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しおりを挟む――流石は王宮だわ……。
ヴィヴィアーナは数分後、目の前に広がる色取り取りの花々を眺めながら呟いていたのであった。
実はヴィヴィアーナは、ジュリアスを撒くのに夢中になり過ぎて、気づけば中庭で迷子になってしまっていたのであった。
――ここって、どの辺なのかしら?
右を見ても左を見ても美しい薔薇に囲まれており、ヴィヴィアーナの額に冷や汗が流れていく。
自宅の庭園よりも、遥かに広い王宮の中庭に途方に暮れていると、誰かが声を掛けてきたのだった。
「こんな所にお一人で、どうしたのですか?」
「え?」
見ると数人の貴族の令息達が、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「おや、どなたかと思えば、フォレス侯爵家のヴィヴィアーナ様ではありませんか?こんな所でどうしたのですか?」
ヴィヴィアーナが驚きながら彼等を見ていると、その中の一人がヴィヴィアーナに気づき声を掛けてきた。
「あ、あの……。」
「あ、もしかして迷子になってしまったのですか?ここは、中庭といっても広いですからねぇ。」
そう言いながら近付いて来る令息に、ヴィヴィアーナは思わず後退る。
「怖がらないでください。僕達は貴女と仲良くなりたいだけなんですよ。」
そう言ってにこやかに笑ってくる令息達に、ヴィヴィアーナの全身が粟立った。
――あ、だめ……これ以上近付かれたら……。
ぞくぞくする寒気と共に、ヴィヴィアーナの体に痒みの様な感覚が生まれる。
体を庇うように両手で体を抱きながら一歩後退ると、令息達も一歩近付いてきたのだった。
「寒いのですか?では、温かい部屋で僕達とお話ししましょう。」
そう言いながら令息達は、ヴィヴィアーナの肩に手を回そうと近付いてきた。
その時――
「失礼、私の婚約者が世話になったようだね。」
久しぶりに聞く幼馴染の低い声に、ヴィヴィアーナの目が見張る。
驚いて顔を上げると、すぐ近くにジュリアスの顔があった。
「こ、これはこれは……ランドルフ様……。」
ヴィヴィアーナに近付こうとしていた令息達は、ジュリアスの登場に狼狽える。
「ヴィヴィアーナ、心配で来てみて良かった。顔色が悪いね、少し休もうか。」
「あ……。」
ジュリアスは、そんな令息達に見せつけるようにヴィヴィアーナの顎を捉え上向かせながら、蕩ける様な声で言ってきた。
突然の遣り取りに、ヴィヴィアーナは固まっている。
そして、そんな二人を見ながら呆気に取られる令息達に、ジュリアスは流し目を向けてきた。
「君達、もう私が来たから大丈夫だよ。婚約者が世話になったね、ありがとう。それでは失礼する。」
金縛りにあったかのように固まってしまった令息達にそう言うと、ジュリアスはヴィヴィアーナの腰を抱き寄せ中庭を後にしたのであった。
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