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27,興味ない
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「…ここで俺が前方につくから、シオンは後方を頼む」
「はい」
夕食後、シオンはフブキの自室に招かれ、ふたりで明日の任務の打ち合わせをしていた。テーブルに現地の見取り図を広げ、わきに置かれたお茶の入ったカップからたつ湯気が揺らめく。
仕事の一環ではあるが夕食後なのもあり、ふたりは黒コートも青布も身につけず、ほとんどプライベートの雰囲気。シオンはサングラスを着けたままだが。
「お前は優秀だ。お前と一緒だと、安心して任務につける」
「ありがとうございます」
フブキのほめ言葉に、シオンは嬉しい訳でもないが口角を上げる。
「打ち合わせはこれくらいでいいだろう」
「はい、明日よろしくお願いします」
椅子から立ち上がったフブキを見て、シオンも席を立とうとすると
「シオン」
「っ!」
フブキは一瞬のスキをつき、シオンの顔からサングラスを外した。薄紫色の髪がさらりとほほに垂れる。
「他の者に素顔を見せないのはいいが…俺にその必要はないぞ」
「フブキさん…」
あらわになった端正な顔立ちを満足げに見つめる。そして、返す気はないとばかりに、シオンのサングラスをズボンの後ろポケットに引っ掛けた。
フブキはシオンが幼い頃からずっと、そのかわいらしさに心奪われてきた。成長するにつれ、美しく妖艶な雰囲気になる彼を手に入れたいと思っていた。これまであの双子がいたために歯がゆい思いをしてきたが、今なら遠慮なく攻めることが出来る。
「綺麗だ、シオン」
眉をひそめるシオンのあごに手をやると、唇に唇を寄せる。
「…っやめてください」
シオンは腕で自分の口を覆い隠す。
「何故、嫌がる…?俺はお前を愛していると何度も伝えたはずだが」
「私はあなたに相応しい人間ではありません」
「何を言う。お前以上の者など存在しない。美しく、強く、完璧だ。俺に最も相応しい」
フブキはシオンの口元を隠している腕を握り、キスを迫る。好意をはっきり伝え、今まで数回求めたが毎回拒絶されていた。
シオンは彼とキスをする気も、気持ちに応える気もまったくない。握られていない方の手を伸ばすと、フブキのポケットのサングラスを取る。
「…申し訳ありません」
腕を握るフブキの手を払い、サングラスをかける。そして、「失礼しました」とフブキの自室を出て行った。
「ふん…憎らしいほど守りが堅い」
フブキの穏やかだった表情が歪み、閉まったドアを忌々しげににらむ。テーブル上の手のつけられなかったカップを手に取り、バスルームへ向かう。
「だからこそ、落としがいがある」
ニヤリとあやしく笑みを浮かべ、カップのお茶を流し台に捨てる。わずかにアルコールの匂いがバスルームに漂った。
「クラウドさ~ん!冗談キツイですよ~!」
「ははっ!悪い悪い」
後輩護衛と楽しげに話しながら廊下を歩くのは、赤髪のクラウド。王室護衛となって3年。黒いロングコートと、鉢巻きのように頭に着けた青布の正装も馴染み、面倒見の良い気さくな性格が後輩から慕われている。
「クラウド」
声をかけられ、振り向くとシオンが歩み寄ってくる。
「シオンさん!お疲れさまですっ!」
「はい、お疲れさまです」
後輩はビシッと姿勢を正し、シオンに頭を下げる。護衛たちには特別厳しくはないが、体育会系らしい上下関係がある。戦闘能力が高く、キャリアの長いシオンはカリスマ性もあり、後輩護衛たちから一目置かれている。
「何だよ?俺はもう勤務明けだぞ」
クラウドはあからさまに嫌そうな顔で話す。彼もシオンの後輩になるのだが、同級生なのもあり、態度は学生時代と変わらない。
「知っています。先ほどまで、あなた方は国境の見回りでしたよね」
「護衛全員の任務内容覚えているのかよ。相変わらず腹立つな」
「お疲れの様でしたら、私だけでもいいのですが」
「はあ?」
「王子があなたと遊びたいとご要望です」
「なっ?!早く言えよ!行くに決まっているだろ!!」
王子の名を聞き、つかみかからんばかりに怒鳴る。
次期国王ティリアス王子は今9歳。クラウドはシオンと共に王子お気に入りの遊び相手だ。勤務の合間にふたりでよく王子の自室を訪れている。
「かわいいよなぁ、王子は。お前と違って」
クラウドは後輩護衛と別れ、王子の自室にシオンと向かいながら、ニコニコと話す。王子の顔はクラウドのタイプどストライク。もちろん、顔だけでなくかわいらしい素直な性格にも心酔している。
「私と比べないでください。それと、王子をもっと敬ってください」
「まだ子どもなんだから、いいだろ」
学生時代とさほど変わらないふたりの会話。しかし、シオンに好意を寄せる者たちから見たら、クラウドの存在は邪魔でしかない。誰に対しても丁寧に対応するシオンだが、どこか他人行儀で。お互い遠慮なく親しげに会話する様子は、クラウドが特別だからなのではと思えるからだ。
しかも、先輩護衛に対して物怖じしないクラウドは、ただでさえかわいくない生意気な後輩。目つきが鋭いのもそれに拍車をかけている。
本当のところ、クラウドにとってシオンは気にくわないライバル。シオンは幼なじみなので、単純に話しやすいというだけだ。
「急に呼び出してごめんね」
「いえ」
護衛長トージはウェア王の執務室に呼び出されていた。穏やかに謝る王の前で片膝をつき、深く頭を下げる。
「最近、護衛たちの様子はどう?」
「はい、変わらず国と陛下のために任務を遂行しております」
「うん、勤務体制は変わらないよね。そうじゃなくてさ、シオンをめぐって色々あるんじゃないの?」
「は…っそ、それは…」
トージは言葉に詰まる。まさか、そのことが王にまで伝わっていたとは。
護衛長に就任して数か月たち、護衛たちの統率は順調だった。シオンに対してフブキやナツが積極的にアプローチしていることも把握はしている。今のところ、それによって仲違いなどのトラブルにまで発展しておらず、見守るだけにとどめていた。それに、プライベートに当たるようなことへ口出しするのはやはりためらいがある。
「ああいうコだからね。前まではうるさいのがいたから、みんな遠慮してたんだろうけど」
「し、シオンのことは私が全力をもって、何事もなく任務に勤しめるようにいたしますので、どうかご心配なく…っ」
シオンは王と王子のお気に入りでもある。彼がフブキらのアプローチによって悩んだり、任務に支障が出たりするようなことがあっては一大事だ。トージは脂汗をかきながら、さらに頭を下げる。
「ふふっ、シオンは大丈夫だよ。人に興味ないコだから」
「は、はぁ…」
王がそうじゃないよとばかりに笑い、トージは恐る恐る顔を上げる。
「あのコより、心配なコがいるんだよ」
王は憂いを含んだ表情になり、つぶやいた。
「あの…っクラウドくん」
「はい?」
おどおどとした声に名を呼ばれ、クラウドは振り向く。ナツが申し訳なさそうな顔で立っていた。
「少し話があるんだけど、いいかな…?」
「何ですか?」
ナツはクラウドの横に並び、人のいない中庭へ向かう。1年先輩のナツにクラウドは一応敬語を使うが、自分より戦闘能力の高いクラウドに対し、ナツは遠慮がちになってしまう。けれど、どうしても確かめたいことがあり、勇気を出して話しかけたのだ。
「君はシューカ街の学校出身だよね」
「はい」
「シオンくんとは…」
「同級生ですけど…?」
シオンの名が出たことで、クラウドは嫌な予感がした。
「もしかして、つ、付き合っていたり…するのかな…?」
「はぁあ?!そんな訳ないじゃないですか!!」
広い中庭にクラウドの大声が響き渡る。
「でも、仲良いから…」
「良くないですよ!俺はあいつ嫌いですから!!」
クラウドは必死に否定する。シオンに淡い恋心を抱いていたこともあるため、ムキになってしまうのだ。
「そ、そうなんだ…」
ここまで否定されるとは思わず、ナツは少し引く。
「あいつとの変な噂、流さないでくださいよ?!」
クラウドはプリプリ怒りながら、中庭から城内に入る階段へ引き返していく。
「うん…わかったよ」
残されたナツは彼を見送り、シオンとそういった関係ではないとわかって安堵していた。
「おらぁっっ!!」
中庭から戻った直後、前を歩くシオンを見つけたクラウドはいきなり背後から体当たりしにいく。
「チッ…避けるな!!」
スルッと避けられ、舌打ちして怒鳴る。
「何を言っているのですか」
気づいたのにわざわざ体当たりされる者などいないと、シオンは呆れる。
「お前なぁ、わかっているんだろ?!」
クラウドは指差して怒鳴りつける。クラウドもシオンに好意を向けている者が多数いることは知っている。何故か誤解され、ナツだけでなく、他にも数人からシオンと付き合っているのかと問い詰められたことがある。
「何をですか」
「誰にでも思わせぶりな態度してないで、はっきり言えよ!!誰とも付き合う気がないって!!」
「…何故ですか」
「マジかよ…っ」
冗談でなく、本気で何故かわからないらしいシオンに、クラウドは呆れて天を仰ぐ。このいけ好かない同志は他者に興味がない上、向けられている好意に対して鈍過ぎる。そのうち一服盛られて寝込みを襲われるのではと、したくもない心配をしてしまう(実際、未遂だがフブキにやられている)。
「それより、あなたの態度の方が問題ではないですか」
「はぁ?」
「レイニーさんとシャウアさんも心配しておられましたよ。あなたはもう少し先輩方へ敬いの気持ちをもってください」
「俺は陛下に仕える護衛だ。あの人たちまで敬う必要ないだろが」
「あります。私に対しては構いませんが、他の先輩方にはきちんと…」
逆に自分への説教が始まってしまい、クラウドはぷちんとキレる。
「…っもういい!俺は王子のお部屋に行く!!」
「クラウド、話を聞いてください」
「うるさい!!」
後をついて来るシオンに怒鳴りながら、ズカズカ歩いて行く。その様子はやはり端から見れば、何でも言い合える仲の良い学生同士のようで。
「…」
そんなふたりを壁の陰から、憎々しく見ている者がいた。
「はい」
夕食後、シオンはフブキの自室に招かれ、ふたりで明日の任務の打ち合わせをしていた。テーブルに現地の見取り図を広げ、わきに置かれたお茶の入ったカップからたつ湯気が揺らめく。
仕事の一環ではあるが夕食後なのもあり、ふたりは黒コートも青布も身につけず、ほとんどプライベートの雰囲気。シオンはサングラスを着けたままだが。
「お前は優秀だ。お前と一緒だと、安心して任務につける」
「ありがとうございます」
フブキのほめ言葉に、シオンは嬉しい訳でもないが口角を上げる。
「打ち合わせはこれくらいでいいだろう」
「はい、明日よろしくお願いします」
椅子から立ち上がったフブキを見て、シオンも席を立とうとすると
「シオン」
「っ!」
フブキは一瞬のスキをつき、シオンの顔からサングラスを外した。薄紫色の髪がさらりとほほに垂れる。
「他の者に素顔を見せないのはいいが…俺にその必要はないぞ」
「フブキさん…」
あらわになった端正な顔立ちを満足げに見つめる。そして、返す気はないとばかりに、シオンのサングラスをズボンの後ろポケットに引っ掛けた。
フブキはシオンが幼い頃からずっと、そのかわいらしさに心奪われてきた。成長するにつれ、美しく妖艶な雰囲気になる彼を手に入れたいと思っていた。これまであの双子がいたために歯がゆい思いをしてきたが、今なら遠慮なく攻めることが出来る。
「綺麗だ、シオン」
眉をひそめるシオンのあごに手をやると、唇に唇を寄せる。
「…っやめてください」
シオンは腕で自分の口を覆い隠す。
「何故、嫌がる…?俺はお前を愛していると何度も伝えたはずだが」
「私はあなたに相応しい人間ではありません」
「何を言う。お前以上の者など存在しない。美しく、強く、完璧だ。俺に最も相応しい」
フブキはシオンの口元を隠している腕を握り、キスを迫る。好意をはっきり伝え、今まで数回求めたが毎回拒絶されていた。
シオンは彼とキスをする気も、気持ちに応える気もまったくない。握られていない方の手を伸ばすと、フブキのポケットのサングラスを取る。
「…申し訳ありません」
腕を握るフブキの手を払い、サングラスをかける。そして、「失礼しました」とフブキの自室を出て行った。
「ふん…憎らしいほど守りが堅い」
フブキの穏やかだった表情が歪み、閉まったドアを忌々しげににらむ。テーブル上の手のつけられなかったカップを手に取り、バスルームへ向かう。
「だからこそ、落としがいがある」
ニヤリとあやしく笑みを浮かべ、カップのお茶を流し台に捨てる。わずかにアルコールの匂いがバスルームに漂った。
「クラウドさ~ん!冗談キツイですよ~!」
「ははっ!悪い悪い」
後輩護衛と楽しげに話しながら廊下を歩くのは、赤髪のクラウド。王室護衛となって3年。黒いロングコートと、鉢巻きのように頭に着けた青布の正装も馴染み、面倒見の良い気さくな性格が後輩から慕われている。
「クラウド」
声をかけられ、振り向くとシオンが歩み寄ってくる。
「シオンさん!お疲れさまですっ!」
「はい、お疲れさまです」
後輩はビシッと姿勢を正し、シオンに頭を下げる。護衛たちには特別厳しくはないが、体育会系らしい上下関係がある。戦闘能力が高く、キャリアの長いシオンはカリスマ性もあり、後輩護衛たちから一目置かれている。
「何だよ?俺はもう勤務明けだぞ」
クラウドはあからさまに嫌そうな顔で話す。彼もシオンの後輩になるのだが、同級生なのもあり、態度は学生時代と変わらない。
「知っています。先ほどまで、あなた方は国境の見回りでしたよね」
「護衛全員の任務内容覚えているのかよ。相変わらず腹立つな」
「お疲れの様でしたら、私だけでもいいのですが」
「はあ?」
「王子があなたと遊びたいとご要望です」
「なっ?!早く言えよ!行くに決まっているだろ!!」
王子の名を聞き、つかみかからんばかりに怒鳴る。
次期国王ティリアス王子は今9歳。クラウドはシオンと共に王子お気に入りの遊び相手だ。勤務の合間にふたりでよく王子の自室を訪れている。
「かわいいよなぁ、王子は。お前と違って」
クラウドは後輩護衛と別れ、王子の自室にシオンと向かいながら、ニコニコと話す。王子の顔はクラウドのタイプどストライク。もちろん、顔だけでなくかわいらしい素直な性格にも心酔している。
「私と比べないでください。それと、王子をもっと敬ってください」
「まだ子どもなんだから、いいだろ」
学生時代とさほど変わらないふたりの会話。しかし、シオンに好意を寄せる者たちから見たら、クラウドの存在は邪魔でしかない。誰に対しても丁寧に対応するシオンだが、どこか他人行儀で。お互い遠慮なく親しげに会話する様子は、クラウドが特別だからなのではと思えるからだ。
しかも、先輩護衛に対して物怖じしないクラウドは、ただでさえかわいくない生意気な後輩。目つきが鋭いのもそれに拍車をかけている。
本当のところ、クラウドにとってシオンは気にくわないライバル。シオンは幼なじみなので、単純に話しやすいというだけだ。
「急に呼び出してごめんね」
「いえ」
護衛長トージはウェア王の執務室に呼び出されていた。穏やかに謝る王の前で片膝をつき、深く頭を下げる。
「最近、護衛たちの様子はどう?」
「はい、変わらず国と陛下のために任務を遂行しております」
「うん、勤務体制は変わらないよね。そうじゃなくてさ、シオンをめぐって色々あるんじゃないの?」
「は…っそ、それは…」
トージは言葉に詰まる。まさか、そのことが王にまで伝わっていたとは。
護衛長に就任して数か月たち、護衛たちの統率は順調だった。シオンに対してフブキやナツが積極的にアプローチしていることも把握はしている。今のところ、それによって仲違いなどのトラブルにまで発展しておらず、見守るだけにとどめていた。それに、プライベートに当たるようなことへ口出しするのはやはりためらいがある。
「ああいうコだからね。前まではうるさいのがいたから、みんな遠慮してたんだろうけど」
「し、シオンのことは私が全力をもって、何事もなく任務に勤しめるようにいたしますので、どうかご心配なく…っ」
シオンは王と王子のお気に入りでもある。彼がフブキらのアプローチによって悩んだり、任務に支障が出たりするようなことがあっては一大事だ。トージは脂汗をかきながら、さらに頭を下げる。
「ふふっ、シオンは大丈夫だよ。人に興味ないコだから」
「は、はぁ…」
王がそうじゃないよとばかりに笑い、トージは恐る恐る顔を上げる。
「あのコより、心配なコがいるんだよ」
王は憂いを含んだ表情になり、つぶやいた。
「あの…っクラウドくん」
「はい?」
おどおどとした声に名を呼ばれ、クラウドは振り向く。ナツが申し訳なさそうな顔で立っていた。
「少し話があるんだけど、いいかな…?」
「何ですか?」
ナツはクラウドの横に並び、人のいない中庭へ向かう。1年先輩のナツにクラウドは一応敬語を使うが、自分より戦闘能力の高いクラウドに対し、ナツは遠慮がちになってしまう。けれど、どうしても確かめたいことがあり、勇気を出して話しかけたのだ。
「君はシューカ街の学校出身だよね」
「はい」
「シオンくんとは…」
「同級生ですけど…?」
シオンの名が出たことで、クラウドは嫌な予感がした。
「もしかして、つ、付き合っていたり…するのかな…?」
「はぁあ?!そんな訳ないじゃないですか!!」
広い中庭にクラウドの大声が響き渡る。
「でも、仲良いから…」
「良くないですよ!俺はあいつ嫌いですから!!」
クラウドは必死に否定する。シオンに淡い恋心を抱いていたこともあるため、ムキになってしまうのだ。
「そ、そうなんだ…」
ここまで否定されるとは思わず、ナツは少し引く。
「あいつとの変な噂、流さないでくださいよ?!」
クラウドはプリプリ怒りながら、中庭から城内に入る階段へ引き返していく。
「うん…わかったよ」
残されたナツは彼を見送り、シオンとそういった関係ではないとわかって安堵していた。
「おらぁっっ!!」
中庭から戻った直後、前を歩くシオンを見つけたクラウドはいきなり背後から体当たりしにいく。
「チッ…避けるな!!」
スルッと避けられ、舌打ちして怒鳴る。
「何を言っているのですか」
気づいたのにわざわざ体当たりされる者などいないと、シオンは呆れる。
「お前なぁ、わかっているんだろ?!」
クラウドは指差して怒鳴りつける。クラウドもシオンに好意を向けている者が多数いることは知っている。何故か誤解され、ナツだけでなく、他にも数人からシオンと付き合っているのかと問い詰められたことがある。
「何をですか」
「誰にでも思わせぶりな態度してないで、はっきり言えよ!!誰とも付き合う気がないって!!」
「…何故ですか」
「マジかよ…っ」
冗談でなく、本気で何故かわからないらしいシオンに、クラウドは呆れて天を仰ぐ。このいけ好かない同志は他者に興味がない上、向けられている好意に対して鈍過ぎる。そのうち一服盛られて寝込みを襲われるのではと、したくもない心配をしてしまう(実際、未遂だがフブキにやられている)。
「それより、あなたの態度の方が問題ではないですか」
「はぁ?」
「レイニーさんとシャウアさんも心配しておられましたよ。あなたはもう少し先輩方へ敬いの気持ちをもってください」
「俺は陛下に仕える護衛だ。あの人たちまで敬う必要ないだろが」
「あります。私に対しては構いませんが、他の先輩方にはきちんと…」
逆に自分への説教が始まってしまい、クラウドはぷちんとキレる。
「…っもういい!俺は王子のお部屋に行く!!」
「クラウド、話を聞いてください」
「うるさい!!」
後をついて来るシオンに怒鳴りながら、ズカズカ歩いて行く。その様子はやはり端から見れば、何でも言い合える仲の良い学生同士のようで。
「…」
そんなふたりを壁の陰から、憎々しく見ている者がいた。
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