僕のおつかい

麻竹

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第一章【出会い編】

1.おつかいに行く

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遥かな昔。

世界には争いが絶えなかった。

愚かな人間の王達は己の欲望のままに互いの領地を奪い合い。

戦争を何度も繰り返していた。

緑は焼き払われ。

人々は血を流し飢えに苦しんだ。

それを嘆いた一人の魔女が世界を4つに分断させた。

その強大な力に人間の王達は恐怖し魔女に絶対の服従を誓った。

それ以降。

世界は魔女によって統治される事になる。

魔女暦666年。

現在4つの大陸はそれぞれ4人の魔女が管理していた。








東の大地ウェストブレイ。
赤の魔女のお膝元であるこの森で、一人足早に森を抜けようとする少年の姿があった。
少年の名はマクレーンといった。
黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。

「まったく、母さんは毎度毎度・・・。」

早足で森の中を進みながら、少年は溜息混じりに愚痴を零す。
ふと立ち止まり、己の着ているマントを見下ろした。
手入れの行き届いた森の中は、陽の光が地面まで良く届いている。
その為、見下ろしたマントが良く見えた。

「ぜったい、影響してるよね。」

少年は溜息混じりにそう呟くと、虚ろ気な視線で遠くを見つめた。
見上げた木の上では、小さな小鳥達が楽しそうに囀っている。
少年の着ているマントは、フードの付いた膝丈タイプ。
旅人には、もっともポピュラーなものだ。
しかもこのマントは、この地方独特の色に染まっていた。
血の様な色のそのマントを指で摘んで見ていた少年は、また溜息を一つ落とすとすぐに離してしまった。

この格好、絶対アレだよね・・・・。

どこで読んだのか、母は読んだ本の影響を受けやすい。
特に童話や御伽噺などが好きで、すぐにのめり込んでしまう。
そしていつも自分に、その物語の主人公の格好をさせたがるのだ。
今回はアレだ・・・。
狼と娘とお婆さんが出てくる有名な童話にちなんでこのマントを着せたのだろう。
出かけ際に「赤頭巾ちゃんみたいで可愛いわぁ~♪」などと嬉しそうに自分を褒めていたな、とマクレーンは苦笑した。
本当は、真っ赤な頭巾を被せたかったらしいのだが、それはもちろん断固として拒否させてもらった。
そもそもなんで、そんな物を身に着けなければならないのか、マクレーンにはさっぱりわからなかった。

「早く、この荷物を届けて家に帰ろう。」

マクレーンは、肩にかけている大きなバッグを見下ろしながら呟くと、また早足で歩き出した。



暫く森の中を歩いていると、開けた場所に出た。
中央には泉があり、そこをぐるりと円を描くように木が切られていた。
この森を通る旅人の休憩場所として、わざわざ作られたものだ。
この森を管理している木こり達が切ったのであろう、木の切り株が泉の付近に転々と残されており、マクレーンはその一つに腰を下ろそうと近づいていった。
そこでふと、その足を止める。
泉の奥――森の外へと通じる道に何か黒い塊が見えた。
マクレーンは目を凝らして、その黒い塊を見た。

「あれは!」

その黒い塊が何であるか悟ったマクレーンは、小さく息を飲んだ。

人だ、人が倒れている。

マクレーンは慌てて側へ駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

うつ伏せに倒れている相手に声をかけるが、返事が無い。

まさか、もう・・・・。

マクレーンが嫌な予感に少しだけ顔を歪めていると、かすかに呻き声が聞こえてきた。
その声に顔を上げ、急いで倒れている相手を揺さぶる。
すると、僅かだが倒れている相手が身じろぎした。

「大丈夫ですか?あの、あの・・・。」

マクレーンは必死に呼びかける。
必死の呼びかけの甲斐あってか、その人は何かを伝えようと微かに唇を震わせて何かを訴えてきた。
マクレーンはその声を聴こうと、震える唇にギリギリまで耳を近づける。

「なんですか?大丈夫ですか?」

必死に呼びかけるマクレーンに、その人物は喉から掠れた声を絞り出してこう伝えてきた――

「腹が減った。」

と・・・・。

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