白銀色の中で

わだすう

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5,気の毒

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「お帰りなさいませ!」
「お疲れさまです!」

 ウェア城に戻って来た蓮たち4人を、護衛たちが笑顔で出迎える。

「ご、護衛長?!今回の保有者はそんなに手強かったのですか?!」

 クラウドが城を出る時の様子を見ていない護衛はボロボロのアラシを見て驚く。

「うん、まぁ…はは」

 苦笑いするアラシに、事情を知る護衛たちは心の中で敬意を表した。


「レン様」

 シオンは蓮の脱いだマントを受け取り、顔を寄せる。

「あ?」
「私は大臣にお話があるので、少々お待ちいただいてよろしいですか」

 何でという顔をする蓮ににこりと微笑み、大臣の執務室の方へ向かって行った。

「待つ訳ないだろ。行こうぜ、レン」

 それを見送り、クラウドは蓮の肩を抱いて自室の方へ向かおうとする。

「あっ、レン様!我々も保有者の抑制状況をウォータ大臣に報告しませんと…っ!」

 アラシはあわてて蓮を引き留める。

「お前が行けばいいだろ」
「ははっ!そうしろ、アラシ。レンの世話は俺に任せろよ」

 蓮がキッパリ拒否し、クラウドは愉快そうに笑う。

「世話なんかいらねーけど」
「まーた、かわいくないこと言いやがって~っ」
「れ、レン様ぁ~…っ!」

 話しながら行ってしまうふたりを追えず、アラシは泣き崩れる。
 やりとりを見守る護衛たちは護衛長が気の毒でならなかった。







「やっとふたりきりになれたな、レン」

 と、クラウドは自室のある城の4階廊下で蓮の腰をぎゅっと引き寄せる。

「ちょ…やめろ」
「つれないなー」

 近づけた顔をぐいーっと押し返され、苦笑いする。

「風呂行くから、離れろ」
「風呂なんか後でいいだろ。寒いなら、俺が温めてやるよ」
「うわ、キモ」
「なっ?!渾身の誘い文句だぞ?!」
「知るか」
「…ったく、お前は強引な方がいいんだな?」
「ああ?そん…っんん…!」

 背けていた蓮のあごをつかみ、無理やり唇を合わせる。逃げる舌を絡ませ、吸いあげ、角度を変えながら蓮の口内を味わう。蓮はキスに弱い。立っていられなくなった蓮の腰を抱き寄せ、唇を離す。

「…は、ぁっ」

 大きな目を潤ませ、頬を真っ赤にして見上げてくる蓮を、クラウドはめまいがしそうなほどかわいらしく思う。

「好きだ、レン…っ」

 愛しさを噛みしめ、ぎゅっと抱きしめた。

 クラウドのまっすぐな気持ちはうっとうしくもあり、心地よくもあって。蓮は拒む気持ちが薄れてしまう。何も言えなくなり、たくましい胸に顔をうずめた。






 結局、蓮はクラウドの自室に連れ込まれていた。ベッドに組み敷かれ、上着ははだけ、ズボンと下着は中途半端に片足に引っ掛かっている。

「ぁ、んん…っ」

 上半身裸のクラウドに先ほどからずっと、胸元にキスをされ、小さな突起をじっくりと舐められていた。そこは硬く主張し、時々吸われるとびくっと身体が震える。

「ここ、ずいぶん感じるようになったな」
「ん、な、わけねー…っだろ…!」

 蓮は父親との一件のトラウマで、誰であろうと男にのしかかられるのは恐怖でしかない。それに耐え、強気に言い返す。

「素直じゃないな…。そこもかわいいけど」
「…っあぁ!」

 過敏になった突起を甘噛みされ、思わず声をあげてしまう。

「う、ぅ…っ」

 羞恥と恐怖で涙がにじみ、身体を震わせて顔をそらす。

「いいんだよ。俺が感じさせてるんだ」

 蓮を怖がらせるのは不本意なクラウドは、謝るように優しく頬に触れる。

「もっと、感じさせてやるよ」

 と、蓮のがっちり閉じている膝に手を置き、広げる。

「ひ…っ」

 閉じたくても、力ではクラウドに敵わない。起ち上がり始めていた自身をさらされ、蓮は上ずった声がもれる。

「…マジ、かわいい」

 クラウドはそんな蓮を愛しげにながめ、指先をなめて湿らせる。

「うあっ?!」

 唾液をまとった指が後孔に触れ、ぬるりと押し込まれると大きく蓮の腰が跳ねる。

「ん…キツイな。しばらくヤってなかっただろ?」
「悪ぃ、か…っ」

 蓮は自分の世界の者と後孔を使った性交をしたことはない。王の『身代わり』という立場上、これはやむを得ず覚えさせられたことで。数カ月ぶりに粘膜を刺激する異物を出そうとするかのように、そこはクラウドの指をぎちぎちと締め付ける。

「いいや。俺が初めてみたいで、すげー嬉しい」
「んん、ば、バカか…っあぁ…!」

 クラウドは笑って蓮の唇にキスをし、指を更に奥へ押しこむ。念入りに粘膜をこすり、中を拡げていく。

「ふぅ、ん、ん…っ!」
「気持ちいいだろ?声出せよ、レン」

 歯を食い縛って声を抑える蓮にささやき、唇に舌を這わせる。こみ上げてくる快感に耐えながら、蓮は弱々しく首を横に振る。

「なら、ここは…どうだ?」

 中のしこりをぐっと押され、蓮の身体がびくんと大きく跳ねる。

「ぁあっ!嫌、イ…ク…っ!」

 強い射精感に喘ぐ声があがり、びくびくと身体が震え、自身からは先走りがあふれ出る。

「っと、待てよ」

 クラウドは蓮からずるっと指を抜く。

「一緒にイこうぜ、レン」
「あ…っ?」

 ひくひくともの欲しげに開閉する後孔に、熱く猛るものをあてがう。

「ん…っあ、ぁぁー…っ」

 思い切り突き入れたいのを抑え、ゆっくりと自身を蓮の中に埋めていく。指より熱く太いものに充たされ、圧迫感とそれ以上の快感に蓮の黒い瞳から涙がこぼれ出る。

「ん…すげ、気持ちいい…」

 クラウドは恍惚として蓮の頬にキスをし、涙を拭ってやる。

「動くぞ…?」

 蓮の呼吸が落ち着くのを待ち、腰をつかんで抽挿を始める。

「う、んっ、あ、あぁ…っ!」

 腰の動きに合わせ、蓮の苦しげに濡れたものも手でしごく。蓮はもう声を抑えることも出来ず、与えられる快感にただあえいだ。

「はぁ…っ!クラウド…っも、い、イク…!」

 再び来た射精感にたまらずクラウドの頭を抱え、赤髪をくしゃくしゃ乱す。

「いいぜ…っイけ…レン…っ!」
「んあ、あぁぁーっ!!」

 クラウドはしごく手を速め、腰を奥まで打ちつける。吹き出た白濁が蓮の腹に散り、後孔はぎゅうぎゅうクラウドのものを締め付ける。

「ん…っ」

 クラウドもぶるっと震え、蓮の中で絶頂した。

「は、はぁ…っあぁ…」
「ふぅ…温かく、なっただろ…?」

 息を乱して絶頂の余韻に震える蓮の顔や胸元に、満足げに何度もキスを落とす。

「好きだ…レン」

 そして、ささやきながら唇を深く重ねた。








「~♪」

 クラウドは鼻歌を歌いながら、廊下を歩いていた。腕の中の蓮は毛布に包まれ、疲労でうとうと眠りかけている。

 1年半前の蓮とクラウドの出会いは最悪な部類に入るだろう。けれど、何度か関わるうちにクラウドは蓮の容姿だけでなく、言動のかわいらしさにも惹かれていって。いつの間にか好きになっていた。
 告白の返事がなくとも、彼の中で蓮は『恋人』の位置である。蓮にそんな気は全くなく、あえて言うならセフレの位置か。

 ふと、前を見るとシオンがこちらに向かって歩いて来ていた。彼のトレードマークでもあった護衛の黒コートとサングラスではなく、使用人の白シャツに黒いリボンタイと黒の腰巻きエプロン姿。それでもモデルのような長身と端正な顔立ちを引き立て、はっとするほど魅力的に見える。クラウドも同じ服装だが、大多数に「似合わない」と酷評されているので、そんな彼が余計腹立たしい。

「用事は終わったのか?」

 目の前で歩を止めたシオンをにらむように聞く。

「ええ。あなたも終わったのではないですか」

 丁寧な口調だが、感情のない返事にクラウドの茶色い目がさらに鋭くなる。

「これから、風呂入るんだよ」
「それは私にお任せいただけませんか」
「はあ?ふざけ…っ?!」

 言い返そうとしたクラウドだが、言葉に詰まる。目の前のシオンから発せられる、殺気のこもった強い覇気。それ以上の発言も行動も出来ないほどの恐怖に圧倒される。

「レン様をこちらへ」

 差し出された手に、びくっと身体が強張る。

 従わないなら、殺す。

 冗談ではなく、奥の見えない紫の瞳がそう言っている。クラウドの背に冷や汗が吹き出る。

「ぐ…」

 クラウドは唇を噛み、すっかり眠っている蓮をシオンへ差し出していた。

「ありがとうございます」

 シオンは毛布ごと蓮を抱きかかえると、にこりと微笑む。

「…っ」

 一瞬で覇気が無くなり、そのギャップにクラウドは騙されたようでがく然となる。

「ひとつ、連絡があります。先ほど、ウォータ大臣に例の金色の目を持つ外国人の目撃証言が他の街でもないか、調べていただくよう要請しました。護衛たちが中心に動くことになるので、あなたにもご協力をお願いするかもしれません」
「…ああ」

 淡々と伝えられる業務連絡に、もう何か言う気もなく返事だけする。

「では、また」

 シオンは軽く会釈すると、来た道を引き返して行った。


「チィ…っ!」

 シオンの背が見えなくなり、クラウドは盛大に舌打ちして廊下の壁を殴る。壁はひび割れ、パラパラと床に粉が落ちる。

 護衛として現役の時から、いくらもがいても追いつけなかったシオンとの実力差。わかっていても認めたくなくて、距離を置いてきた。しかし、蓮をきっかけに嫌でもその差を見せつけられるようになって。こうして壁に当たっても、悔しさももどかしさもなくなりはしない。

 そこへ、ウォータ大臣に報告を終えて蓮を探しに来たアラシが、廊下を小走りでやって来る。

「クラウドさん!レン様はどちらに…っ」
「シオンに聞けよ」

 クラウドは目も合わせず、素っ気なく言う。

「えっ?どういう…うわ?!壁がっ!」

 アラシは意味がわからず聞き返そうとして、ひび割れた壁に気づく。

「ああ、直しておけよ」
「ええぇ?!ちょ…っ!」

 命令しながら行ってしまうクラウドを引き留めたい手だけが、宙をかく。壁の修繕など、護衛長の仕事ではない。立場は上になったはずなのに、かつての先輩にはどうしても頭が上がらない。アラシは大きくため息をついて手を下ろし、専門の使用人へ依頼しに行くことにした。
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