黄金色の君へ

わだすう

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30,風邪

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 翌日。

「何で、ここに連れてきた」

 ベッドに寝たまま、蓮は不機嫌そうに聞く。

「ここはあなたのご自宅でしょう」

 シオンは蓮の母親が用意したお粥を置き、ベッド脇の椅子に座る。昨日、風邪による発熱で倒れた蓮は不本意ながら自宅に運びこまれていた。

「違ぇよ、今は…」
「ミノル様からお聞きしました。去年から、一度もご自宅に帰られていないそうですね」
「…」
「お仕事がお忙しいのでしょうが、ご自宅に帰られた方が良いですよ。そうすれば、体調を崩すこともなかったでしょう」
「関係ねーだろ…」
「おこがましいですが、あなたにはご自身はもちろんのこと、ご両親も大切にしていただきたいのです。私にも、王子にも、出来ないことですから」

 シオンと王子は両親を失っている。きっとその大切さは失って初めて気づくもので。蓮にはまだ素直に受け入れられない。

「それから、今日はあなたのお誕生日なのですね。おめでとうございます」

 シオンはきれいにラッピングされた小さな袋を差し出す。受け取ったそれには見覚えのある字で書かれたバースデーカードが添えられていた。3年前までは毎年もらっていたことを、思い出す。

「ご両親からです。あなたは愛されていますよ、レン」
「ん…」

 蓮は袋を握り、壁側へ寝返りを打った。

「もう一つ、キクカワ様の件ですが」
「あ?何で知ってんだよ」

 シオンから宏樹の名が出たことに面食らう。

「今までの愚行をすべてなかったことにするから、ぜひ引き受けてはどうかとミノル様がおっしゃっていました」

 宏樹から父親のことを言われたことはないので、父親同士か宏樹の祖父かが繋がっていて、お互い息子の反社会的な者たちとの関わりを切ってしまおうとしていると気づく。

「…チッ、やっぱ腹立つ」

 蓮は父親に行動を未だ把握されていることが悔しく、舌打ちした。








 蓮は当初の予定より2日遅れでウェア王国を訪れた。約1カ月後、正式な王位継承式が行われる。その際に本来の役目である王子の身代わりとして公の場に立ち、王子を守るのだ。5カ月ぶりに訪れた王国の街並みを車窓から見ながら、蓮は決意を新たにする。そして、久しぶりに会う大切な友達は元気だろうかと思いをはせた。


「レン様!お帰りなさいませ!」
「ご体調は大丈夫なのですか?!」

 ウェア城のエントランスホールに入ったとたん、蓮は待ち伏せていたかのように集まっていた護衛たちに囲まれる。

「ああ、ヘーキ」
「良かったです!」
「心配しましたよ、レン様!」

 歩を止めない蓮に皆、ついて行きながら口々に話しかける。

「レン様ぁああ!!」

 そこに、耳障りな叫び声が近づいてくる。新しい護衛の選考試験の時、蓮に突進して殴り倒された男だ。

「以前は失礼いたしました!私、勘違いをしておりまして!!もちろん、ティリアス様も素敵ですが、私はあなた様の凛としたお姿の方が…っうぶぉうっ!?」

 蓮は無言で、まくし立てる彼のみぞおちへ鋭いボディブローをくらわす。実際に王子と面会し、蓮の存在を認識した彼は改めて蓮に惚れたらしい。

「ぐ…っ!やはり、素晴らしい…っわ、私、カンパと申しますっ。以後、お見知りおき、を…っ」

 カンパは腹を押さえながら後退り、身体をくの字に曲げた状態で膝と頭をつき、気絶した。

「レン!」

 護衛たちをかき分け、ついでにカンパを蹴り退かしてやって来たのは王室護衛ナンバー2、赤髪のクラウド。人目もはばからず、ぎゅっと蓮を抱きしめる。

「あー…危ない。死ぬかと思った」
「…死ねば良かったのに」
「かわいくないな。本当は会いたかったんだろ?」
「忘れてたし」
「嘘つけ。夢にまで見たくせに」

 悪態をつきながらも、嫌がらず抱かれたままでいることが嬉しくて、クラウドはにこにこと蓮の頭をなでまわす。

「君たち、いい加減にしたまえ。持ち場に戻りなさい」
「はいっ」

 様子を見に来た国務大臣、ウォータが半ばあきれて命令し、護衛たちはさっと蓮から離れて持ち場に戻っていく。

「レン、後で俺の部屋来いよ。直に触らないとマジで死ぬから」
「死ねよ」

 去り際、クラウドが耳元でささやき、意味がわかった蓮は少し顔を赤らめてにらんだ。

「レン君、よく来た。王子がお待ちかねだ。入りたまえ」

 ウォータは奥のひときわ大きい扉へ蓮を促す。

「シオン、ご苦労だった」
「はい」

 後に続くシオンを労い、開いた扉を共にくぐる。高い天井からはキラキラとしたシャンデリアがいくつも下がり、細かな装飾のされた壁には美しいステンドグラスが輝く、きらびやかな謁見の間。扉からまっすぐに敷かれた金の刺繍がされた青いカーペットの先には台座があり、その真ん中に置かれた金の豪華な椅子にはすでに座る者がいた。約1カ月後にこの国の王となる、ティリアス王子である。
 蓮ははやる気を抑え、国務大臣たちが両脇に並ぶカーペットを進む。台座の前まで来ると、蓮をのぞく皆が片膝をつき、頭を垂れる。

「待ちかねたぞ、ジョウノレン」

 青いマントを羽織り、金の刺繍のされた白い衣装を身にまとった王子は座ったままで口を開く。

「改めて命じる。そなたは本日より、正式に我の『身代わり』護衛となる。良い働きを期待しているぞ」

 切りそろえられた金髪と、それ以上に輝く蓮を見つめる金色の瞳。蓮と顔かたちはまったく同じなのに、ひれ伏したくなるほどの神々しさで。

「だが、その命を決して失ってはならない。我を『生きて』守るのだ。よいな」

 半年前に蓮が王子にした、誓い。王子の表情がゆるむ。

「ああ、当然」

 蓮はにっと笑い、再び誓った。






 謁見の間で王子と顔を合わせた後、蓮とシオンは5階にある蓮の自室に来ていた。

「この後の予定はありませんので、お部屋でお休みください」

 と、シオンはドアを開けて蓮を中へ促す。

「なぁ」
「はい」
「なんか、アイツ…王子らしくなったな」

 前からあのような場では王子らしく振る舞っていたが、無理がなくなったように感じた。誇らしくもあり、少し、寂しくも思う。

「そうですね」

 シオンは口角を上げ、ドアを閉めた。

「っ!」

 がちゃりという鍵を締める音と同時に、蓮は後ろから抱きしめられていた。

「私も、死ぬかと思いました」
「は…バカじゃねーの」

 覆い被さるように力を込められ、抵抗は無駄だなと、ため息が出る。

「あなたのご体調を考え、控えていましたが…もう限界です」
「ん…っ」

 サングラスを外したシオンにぐいっとあごをつかまれて斜め後ろを向かされ、唇をふさがれる。舌を挿し込み、歯列をなぞり、逃げる舌をとらえる。苦しいのに気持ちよくて、蓮の黒い瞳が潤んでくる。

「ぁ、ふ…っ」

 やっと離れた唇を銀糸がつなぐ。

「あ…っ」

 抱き上げられ、ベッドへ仰向けに沈められる。

「あなたのいない5カ月間は長かったですよ、レン」

 のしかかられる恐怖に震える蓮の手を握り、シオンは首筋に舌を這わせた。






「く、あ…っあぁ…!」

 後孔で2本の指がうごめき、起ち上がったものを下からなめられて口に含まれる。熱い口内と柔らかな舌に包まれ、気持ち良さにびくびくと蓮の身体が震える。

「んーっい、イク、から…っ離せ…!」

 フェラなどされたことのない蓮は初めての刺激であっという間に絶頂が近づき、シオンを離そうともがく。

「ひあっ?!ああぁあーっ!!」

 シオンはかまわず強く吸いあげ、蓮の腰がびくんと跳ねる。吐き出された白濁をのどを鳴らして、ためらいなく飲み込んだ。

「…っは、はぁ…!ば、バカか…っお前…!」

 飲むなんて信じられなくて、蓮は息を乱してシオンをにらむ。

「ふふ…レンから出たものなら、何でも飲めますよ」
「…ーっっ!!」

 シオンが口元をぬぐって笑み、羞恥で蓮の顔が真っ赤に染まる。

「では、私もこちらのクチでイカせてもらいましょう」
「あ…っ?!」

 ひくひく開閉する後孔に指先を当ててから、ぐいっと膝裏を持ち上げる。

「あ、ぁ…」
「美しいです、レン…」

 全身を震わせ、大きな目を潤ませ、怯えた表情を隠せない蓮に、シオンは感嘆の吐息をもらす。

「ぅあっ!!」

 己の猛るものを当て、一気に突き入れる。いつもながらの容赦のない挿入に、蓮の背がびくんと反り返る。

「はあ…っ!く、んあぁ…っ!」

 そして、足を上げたまま激しく揺さぶられ、絶え間なく引きずられる粘膜と突き上げられる前立腺。再び蓮のものは硬さを取り戻し、先走りがもれてくる。

「シ…オンっ!も、無理…っい…!」

 蓮はシーツを握りしめ、かすれた声で限界を訴える。真っ赤なほほに涙が伝い、熱い息を吐くぷっくりとした唇はシオンの加虐心をたまらなく煽る。

「まだ、射精さないでください。私も2回イカせてもらいますから…」
「ひ、あ…っあぁー…っ?!」

 ぎゅっと根元を握られ、さらに激しく突き上げられる。かすれた悲鳴を上げ、蓮の身体はガクガクと揺れる。

「ん…っ!」
「ぁ、んん…っ」

 シオンの熱いものが奥へと流し込まれる。先走りがシオンの手を濡らし、イキたくても出せない苦しさにまた涙が流れる。

「気持ちいい、ですよ…レン」
「は、あ…っあぁあ!!」

 先端を親指でぐりっとなでられると、蓮はひときわ大きく身体を跳ね上げた。

「…っ空イキ、しましたか?」

 入れたままのものをぎゅうぎゅうと締め付けられ、シオンは少し驚いて聞く。

「え…?はぁ…っな、何で…」

 絶頂した感覚はあるのに、射精はしていない。蓮は訳がわからなくて震える。

「いいのですよ。たくさん、イってください」
「や、やぁ…あ…っ!」

 シオンは微笑み、根元を握ってせき止めたまま、また腰を打ち付けた。

「…っあ…ぁ…ーっ!!」

 散々ドライでイカされた後、ようやく解放され、蓮は白濁を吹き出して絶頂する。悲鳴はほとんど声にならず、意識が遠のいていく。

「愛しています、レン…」

 シオンは蓮の中を二度めの欲で満たし、ささやいてからそっと口づけた。
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