8 / 167
1章 幸せの花園
1 ノアール・フォン・アイゼン (7)
しおりを挟む
手の指が終わったら足の指、足の指が終わったら腕、腕が終わったら足、………だんだんと、着実に、父王の身体が小さくなっていく。
痛みで気を失うことさえも許されない父王は、もはや絶叫を上げるだけのゼンマイ仕掛けのお人形のようだった。
父王の首が落とされ、妾?が父王と同じことをされ始める。
ノアールはただただぼーっとその状況を放心したように眺めることしかできない。
母妃は随分と前から気を失い、もう何も言わなくなっていた。
———僕は、どうすれば良いの………?
呆然と、漠然と、時間は流れていく。
誰も助けてくれない悲惨な状況で、ましてや誰にも愛されないノアールが誰かに助けてもらえるわけがない。
自力で逃げるしかないと分かっていても、どこかで自分はここで殺されておくべきなんだと叫ぶ自分がいる。
部屋の端でお腹から夥しい量の血を流す騎士が、最後の力と言わんばかりに口元を動かす。歪で読み取れないような拙い動き。
けれど、ノアールには彼の言いたいことが痛いほどに伝わってきてしまった。
『に、げ、………ろ、』
ノアールは目を見開いた。
こんな自分でも生きていて良いんだと言われたような気がした。
ノアールは知っている。
この部屋に、隠し扉があることを。
ノアールは知っている。
隠し扉のその先に、緊急避難通路が存在していることを。
ノアールは知っている。
この部屋に、自分が助けるべき人間が存在していないことを。
「ごめんなさい、王妃殿下、………国王陛下」
小さく呟いたノアールは、パッと駆け出す。
目指すは玉座の真後ろの床。
ノアールが特定のリズムで踵を鳴らすと、床が抜けてベシャっと身体が地下に落ちた。
———いたい、
受け身を取ることもなく地下水路に落ちたノアールは、霞む意識の中で涙を流した。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
次話から2話です。
痛みで気を失うことさえも許されない父王は、もはや絶叫を上げるだけのゼンマイ仕掛けのお人形のようだった。
父王の首が落とされ、妾?が父王と同じことをされ始める。
ノアールはただただぼーっとその状況を放心したように眺めることしかできない。
母妃は随分と前から気を失い、もう何も言わなくなっていた。
———僕は、どうすれば良いの………?
呆然と、漠然と、時間は流れていく。
誰も助けてくれない悲惨な状況で、ましてや誰にも愛されないノアールが誰かに助けてもらえるわけがない。
自力で逃げるしかないと分かっていても、どこかで自分はここで殺されておくべきなんだと叫ぶ自分がいる。
部屋の端でお腹から夥しい量の血を流す騎士が、最後の力と言わんばかりに口元を動かす。歪で読み取れないような拙い動き。
けれど、ノアールには彼の言いたいことが痛いほどに伝わってきてしまった。
『に、げ、………ろ、』
ノアールは目を見開いた。
こんな自分でも生きていて良いんだと言われたような気がした。
ノアールは知っている。
この部屋に、隠し扉があることを。
ノアールは知っている。
隠し扉のその先に、緊急避難通路が存在していることを。
ノアールは知っている。
この部屋に、自分が助けるべき人間が存在していないことを。
「ごめんなさい、王妃殿下、………国王陛下」
小さく呟いたノアールは、パッと駆け出す。
目指すは玉座の真後ろの床。
ノアールが特定のリズムで踵を鳴らすと、床が抜けてベシャっと身体が地下に落ちた。
———いたい、
受け身を取ることもなく地下水路に落ちたノアールは、霞む意識の中で涙を流した。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
次話から2話です。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる