黄金色の君へ

わだすう

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14,再会

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 1時間後。ウェア王国入りした蓮はぐったりと送迎車の後部座席にもたれていた。情事のあと動けなくなっていたため、シオンに背負われて国境の森を抜け、崖も降りた。しんどいやら情けないやらで、悪態をつく気力もない。

「お疲れさまです!護衛長!」
「はい、お疲れさまです。お願いします」
「はいっ」

 城を囲む深い森の入り口に立つ護衛たちがかけ寄り、護衛長の帰還にほっとした様子で通信機を操作する。

「お帰りなさいませ!レン様!」

 後部座席の蓮にも嬉々としてあいさつするが

「?!」

 超不機嫌な表情でギロリとにらまれ、ビクッとして固まった。




「着きましたよ、レン様。動けますか」
「るせー。触んな」

 ウェア城の高く分厚い塀の門前に着き、蓮は後部座席のドアを開けたシオンの手を払う。やはりシオンはあんなに手酷く人を犯したとは思えないほど落ち着いていて。仕事と割りきっているのだろうが、最中に何故か怒っていたり、苦しげな表情を見せるのは何なのかと蓮は思う。


 城のエントランスホールに入ると、前回とは全く違う雰囲気だった。蓮を出迎える者はおらず、国務大臣と護衛が足早に通りすぎたり、使用人たちがあわてて走って行ったりと慌ただしい。

「前代未聞のことですから、大臣方は情報収集に躍起になっており、我々護衛も翻弄されています」

 シオンが身を屈めて耳打ちする。

「ふーん…」

 興味なさげな反応をしてしまうが、蓮はこの様子を目の当たりにして改めてことの重大さを実感する。

「レン君!よく来てくれましたね」

 蓮に気づいた国務大臣、ザイルが声をかけてくる。

「大変ですが、よろしく頼みます」

 と、にっこり笑うがすぐ真剣な表情になり、城を出て行った。

「レン、私もこれからすぐ大臣のお供で城を出なくてはなりません。まだウォータ大臣もおられませんし、一旦お部屋に待機していてください」

 場所は覚えていらっしゃいますねとシオンが聞き、蓮はうなずく。

「レン」

 シオンはまた身を屈め、サングラスを外す。

「あなたは私が必ずお守りいたします」

 ささやくと唇に軽くキスをした。

「っ!」

 驚いて身を引く蓮に微笑み、では、とサングラスをかけながら大臣の執務室の方へ向かって行く。

「チッ…」

 蓮は舌打ちしてその背を見送った。




 具体的に何をしたらいいかわからないし、王子とどうすれば会えるのかも知らない。蓮はとりあえずシオンの言うとおりに自室に行くことにし、階段をかけ上がっていた。

 自室のある5階に着いたとたん、突然現れた何者かに腕をつかまれ、引き寄せられた。

「っ?!」
「よう。久しぶり」

 出来れば見たくない顔だった。青布をハチマキのように巻いた赤髪の護衛、クラウドがにっと笑い、驚く蓮を胸に抱きこむ。

「っは、離せ!」
「嫌だね」

 彼は半年前、観衆の前で蓮を辱しめようとした。恐怖が嫌でもよみがえり、蓮は胸元を押して離れようとするが余計強く抱きしめられる。クラウドの力量は蓮より格上で、抵抗しても逃れられないだろう。

「こんなこと…っしてるヒマ、ねーんじゃねーの…っ」
「まぁな。さっきまで走り回ってたんだ。休憩だ休憩」

 クラウドはもがく蓮のほほをなで、顔を確かめるように長い前髪を上げて唇をなぞる。

「本当に今しかないんだよ。こうやって、お前を抱けるのは…」
「…?」

 軽かった口調が沈み、蓮はいぶかしんでクラウドを見上げる。

「ほら、入れ」

 階段すぐの部屋のドアを開け、クラウドは蓮を押し込んで鍵をかけた。誰も使っていない部屋なのか、ベッドにはシーツだけがかけられ、テーブルと椅子にはほこり避けの布が被せてある。蓮の腕をつかんだまま、そのベッドへ仰向けに押し倒した。

「く、ぅ…っ」
「やっぱり、お前こうされると怖いのか」

 身体を震わせ、明らかに怯えた表情になる蓮を見て、あの時のような薬物や状況のせいではなく、押し倒されること自体が恐怖なのかとクラウドは気づく。

「力抜けよ。すげえ気持ち良くさせてやるから…」
「んん…!」

 顔を反らそうとする蓮のあごをつかみ、唇を重ねる。食い縛っている歯に舌を割り入れ、逃げる舌を捕らえて絡ませ合う。

「ふ、はぁ…っ」

 ゆっくりと唇が離れ、呼吸もままならなかった蓮は大きく息を吐く。

「今日こそ、拝ませてもらうからな」

 クラウドはペロッと唇をなめ、蓮のロンTを捲り上げてジーンズと下着をずり下ろす。

「ん、お前シたばっかだろ?シオンとか?」
「…!」

 あらわになった、芯を持ち始めている蓮のものに触れて聞く。つい1時間前のことを気づかれてしまい、蓮はかぁっと顔に熱が集まる。

「まさか、中にシオンのが残ったまま…じゃないよな」
「ひっ!?」

 言いながら後孔にいきなり2本の指をねじ込み、びくっと蓮の腰が浮く。中出しされたものはある程度かき出されていたが、まだ中は熱くうねっているだろう。指を動かすと、くちゅくちゅと耳に届くほど濡れた音がする。

「ほら…今すぐ突っ込めそうだ」
「ん、ぅ…っ」

 指を開けば簡単に拡がり、羞恥で蓮の大きな目に涙がたまっていく。

「っと、こんなので泣くなよ」

 クラウドは指を抜き、蓮のほほをなでる。

「俺ので、泣いてよがらせてやる」

 黒コートを脱いで頭の青布も取ると、蓮の両足を抱え上げる。

「あっ!や、ゃめろ…っ」

 上を向いた後孔にクラウドの熱いものが当てられ、蓮ははっとして必死に身体をよじらせる。

「っ、あ、あぁ…っ!」

 クラウドは構わず腰を沈め、ゆっくりと自身を押し入れた。蓮の黒い瞳からぼろぼろと涙がこぼれる。感じるのは痛みでも悔しさでもない、背徳。シオン以外の者に犯されるのは初めてだからなのか。わからないが、これ以上されたくなかった。

「嫌、だ…っ!ぅ、嫌…!」

 蓮はふるふると首を横に振り、力の入らない腕でクラウドを離そうと胸元を押す。

「は…抵抗するなって。すぐ、ヨクなるから」
「うぅ…」

 クラウドはその腕をつかみ、ベッドに縫いつける。蓮の中が自身と馴染むまで動かずに涙を手でぬぐってやり、ほほや首筋に軽くキスをする。胸元にも唇をはわせ、突起を舌で押しつぶし、転がす。気持ちとは裏腹に蓮のものは目一杯反り返り、びくびくと身体中が震える。早く動けと言わんばかりに、後孔はうねりクラウドをきゅうっと締め付けた。

「はぁ…お前のナカ、すげえ気持ちいい」

 クラウドは恍惚として、また唇にキスをする。

「動くぞ」
「ん、んぅ…っあぁ、あっ!」

 抽挿をゆっくりと始め、だんだんと速めていく。

「レン…っ」

 まるで恋人を抱くかのように手を組み、キスをし、蓮と己を絶頂へ導いていった。




「もう一回戦いきたいとこだけど、さすがに時間ないな」

 ここまでか、とクラウドはずるりと蓮から自身を抜く。

「う、んん…」

 吐き出されたものが太ももへ垂れ、蓮は身体を震わせる。

「部屋まで送ってやるよ」

 クラウドは黒コートを羽織ると息を乱す蓮の服を適当に直し、腰を抱えて立ち上がらせた。



 蓮の自室に入り、ベッドに座らせる。蓮はまだ心ここにあらずといったうつろな表情でうつむき、何の反応もしない。

「…そんなに、嫌だったか?」

 そんな蓮を見てクラウドはまた声を沈ませる。

「確かに半年前、最悪な出会いしたけどな…今日は悪くなかっただろ?それとも、本当にシオンじゃないと嫌なのか?」

 と、頭をガリガリかく。

「言っておくが、あいつお前を仕事で抱いているんじゃないぞ。お前に気があるわけでもない。あいつには抱きたくても抱けない人がいる。お前はその代わりをしてるだけだ」
「…」

 何の話なのか。蓮は内容が頭に入ってこず、ただクラウドの言葉を聞く。

「だからシオンは信用するな。何かあったら俺に言え。…俺が、いつでも抱いてやるよ」

 クラウドは照れくさそうに言い、蓮のほほに手を伸ばす。

「まぁ、これからそんなこと考える暇ないだろうけどな」

 するっとほほをなでてから、邪魔そうな前髪を指先ですいて上げる。

「死ぬなよ、レン」

 ふと真剣な表情になり、唇の端にキスをして抱きしめた。






 シャワーを浴びた蓮はタオルを頭にかぶったまま、ベッドにぼおっと座っていた。一体自分は何をしにここに来たのか。城内はあんなに混乱しているのに。蓮は自分の存在意義がわからなくなっていた。

 すると、コンコン、と遠慮がちなノックの音。

「…!」

 蓮はばっと立ち上がり、鍵もかけていなかったドアを急いで開けた。

「わ、ビックリした…っ」

 勢いよく開いたドアに驚き、身を縮めているのはティリアス王子だった。前より少し伸びたサラサラの金髪と美しい金色の瞳。顔かたちは蓮と全く同じ、この国の最重要人物。そして、お互い唯一無二の大切な友達。

「ティル…!」

 この半年、彼のために生きてきたと言っても大げさではない。蓮はドアを閉めるのも忘れて王子を抱きしめていた。

「ち、ちょっと…レンっ、苦し…」
「…っ、ワリ」

 王子が腕の中でもがき、蓮ははっとして身体を離す。

「っ?!ぅほあぁあわっ!!」
「うお?!」

 とたんに王子が顔を真っ赤にして奇妙な叫び声を上げ、蓮も驚いて王子を部屋に引き込みドアを閉める。

「れ、れれ…レン…!お願い、服を着て…っ」

 王子は半分腰を抜かした状態で真っ赤な顔を両手で覆い、懇願する。

「…ああ」

 そういえば、裸のままだった。蓮は落ちたタオルを拾いながら、クローゼットに向かった。
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