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1章 幸せの花園
34 ノアの宿命、指名、義務 (2)
しおりを挟むノアは恵まれている。
学ぶ機会を持っている。
強くなる機会を持っている。
全能と呼ばれた先生と最強と呼ばれている師匠を持っている。
———大丈夫、僕は《最恐》になれる。
ふわっと浮かべた微笑みは一瞬のうちに引っ込められ、ノアはさっと居住いを正す。
ぱぱっと先ほど作ったりんごのジャムを真っ白な小皿に移して、焼いておいたスコーンと共に大きなお皿に並べる。ぷっくりと膨れ上がった蔦柄が愛らしい白緑の陶器のお皿は、魔女のお気に入り。
一通り身だしなみを確認したノアは、問題がないことを確認したのちにゆっくりと魔女の身体をゆすって起こす。
「ん、」
紫のルージュからこぼれ落ちる艶やかな吐息にどきりとしながらも、ノアはゆっくりと魔女の身体をゆすり続ける。
「魔女さま、魔女さま、お夜食のお時間ですよ。今日は新しく作ったばかりのりんごのジャムをたっぷり使ったスコーンですよ。お食べにならないのですか?」
「………たべ、る………………、」
むぐーっとでも言いたげな眠たい声に、ノアは苦笑した。
「食べたらちゃんと歯磨きをして、お布団で眠ってくださいね?昨日みたいに床で寝ちゃダメですよ?死んでるんじゃないかと思ってびっくりしてしまいます」
「わかってるよぉ」
くあっと大きなあくびと共に伸びをした魔女は、ご機嫌そうにノアの作った夜食に手をつける。
「そぉ言えばぁ、わたしは寝過ごしちゃったけどぉ、今日のお夕食はなんだったのぉ?」
「ご心配なく、魔女さまのお夜食と同じものをいただきました」
嘘だ。
ノアは何も食べていない。
にっこり笑って言い切ったノアの嘘に、魔女は気がついてしまっただろうか。
「なら良いけどぉ、食べないとぉ、人間っておっきくなれないからねぇ。気をつけるのよぉ~」
「はい」
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