白銀色の中で

わだすう

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6,太陽

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「ん…」

 蓮はふと目を覚ました。心地よい温かさと夢の中のような浮遊感。あまりに気持ち良くて、再び眠りに落ちようとするが

「起きましたか、レン」
「っ!」

 背後から聞こえた声に意識を引き戻される。

「シオン…か?」
「はい」

 蓮はシオンに背後から抱えられ、湯船に浸かっていた。今、城内の浴場にいると状況を理解する。浴場は普通の銭湯くらい広くて、きれいな造りなのに利用者は少なく、風呂好きな蓮はよく利用していた。

「クラウドは…」

 確か、さっきまでクラウドと一緒にいたはずだが。

「何かご用があるそうですよ」
「…あ、そ」

 ためらいなく答えるシオンに絶対嘘だと思うが、あえてツッコミはしない。シオンとクラウドが自分をおもちゃのように取り合っていることは知っている。だからといって、どちらかに媚びる気は全くない。そんなことに気を揉むのは面倒だし、それも彼らにとっては友情なのだと蓮は勝手に思っている。実際は蓮の知らぬところで命懸けのやり取りがあるのだが。

「首以外のお怪我はないようで安心しました」
「ん…っちょ、やめ…」

 首筋のアザを指先でなぞられ、蓮はくすぐったくて首をすくめる。

「確かめるため、全身を洗わせていただきました」
「ぅ…ん…っ」

 その指が首から胸元、腹をなぞり、陰部の脇を通り、びくびくと震える身体をよじらせる。

「特にここは念入りに」
「ぁあっ?!」

 後孔を指先で押されて、びくんと大きく身体が跳ねる。

「眠っていらしても、気持ちよさそうでしたよ」
「…っく、ぅ…」

 ぐるぐる円を描くようにそこをなぞられる。意識のない間、身体の中のクラウドのものをかき出され、どんな醜態をさらしたのか。蓮はショックと羞恥で唇を噛み、込み上げる涙をこらえる。

「ふふ…いい表情ですね、レン」

 シオンは背後から蓮の顔をのぞきこみ、声を出して笑む。

「も、いい…っ出る…!」
「レン」

 耐え切れずに立ち上がろうとした蓮の腰を、させまいと抱きかかえる。

「あなたが起きるまで、待っていたのですよ」

 と、蓮のあごをつかみ、斜め上に向けさせる。眠っている間になぜ最後までしなかったのか、気づけと言うように。

「あ…」

 片方しかない、深い紫色の左目が真っ赤に染まる蓮の顔を見つめる。自分にしか見せないという、痛々しい右目の傷が薄紫色の髪の間からのぞき、蓮は拒む気が失せていく。

「愛しています、レン…」

 シオンは脱力した蓮にまた笑み、深く唇を重ねた。






「あぁっ!あ!はぁあっ!」

 湯船の中、浴槽に背を預け、蓮はシオンに激しく突き上げられていた。

「んぐ、ぅ…っ」

 熱さと苦しさから逃げようと浴槽のふちに肘をかけて身体を持ち上げるが、シオンはそれを許さない。腰を抱えられ、ますます深く押し込まれる。

「ぅあっ、シオ、ンっ!も、やぁ…っ!」
「まだ全然、足りませんよ…っ」

 反り返る蓮のものを強く握り、絶え間なく抽挿を続ける。

「あ…っ!く、はあぁ…っ!」

 射精をせき止められ、身体の中をえぐるように何度も突かれ、蓮は快感を逃そうと必死に息を吐く。

「ふ…っうぅ」

 シオンはそんな蓮をあざ笑うかのように唇をふさぎ、歯列をなぞり、舌を吸いあげる。

「いっ?!あ…っ!ああぁっ!!」

 何度目かの前立腺への刺激で、蓮の身体がびくんと強張り、絶頂の感覚だけが頭まで突き抜ける。空イキして視界がチカチカと弾け、気を失いかけるがそれさえも出来ない。

「レン…イキたい、ですか」

 シオンはガクガク震える蓮の首筋に舌を這わせ、耳たぶを食み、ささやく。

「イ、イキた…ぃ…っ」

 ドライでイクのはつらすぎる。蓮は強く握る手を離して欲しくて、すがるようにうなずく。

「ふ…では、『お願い』してください」

 シオンは蓮をいっそう追い詰め、羞恥心を煽る。

「…っ」
「レン…?」

 ためらう蓮を促すように、握ったものの先端を親指でこする。そこをなで続けられたら、また空イキしてしまう。それを防ぐには、従うしかない。

「シオン…っい、イか…せ、て…」

 蓮はぎゅっと目を閉じ、今にも消えそうな声で『お願い』をする。真っ赤な頬をぽろぽろと涙が伝って落ちる。

「はい、承知しました」
「ひ…っ!!」

 シオンはにこりと微笑むと握る力を弱め、再度蓮を突き上げる。

「うあ、ああぁーっ!!」

 待ちかねた激しい絶頂。悲鳴が浴場に響き、吹き出た白濁が床に散る。

「ん、レン…っ」

 シオンもうめき、蓮の中にそれを吐き出す。

「はぁ…」

 大きく息をつくと、意識を手放した蓮にキスをし、抱きしめた。











 翌朝。

「おはようございます。ご気分はいかがですか」

 相変わらず、何事もなかったかのように爽やかにシオンはあいさつをする。

「…最悪」

 蓮は自室のベッドに伏せたまま、めちゃくちゃ不機嫌な声で返事する。昨日の浴場での激しいセックスで、腕も腰も痛くて動くのもしんどい。

「そうですか。街への遠征は慣れないと大変でしょう」
「それ、マジで言ってんのかドS」

 朝食をテーブルに置きながら、からかうでもなく普通に話すシオンに、蓮は怒りを通り越して変な恐怖を感じる。

「今朝はあなたのお好きな玉子焼きを用意していただきましたよ」
「ガキ扱いすんな」
「お召し上がりになりませんか」
「…食う」
「はい」

 シオンはにこりと微笑み、スプーンとフォークを並べた。


 前護衛長であるシオンは、蓮とこの世界を繋いだ最初の人物。父親から戦闘能力と容姿しか引き継がなかった蓮に、この世界での使命と存在意義を伝えた。そして、男同士での性交を教えた、初めての相手でもある。基本無愛想で性格が悪く、素直ではない蓮の扱いを一番心得ているのは彼だろう。そのあたりが現護衛長のアラシに引き継がれていないのだった。


「ここ、どの街もあんなに警備が手薄なのか」

 蓮は玉子焼きを食べながら、お茶を淹れるシオンに聞く。昨日訪れた街はシューカ街ほどではないが、大きい街だった。そこの警備員が元王室護衛とはいえ、あの双子だけというのは信じられなかった。

「あの街は厳重な方ですよ。あのおふたりが警備員ですから」
「マジか」

 日本で犯罪すれすれのことばかりに関わっている蓮からしたら、それで治安が守られていることが不思議でならない。

「以前もお話しましたが、この国ではめったに凶悪な犯罪が起きません。よって、大規模な警察組織は必要ないのです。しかし、確かに今回のような全国規模の異変が起きると、その脆弱さが致命的になってしまうのは否めません」
「ふーん…」

 蓮は平常時の平和を維持出来る、金色の存在の大きさを思った。








「おはよう、レン!」

 朝食後、蓮は王の自室を訪れていた。昨日会った時と全然違う、キラキラと輝いてまぶしいほどの金色の瞳と笑顔。

「はよ」

 蓮もにっと笑い、あいさつを返す。

「朝ご飯は食べた?」
「ああ」
「玉子焼き、おいしかったねっ!」
「そうだな」

 王は蓮の手を引き、弾むような声で話しながら、部屋のソファーに一緒に座る。

「…あのさ、レン」

 蓮の両手を握り、うつむき気味にゆっくり話し始める。

「レンの言うとおりだね。いじけてたって、何も解決しない。僕は、僕がやるべきことをやらないといけない。国民、みんなが幸せになるって誓ったんだもの」

 ぎゅっと手を握る力が強くなる。

「僕はそのための王なんだから」

 顔を上げ、輝く金色が蓮の黒い瞳を見つめる。同じ顔のはずなのに、ひれ伏したくなるほどの神々しさ。

「僕、がんばるね、レン」

 にっこりと笑う王はすっかりいつもの、それ以上の気力を取り戻していた。

「ん」

 もう心配ないだろう。蓮は安堵して王を抱きしめ、背を優しく叩いてやる。


 ウェア王国に降り続いていた雪は止み、一月ぶりの太陽が雲間から城を照らしていた。











「レン様ぁああぁっ!!お久しぶりですっ!!こんなところでお会い出来るな…っぅぐは?!」

 蓮は突進してきた護衛の顔にタメなしで蹴りをくらわした。


 蓮はアラシと共に、ある街の警備員駐在所に来ていた。金眼保有者の抑制や例の外国人の調査ではなく、別の用件のためである。蓮が足を運ぶ必要はなかったが、直接行って確かめたいことがあったので、ついてきたのだ。


「お…変わりない…っ力強い蹴り…!素晴らしい!」

 蓮の蹴りを受けながら褒め称える彼は王室護衛のひとり、カンパ。警備の補佐のため、生まれ故郷のこの街に派遣されていた。

「はあ、れ、レン様の靴なら、喜んでなめ…っ」
「キモい」
「ぐふぅ!!」

 興奮して蓮の足をつかみ、さらに飛び蹴りをくらう。心身の打たれ強さに定評があるが、蓮への強い思いの表し方が気色悪い。

「カンパ、もういい。用件を済まそう」

 アラシは半分あきれ、部下に話を促す。

「は、はい!失礼しました!こちらです」

 カンパは鼻血を垂らしながら、駐在所の奥へ護衛長を案内する。

「入るよ?」

 奥の部屋への扉をノックし、開けると

「ぐおっ?!」

 ハードカバーの絵本が飛んできて、カンパのあごにヒットする。

「あ、あのねぇ、本を投げてはダメだと何度も」
「それあきた。他のないの」

 あごを押さえ、顔をひきつらせて注意するカンパに、反省の色なく要求するのは子どもの声。

「もう何十冊も持ってきたよね?」

 と、絵本を拾い、入った部屋には、たくさんの絵本やおもちゃに囲まれた子どもがひとり、クッションに座っていた。
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