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1章 幸せの花園
32 墓参り (3)
しおりを挟むかさっ、
草がかき分けられる小さな音を耳にして、ノアはゆっくりと振り向いた。
「———魔女さま」
白銀のチリチリの髪を靡かせた魔女は紫のリップをしたくちびるをゆっくりと持ち上げ、ふわっと微笑む。
その腕には生気をなくしたフクが抱かれていた。
「この子が亡くなってからだいぶ経っちゃってるからねぇ。腐る前に埋めた方がいいかなぁ~って思ってぇ」
「そう、ですか」
曖昧に微笑んだノアは、眠ったように死んでいるフクに手を伸ばし、魔女の腕の中で丸くなっているフクの頭を撫でた。
「………子供の体力では、ノアとおんなじ病気には勝てなかったみたいだねぇ」
「そう、ですか」
「病気は勝手にかかるものだからぁ、ノアのせいじゃないよぉ」
「………………」
「まぁ、気になるならぁ、埋めちゃう前にぃいぃっぱい可愛がっておあげぇ」
「はい」
魔女から渡されたフクを優しく抱きしめたノアは、随分と軽くなってしまったフクをあやすように揺らしながら抱きしめる。
「フクはねぇ、最後まで粘り強かったんだよぉ。普通の子供なら死んじゃうだろぉっててところまで弱ってもぉ、暑さでぐずりながらぁにぱにぱ笑ってたわぁ」
「そう、ですか………」
ノアよりもずっとずっと小さな身体。
ノアが守らないとあっという間に飛んでいってしまいそうな命。
あっという間に消えていった命は、たくさんの苦労をしたことだろう。
「………………よく、頑張ったね。フク」
自然とくちびるを出ていった言葉は、ちゃんとフクに届いただろうか。
ノアは小さな箱の中にフクを入れながら、心の中で希う。
———どうか、どうか、女神さまのお膝元でたくさん笑って、たくさん幸せになれますように。
美しき星空の下、ノアは魔女に土魔法で青いクリスタルを生み出してもらいながらもう1度讃美歌を歌う。
目を閉じて左右に揺れている魔女は、ノアのことを後ろから抱きしめ、ずっと頭を撫でてくれていた。
星空は、月は、ノアのことを明るく照らしていた———。
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