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 密かに恋をしていた人からの告白によって心の中を巣食う寂しさに、僕は諦めるように苦笑した。

「………えぇよ~。で?何作りたいん?僕、これでもパティシエの息子やけん、色々作れるよ」
「えぇっと、何が1番簡単ですか?」
「別にチョコなんてパティシエの本気やなかったら、基本なんでも一緒やない?」
「えっと、じゃあ、マカロン………!」

 ぱあぁっと顔が輝いたきなこさんには悪いが、突っ走る方向が悪い。
 僕は苦笑しながら黒胡麻色の癖っ毛を掻き混ぜる。

「マカロン………、それまた難しいの行ったねぇ」
「え、そ、そんな………。マカロンって難しいのですか?」
「難しいよ。パティシエでさえも最初は苦労するお菓子第1位やね」

 ちなみに僕もマカロンは最初5回も失敗してしまった。
 カピカピになったりドロドロになったり、それはそれは痛い目を見たお菓子だ。

「まあ、きなこさんならできるんやない?」
「む、むむむっ、無理ですっ!」

 あまりにもブンブンと首を振るために、僕は首を傾げた。何度も言うが、彼女は容姿端麗、才色兼備、文武両道の完璧美少女だ。
 僕が心配するまでもなくきなこさんは1発で完璧な料理を………、作ってはくれなかった。

「こ、これ何?」

 3時間後、僕の目の前にあったのは炭になったぐしゃぐしゃの物体。
 丸でもない。薄茶でもない。

「ま、マカロン?」

 首を傾げて微笑む姿は可愛い。めちゃくそ可愛い。

 けど、

「これはないっ!!」
「っ、」

 こんなメタクソ料理は初めて見た。
 そもそも僕の父はパティシエで僕の母はフレンチのコック、妹に至っては管理栄養士を目指すご飯のスペシャリストだ。
 我が家でぐしゃぐしゃのご飯なんて見たことがない。

「ひとまず、なぜこうなったのかの検分をせな………!!」

 ピエ、フランス語で「足」という意味を持つ、マカロンの生地の下の部分にできるはみだした生地ができないのは、

 ・メレンゲがしっかり泡立っていないこと
 ・乾燥不足、もしくは乾燥のさせ過ぎ
 ・オーブンの火力が弱いこと

 ぐらいの3つが考えられる。

 マカロンの表面に大きなヒビが入っているのは、

 ・乾燥が十分にできていないこと
 ・オーブンの温度が低すぎること
 ・マカロナージュ、生地とメレンゲの泡をつぶしながら混ぜ合わせて、生地の固さ調整をする作業が不足していること

 ぐらいの3つ。

 その他にも、乾燥に時間がかかる場合はそもそも生地が原因があることが多い。

(でも、ちゃんとやってたよな………)

 粉類であるアーモンドプードル 90g、粉糖 80g、ココアパウダー 10gを玉にならないようにしっかりと篩にかけ、そのあと卵2つ分の卵白を白くなるまでしっかりと電動泡立て器を用いて泡立て、グラニュー糖 70gを小分けにしてツノが立つまで混ぜてメレンゲを作った。そして、粉類とメレンゲをゴムベラで切るように混ぜ合わせ、マカロナージュを作った。

 ここまでは確かに問題なかったはずだ。慣れないことをしていることによってもたつきはあったとしても、丁寧で問題のない手付きだった。

 この後しぼりで生地を作る際に色々あったが、それもまあ許容範囲内だった。
 オーブンはケーキ屋さんである我が家自慢のオーブンを僕が設定して使用した。

 失敗する要素はない。ないはずなのに、失敗が起きた。
 それがまた面白いと感じる僕は、相当にお菓子作りというものの魅力に取り憑かれてしまっているのだろう。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
次の更新は18時です!!

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