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1章 幸せの花園

1 ノアール・フォン・アイゼン (7)

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 手の指が終わったら足の指、足の指が終わったら腕、腕が終わったら足、………だんだんと、着実に、父王の身体が小さくなっていく。
 痛みで気を失うことさえも許されない父王は、もはや絶叫を上げるだけのゼンマイ仕掛けのお人形のようだった。

 父王の首が落とされ、妾?が父王と同じことをされ始める。

 ノアールはただただぼーっとその状況を放心したように眺めることしかできない。
 母妃は随分と前から気を失い、もう何も言わなくなっていた。

 ———僕は、どうすれば良いの………?

 呆然と、漠然と、時間は流れていく。
 誰も助けてくれない悲惨な状況で、ましてや誰にも愛されないノアールが誰かに助けてもらえるわけがない。

 自力で逃げるしかないと分かっていても、どこかで自分はここで殺されておくべきなんだと叫ぶ自分がいる。

 部屋の端でお腹から夥しい量の血を流す騎士が、最後の力と言わんばかりに口元を動かす。歪で読み取れないような拙い動き。
 けれど、ノアールには彼の言いたいことが痛いほどに伝わってきてしまった。

『に、げ、………ろ、』

 ノアールは目を見開いた。
 こんな自分でも生きていて良いんだと言われたような気がした。

 ノアールは知っている。
 この部屋に、隠し扉があることを。

 ノアールは知っている。
 隠し扉のその先に、緊急避難通路が存在していることを。

 ノアールは知っている。
 この部屋に、自分が助けるべき人間が存在していないことを。

「ごめんなさい、王妃殿下、………国王陛下」

 小さく呟いたノアールは、パッと駆け出す。
 目指すは玉座の真後ろの床。

 ノアールが特定のリズムで踵を鳴らすと、床が抜けてベシャっと身体が地下に落ちた。

 ———いたい、

 受け身を取ることもなく地下水路に落ちたノアールは、霞む意識の中で涙を流した。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
次話から2話です。

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