僕のおつかい

麻竹

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第一章【出会い編】

48.南の大地へ

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照りつける太陽。

白い砂浜。

どこまでも続く青い海。



「いやぁ~目の保養にいいなぁ~♪」

軽快な音楽と共に暢気な声が白い砂浜から聞こえてきた。

ここは南の大地サザンウォート。

四大陸のうち一番太陽が近いといわれ一年中暖かい場所だ。
しかもほとんどが海に覆われており複数の島が連なって一つの大陸のようになっている。
陸地よりも水の面積の方が多いここでは漁業が盛んだった。
もちろん特産物は海の幸、毎日取れたての魚介類が世界中に輸出されている。
その他にもここでしか取れない巨大真珠や七色珊瑚が有名だ。
そのお陰でこの大地に住む人々はいつでも水に入れるように機能的な格好をしていた。

カイパンとビキニ。

というらしい。
男性は上半身裸で下には水捌けの良い素材を使ったズボンを履いている。
種類は様々で膝丈のものから際どいラインのものまで様々だ。
女性は上半身は胸だけを隠すようなデザインの布を巻きつけ下には短いパンツやスカートを履いている。
最近の流行では上半身には貝の形をしたものが人気らしい。
この地方独特の民族衣装らしく実に大胆な服装だ。
しかも肌の露出が多いせいかサザンウォートの住人達はみな日に焼けて真っ黒な体をしていたのだった。



「良い所だなぁ~♪」

と、先程から砂浜にいる美女達を眺めては、アランが鼻の下を伸ばしながら喜んでいた。

「そろそろ行きますよ。」

そんなアランにマクレーンは素っ気無く言うとできるだけ早足で離れていった。

「あ、ちょっと待ってくれよ~!!」

仲間だなんて思われたくない。

少なくとも今のアランさんとは!

エロ親父さながらに厭らしい目つきで女性のお尻を目で追う変態とは思われたくない。
今だってほら、アランが見ていた女性達がこちらを見ながらヒソヒソしている……。
マクレーンは慌てて追いかけてくるアランを置いて宿屋へと急ぐのだった。



暫く砂浜を歩いていると巨大な三角屋根のようなものが見えてきた。
その三角屋根のようなものはよく見ると渦を巻きその天辺は空を突き刺すかのように鋭く尖っていた。
近くまで来るとその大きさに目を見張った。

サザンウォート名物ヤドカリハウス。

この地方にだけ生息する巨大ヤドカリの殻の中に部屋を作ったという大胆な住まいだ。
そしてこのヤドカリハウスこそが今日のマクレーン達の泊まる宿だった。

「はあ、やっと見つけた……。」

マクレーンはヤドカリハウスを見上げながらぽつりと呟く。
このハウス実は移動するのだ。
ヤドカリハウスとはいえ、相手は生き物。
彼は一日かけて島を一周して来るらしく日中は何処にいるかわからないのだとか……。
お陰でマクレーンはヤドカリの足跡を辿って追いかけなければならず汗だくになっていた。

「おや、お客さん随分早いねぇもうお帰りかい?」

ヤドカリハウスの一室から真っ黒に日焼けした中年の男性が声をかけてきた。
この宿屋の主人だ。
にかっと白い歯を見せながら笑う店主にマクレーンは引き攣った笑顔で返す。

「ええ、それにしても本当に移動するんですね、探すのに苦労しましたよ。」

「ははははは、夕方になれば元いた場所に戻ってくるんだがねぇ。」

マクレーンの言葉に屈託無く笑いながら返す店主。
どうやらここの住人達はマイペースな人が多いらしい。
店主の言葉も態度もこの地域の雰囲気全てがのんびりとしていた。
マクレーンが諦めたように溜息を吐いていると、宿屋の店主が「お!」と言いながら海の方を見た。
マクレーンもつられてそちらを振り向く。
そこには砂浜に面して点在するように家が建っていた。
何故かゆらゆらと揺れる家の屋根を不思議に思いマクレーンが目を凝らしてよく見ると家の土台が海に面していた。
更によく見ると家は上下左右に揺れている。
ぷかぷかとまるで波間に漂う海草のような動きをする不思議な家にマクレーンはようやくその理由を知った。

土台の下から覗くキラキラ光る鱗が太陽の光を反射して瑠璃色に輝いていた。

そう、その家は瑠璃海魚という巨大魚の背の上に建てられていたのだった。
マクレーンが見ていると家の一つがスイーっと海の上を滑り出した。
そしてその家から人が出てきたかと思うと建物の先頭に立ち何やら手にロープを持ち始める。
すると家の下からぬっと大きな魚の頭が出てきた。
魚の口にはロープが繋がっており家の住人がロープを引くと魚はスピードを上げあっという間に海の彼方へと消えていってしまったのだった。

「お、漁の時間だな。」

宿屋の店主がそう言うと浜辺にいた家が次々と沖へと動き出した。
水しぶきを上げて滑るように移動していく家達はさながら船のようである。
漁船と住まいを兼ねたその家は気が付くと一軒も残らず沖へと泳いでいってしまったのであった。

「どうだい港町ダスの名物移動ハウスは?」

店主は、ぽかんと瑠璃怪魚の家を見送るマクレーンを可笑しそうに笑いながらそう言ってきた。

「え、ええまあ、面白いですね。」

店主の言葉にマクレーンは愛想笑いを浮かべて曖昧に答える。
「そうだろ、そうだろ」と満足そうに頷く店主を見ながら思わず。

別に移動しなくてもいいんじゃないか?

と思った事は内緒であった。
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