだから自業自得とも言えるが………。それを加味したとしても、甘やかしすぎるのはあいつのためにならないから、とりあえず父上に告げ口する」

 俺の言葉に眉を下げたエルナは、小さく首を横に振った。

「きょ、今日だけは見逃しませんか?………わたくしはあのお方に、今日の件はものすごく感謝しているのです。このままでは間違いなく、わたくしはあなたさまと向き合えなかった。だから………、」
「………………わかった」

 可愛い婚約者のお願いに負けた俺は、苦笑してから窓の外を見つめる。
 馬車が出発したであろう方向には握ら家な街。
 俺がいずれ導かねばならぬ国民が暮らしている。

(うっ、想像しただけで胃が………、)

 小さく溜め息をついた俺は、胃薬を煽りながら、心の中で呪詛を吐く。

(覚えてろよ、クソ姉貴)

 今日は、否、今日も俺はアリエルの無茶振りで破天荒な行動のせいで、連帯責任として父上と母上に叱られることになるだろう。
 だが、それも心地よいと思ってしまう俺は、どうしようもなくアリエルを尊敬してしまっているからであるらしい———。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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