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3,謝る
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「ぅ…」
「?!シオン!」
シオンがうめき、わずかに身じろいだ。サンカはバッと顔を上げて彼の顔をのぞき込む。
「サンカ…?」
「うぁ…シ、オン…っ!生き、生きて…っ」
生きている。小さな弟の左目が開き、血だらけの唇で名を呼んだ。嬉しさと安堵でうまく言葉が出ず、涙がぼろぼろと流れ落ちる。
「ごめんね…サンカ。泣かないで…ごめんなさい」
「なん、何で…謝る…?大丈夫だ…!待ってろ、すぐ病院に連れて行ってやる…っ」
何故か謝罪の言葉を言うシオンの頬をなで、サンカは手に伝わるぬくもりを確かめると、人を呼びに行かなければと立ち上がる。
「ごめんなさい…」
シオンは走って行く兄の背を残った目で追い、謝り続けた。
3日後。
「君を襲ったのはどんな人だった?」
街の総合病院の一室。シオンはベッド上で身体を起こし、訪ねてきた街の警備員から事情聴取を受けていた。滅多に凶悪な事件の起こらないウェア王国には大規模な警察組織はなく、各街に数名ずつ、警察と同じような役割を担う警備員が在中している。
「…わからない、です」
シオンは彼の質問に首を横に振る。シオンの顔右半分は包帯で覆われていた。3日前のあの日、サンカが隣家に助けを求め、シオンはすぐに病院に運び込まれた。無理やりえぐり取られたであろう右目の傷は深いものだったが、縫合され、感染症などのおそれはなかった。また、それ以外の大きな怪我もなかった。そして、兄弟の両親はその場で死亡が確認された。父親は頭を潰され、母親は首を切り裂かれており、即死だった。
葬儀は親族がいないため、今日、近隣の人らの好意で出すことが出来た。シオンは参列せず、サンカも無理しなくていいと気遣われたが、きちんと別れをしたいと訴え、両親を送り出してきた。
「じゃあ、知っている人だった?それとも、全然知らない人?」
「わかんな…っわかんない…!」
シオンは涙ぐみ、ふるふると首を振る。よみがえるのは身体を押さえつけられる恐怖、嫌だと言ってもやめてくれない嫌悪、苦痛、そして、気を失うほどの激痛。その人のにこやかな笑顔の印象は強く残っているのに、顔はかすみがかかっていて。知っている顔なのか、知らない顔なのかさえわからなかった。
「よく思い出して。お父さんとお母さんは…」
「やめろ。わからねぇって言ってんだろ」
さらに追求する警備員を制止したのは病室の壁に寄りかかり、見守っていた兄のサンカ。ベッドに歩み寄ると、隠すように震える弟を抱きしめる。
「サンカ君、犯人を見たのはシオン君だけなんだ。一刻も早く犯人を捕まえるために、協力してもらわないと」
この街で初めて起きたと言っていい、残忍な殺人事件。しかも、王国が国を閉じて以降なくなっていた、数十年ぶりに起こった金眼の略奪事件だ。警備員は早急に解決しなければと意気込んでいる。しかし、現場は街の外れにあり、犯人の目撃情報もなければ、不審な物音を聞いた人すら近隣にいない。唯一の目撃者であるシオンしか、頼る情報がないのだ。
「捕まえなくていい」
「はっ?」
サンカの被害者遺族らしからぬ発言に、警備員は面食らう。何をしてでも犯人を捕らえ、罪を償わせたいと思うのが遺族だろう。
「犯人捕まえたら、父さんと母さんは帰ってくんのかよ。コイツの眼、元に戻るのかよ」
「それは…」
それを問われると『ノー』以外の答えはなく、返す言葉がない。
「だから、いい。コイツにあんなこと、もう思い出させんな…!」
サンカはすがりつくシオンをぎゅっと抱きしめ、警備員をにらむ。その恐怖感を与える漆黒の瞳に警備員はたじろぎ、これ以上の聴取をあきらめざるをえなかった。
「サンカ、怒っているの?」
警備員が渋々出て行き、兄弟ふたりだけになった病室。黙ってしまったサンカの顔をのぞき込み、シオンはおずおずと聞く。
「…ああ」
サンカはシオンと目も合わせず、うなずく。
「ごめんなさいっ!お願い、僕を嫌いにならないで!」
「何でお前が謝るんだ?お前は何も…」
必死に謝ってくる弟にぎょっとする。思えばシオンは犯人に襲われ、サンカが駆けつけた時にも謝っていた。謝らなければならない落ち度は何もないはずだ。
「だって、この眼…。サンカだけにしか見せないって約束したのに、守らなかったから…怒っているんでしょ?」
サンカはがく然とする。両親を殺され、自分も死ぬかもしれないという時に、そんな重要でもないことを気にしていたのか。両親より、自分自身より、血のつながりもない兄との約束を。
「…違ぇよ」
泣きそうな顔で見上げてくるシオンをまた抱きしめる。怒っているのは自分自身にだ。何であの日に限ってのんきに練習試合に出ていたのか。引き止められようと、すぐに帰らなかったのか。自分がいれば、両親を死なせなかった。弟の眼を奪わせなかった。相打ちになってでも、犯人をぶっ倒せた。いくら嘆いても、後悔してもしきれない。
「謝るのは俺だ!ごめんな、シオン…っ!守って、やれなくて…っ」
「サンカ…?」
痛いほど強く抱きしめられながら、シオンは何故謝るのかと、震える兄の服をぎゅっと握った。
1週間後、シオンは退院した。右目の傷は痛々しく包帯は取れないが、慣れれば日常生活に問題ないと診断されていた。
「こんにちは。初めまして。サンカ君とシオン君ですね」
総合病院を出るなり、待ち構えていたらしい女性がふたりに声をかけてくる。
「…ああ」
「こ、こんにちは…」
サンカはジロッと彼女をにらみ、シオンはさっとサンカの背後に隠れてあいさつを返す。彼女は街の首長。後ろには補佐官らしい者が立ち、さらに後ろには公用車が停まっている。
「シオン君、退院出来て良かったですね」
「うん」
にこりと笑いかけられ、シオンは恥ずかしがりながらもうなずく。
「何?何か用」
サンカはあからさまに迷惑そうな顔をして聞く。
「あなたたちを迎えに来ました」
「迎え?」
「ええ、これからあなたたちが生活するところに案内します」
「児童養護施設、か」
「そうです。よく知っていますね」
保護者のいない16歳以下の子どもは養護施設で保護し、生活をすると法律で決まっている。サンカもシオンの両親がいなければ、4年前にそこへ行くことになったはずだ。
「断る」
「えっ?」
「んなとこ、行かねぇよ」
「どうしてですか?あなたたちのような友達が何人もいますよ。職員の方たちも優しいですし、何も心配いりません」
首長はまさかはっきりと拒否されるとは思わず、内心焦って説明する。
「行かねぇっつってんだろ。俺はもう大人に頼らねぇ」
「サンカ君、あなたたちだけでどうやって生活するつもりなのですか?大人の助けがないと…」
「知ってんだろ、俺の前の親もどうなったか」
「え…ええ」
首長はためらいつつ、うなずく。
養護施設で保護するにあたって、ふたりに血縁がないことやサンカの両親が列車事故の犠牲者だということも彼女らは承知の上だろう。彼の両親となった者は最悪の事故と凄惨な殺人事件で命を落とした。それはどれほどの確率だろうか。
「アンタも俺に関わらねぇ方がいい。死ぬぞ」
14歳とは思えない、世の中すべてを恨んでいるかのような歪んだ表情と、得体の知れない恐怖を与える漆黒の瞳。死を招く子ども。死に神。そんな言葉が思い浮かんでしまう。
首長らはゾッとし、通り過ぎていく兄弟を引き止めることが出来なかった。
「サンカ、うちに帰らないの?」
自宅と反対方向に歩いていくサンカを、シオンは見上げる。
「ん、ああ…お前、久しぶりに外出たろ。少し、歩かねぇと」
サンカはもう自宅に帰る気はなかった。おそらく、あの警備員がシオンから犯人の情報を聞き出すために自宅を張っているだろうし、あんなむごいことを思い出す場所にシオンをいさせたくない。
「うん!」
シオンはにこりと笑ってサンカの手を握る。温かい、小さな手。何を失っても、弟だけは守り抜く。サンカはその手を握り返した。
しばらく歩き、ふたりは隣街の公園まで来ていた。日が傾き、もうすぐ暗くなってくるだろう。サンカは疲れた様子のシオンをベンチに座らせ、水のボトルを手渡す。
「腹減ってねぇか」
「ううん、大丈夫」
水を飲むシオンの隣に座り、頭をなでる。そのくったくのない笑顔に、すさむ気持ちが落ち着いていく。サンカは背負ったリュックに、ありったけの現金と数日分の水、パンなどの食べ物を入れていた。幸い寒い季節ではないが、それだけでずっと生活出来る訳ではないし、今夜寝る場所すら決まっていない。リュックの中身が底をつく前に、どうにかしなければと思っていた、その時
「あー、喉渇いた」
いつの間にかやって来た、フードを目深にかぶった男が背後からシオンの持つ水のボトルを取りあげる。
「?!」
「な…っ?」
ふたりは驚き、構わずその水を飲む男を見上げる。
「はい、ありがとう」
彼はあっけにとられるシオンに、ボトルを手渡した。
「もうすぐ夕食時だけど、うちに帰らないの?」
サンカが文句を言う前に、ぎゅっと寄せ合うように後ろからふたりの肩をつかむ。うっとうしい、お節介な大人かと、サンカは思う。子どもふたりで歩いているのを見かけ、世話を焼こうと声をかけてきたのだろう。
「関係ねぇだろ。行くぞ、シオン」
サンカはパッとその手を払い、立ち上がってシオンの手を取る。
「関係あるよ」
「あ?」
「私のこと、知らない?」
男は言いながら、目深にかぶっていたフードを頭から取った。
「?!シオン!」
シオンがうめき、わずかに身じろいだ。サンカはバッと顔を上げて彼の顔をのぞき込む。
「サンカ…?」
「うぁ…シ、オン…っ!生き、生きて…っ」
生きている。小さな弟の左目が開き、血だらけの唇で名を呼んだ。嬉しさと安堵でうまく言葉が出ず、涙がぼろぼろと流れ落ちる。
「ごめんね…サンカ。泣かないで…ごめんなさい」
「なん、何で…謝る…?大丈夫だ…!待ってろ、すぐ病院に連れて行ってやる…っ」
何故か謝罪の言葉を言うシオンの頬をなで、サンカは手に伝わるぬくもりを確かめると、人を呼びに行かなければと立ち上がる。
「ごめんなさい…」
シオンは走って行く兄の背を残った目で追い、謝り続けた。
3日後。
「君を襲ったのはどんな人だった?」
街の総合病院の一室。シオンはベッド上で身体を起こし、訪ねてきた街の警備員から事情聴取を受けていた。滅多に凶悪な事件の起こらないウェア王国には大規模な警察組織はなく、各街に数名ずつ、警察と同じような役割を担う警備員が在中している。
「…わからない、です」
シオンは彼の質問に首を横に振る。シオンの顔右半分は包帯で覆われていた。3日前のあの日、サンカが隣家に助けを求め、シオンはすぐに病院に運び込まれた。無理やりえぐり取られたであろう右目の傷は深いものだったが、縫合され、感染症などのおそれはなかった。また、それ以外の大きな怪我もなかった。そして、兄弟の両親はその場で死亡が確認された。父親は頭を潰され、母親は首を切り裂かれており、即死だった。
葬儀は親族がいないため、今日、近隣の人らの好意で出すことが出来た。シオンは参列せず、サンカも無理しなくていいと気遣われたが、きちんと別れをしたいと訴え、両親を送り出してきた。
「じゃあ、知っている人だった?それとも、全然知らない人?」
「わかんな…っわかんない…!」
シオンは涙ぐみ、ふるふると首を振る。よみがえるのは身体を押さえつけられる恐怖、嫌だと言ってもやめてくれない嫌悪、苦痛、そして、気を失うほどの激痛。その人のにこやかな笑顔の印象は強く残っているのに、顔はかすみがかかっていて。知っている顔なのか、知らない顔なのかさえわからなかった。
「よく思い出して。お父さんとお母さんは…」
「やめろ。わからねぇって言ってんだろ」
さらに追求する警備員を制止したのは病室の壁に寄りかかり、見守っていた兄のサンカ。ベッドに歩み寄ると、隠すように震える弟を抱きしめる。
「サンカ君、犯人を見たのはシオン君だけなんだ。一刻も早く犯人を捕まえるために、協力してもらわないと」
この街で初めて起きたと言っていい、残忍な殺人事件。しかも、王国が国を閉じて以降なくなっていた、数十年ぶりに起こった金眼の略奪事件だ。警備員は早急に解決しなければと意気込んでいる。しかし、現場は街の外れにあり、犯人の目撃情報もなければ、不審な物音を聞いた人すら近隣にいない。唯一の目撃者であるシオンしか、頼る情報がないのだ。
「捕まえなくていい」
「はっ?」
サンカの被害者遺族らしからぬ発言に、警備員は面食らう。何をしてでも犯人を捕らえ、罪を償わせたいと思うのが遺族だろう。
「犯人捕まえたら、父さんと母さんは帰ってくんのかよ。コイツの眼、元に戻るのかよ」
「それは…」
それを問われると『ノー』以外の答えはなく、返す言葉がない。
「だから、いい。コイツにあんなこと、もう思い出させんな…!」
サンカはすがりつくシオンをぎゅっと抱きしめ、警備員をにらむ。その恐怖感を与える漆黒の瞳に警備員はたじろぎ、これ以上の聴取をあきらめざるをえなかった。
「サンカ、怒っているの?」
警備員が渋々出て行き、兄弟ふたりだけになった病室。黙ってしまったサンカの顔をのぞき込み、シオンはおずおずと聞く。
「…ああ」
サンカはシオンと目も合わせず、うなずく。
「ごめんなさいっ!お願い、僕を嫌いにならないで!」
「何でお前が謝るんだ?お前は何も…」
必死に謝ってくる弟にぎょっとする。思えばシオンは犯人に襲われ、サンカが駆けつけた時にも謝っていた。謝らなければならない落ち度は何もないはずだ。
「だって、この眼…。サンカだけにしか見せないって約束したのに、守らなかったから…怒っているんでしょ?」
サンカはがく然とする。両親を殺され、自分も死ぬかもしれないという時に、そんな重要でもないことを気にしていたのか。両親より、自分自身より、血のつながりもない兄との約束を。
「…違ぇよ」
泣きそうな顔で見上げてくるシオンをまた抱きしめる。怒っているのは自分自身にだ。何であの日に限ってのんきに練習試合に出ていたのか。引き止められようと、すぐに帰らなかったのか。自分がいれば、両親を死なせなかった。弟の眼を奪わせなかった。相打ちになってでも、犯人をぶっ倒せた。いくら嘆いても、後悔してもしきれない。
「謝るのは俺だ!ごめんな、シオン…っ!守って、やれなくて…っ」
「サンカ…?」
痛いほど強く抱きしめられながら、シオンは何故謝るのかと、震える兄の服をぎゅっと握った。
1週間後、シオンは退院した。右目の傷は痛々しく包帯は取れないが、慣れれば日常生活に問題ないと診断されていた。
「こんにちは。初めまして。サンカ君とシオン君ですね」
総合病院を出るなり、待ち構えていたらしい女性がふたりに声をかけてくる。
「…ああ」
「こ、こんにちは…」
サンカはジロッと彼女をにらみ、シオンはさっとサンカの背後に隠れてあいさつを返す。彼女は街の首長。後ろには補佐官らしい者が立ち、さらに後ろには公用車が停まっている。
「シオン君、退院出来て良かったですね」
「うん」
にこりと笑いかけられ、シオンは恥ずかしがりながらもうなずく。
「何?何か用」
サンカはあからさまに迷惑そうな顔をして聞く。
「あなたたちを迎えに来ました」
「迎え?」
「ええ、これからあなたたちが生活するところに案内します」
「児童養護施設、か」
「そうです。よく知っていますね」
保護者のいない16歳以下の子どもは養護施設で保護し、生活をすると法律で決まっている。サンカもシオンの両親がいなければ、4年前にそこへ行くことになったはずだ。
「断る」
「えっ?」
「んなとこ、行かねぇよ」
「どうしてですか?あなたたちのような友達が何人もいますよ。職員の方たちも優しいですし、何も心配いりません」
首長はまさかはっきりと拒否されるとは思わず、内心焦って説明する。
「行かねぇっつってんだろ。俺はもう大人に頼らねぇ」
「サンカ君、あなたたちだけでどうやって生活するつもりなのですか?大人の助けがないと…」
「知ってんだろ、俺の前の親もどうなったか」
「え…ええ」
首長はためらいつつ、うなずく。
養護施設で保護するにあたって、ふたりに血縁がないことやサンカの両親が列車事故の犠牲者だということも彼女らは承知の上だろう。彼の両親となった者は最悪の事故と凄惨な殺人事件で命を落とした。それはどれほどの確率だろうか。
「アンタも俺に関わらねぇ方がいい。死ぬぞ」
14歳とは思えない、世の中すべてを恨んでいるかのような歪んだ表情と、得体の知れない恐怖を与える漆黒の瞳。死を招く子ども。死に神。そんな言葉が思い浮かんでしまう。
首長らはゾッとし、通り過ぎていく兄弟を引き止めることが出来なかった。
「サンカ、うちに帰らないの?」
自宅と反対方向に歩いていくサンカを、シオンは見上げる。
「ん、ああ…お前、久しぶりに外出たろ。少し、歩かねぇと」
サンカはもう自宅に帰る気はなかった。おそらく、あの警備員がシオンから犯人の情報を聞き出すために自宅を張っているだろうし、あんなむごいことを思い出す場所にシオンをいさせたくない。
「うん!」
シオンはにこりと笑ってサンカの手を握る。温かい、小さな手。何を失っても、弟だけは守り抜く。サンカはその手を握り返した。
しばらく歩き、ふたりは隣街の公園まで来ていた。日が傾き、もうすぐ暗くなってくるだろう。サンカは疲れた様子のシオンをベンチに座らせ、水のボトルを手渡す。
「腹減ってねぇか」
「ううん、大丈夫」
水を飲むシオンの隣に座り、頭をなでる。そのくったくのない笑顔に、すさむ気持ちが落ち着いていく。サンカは背負ったリュックに、ありったけの現金と数日分の水、パンなどの食べ物を入れていた。幸い寒い季節ではないが、それだけでずっと生活出来る訳ではないし、今夜寝る場所すら決まっていない。リュックの中身が底をつく前に、どうにかしなければと思っていた、その時
「あー、喉渇いた」
いつの間にかやって来た、フードを目深にかぶった男が背後からシオンの持つ水のボトルを取りあげる。
「?!」
「な…っ?」
ふたりは驚き、構わずその水を飲む男を見上げる。
「はい、ありがとう」
彼はあっけにとられるシオンに、ボトルを手渡した。
「もうすぐ夕食時だけど、うちに帰らないの?」
サンカが文句を言う前に、ぎゅっと寄せ合うように後ろからふたりの肩をつかむ。うっとうしい、お節介な大人かと、サンカは思う。子どもふたりで歩いているのを見かけ、世話を焼こうと声をかけてきたのだろう。
「関係ねぇだろ。行くぞ、シオン」
サンカはパッとその手を払い、立ち上がってシオンの手を取る。
「関係あるよ」
「あ?」
「私のこと、知らない?」
男は言いながら、目深にかぶっていたフードを頭から取った。
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