僕のおつかい

麻竹

文字の大きさ
74 / 93
第一章【出会い編】

50.連れが無駄に元気で食欲旺盛で困ります

しおりを挟む
「やあマクレーンおはよう♪」

「おはようございます……。」

次の朝いつもの5倍明るく挨拶をしてくるアランと。
いつもの10倍沈んだ顔のマクレーンがいた。
昨夜の事を何も知らないニコルはそんな二人の顔を交互に見ながら訳がわからないと首を傾げる。
アランはとにかくいつもよりも憂鬱そうな顔をするマクレーンにニコルは「どうしたのですか?」と心配になって声をかけた。
しかしマクレーンは「なんでもありません」ともごもごと言い辛そうに下を向いてしまった。
心成しかマクレーンの顔が赤いような気がする……。
熱でもあるのではないか?と気遣うニコルにアランがにやにやと嬉しそうな笑顔でこう言ってきた。

「実は昨夜……。」

「な、なんでもありません!!」

アランの言葉を遮るようにマクレーンが声を上げた。

「いいじゃないか♪」

「アランさんは黙っててください!!」

更ににやにやするアランに噛み付かんばかりの勢いで声を荒げるマクレーンの姿に昨夜二人の間で何かあったのだと悟るニコル。
しかもマクレーンには気まずくアランには嬉しい出来事のようだ。
なんとも微笑ましい二人のやり取りにこちらも口元が緩んでしまいそうになり慌てて引き締めた。

「まあ、何があったか知りませんがアランさん、あんまりマクレーンさんを困らせてはダメですよ。」

と何故かウインクをしながらニコルが窘めてきた。

「困らせてるつもりはないんだけどな~。」

とニコルの言葉にアランは頭をかきながら答える。

「いつも困ってますよ!大体アランさんは……。」

と悪びれた様子のないアランに、マクレーンが小言を言い始めたその時、タイミング良く朝食が運ばれて来てしまった。
ぐう、と唸るような声を上げて口籠るマクレーン。
さすがにお店の人の前でまで小言を言う気は無いようだ。
マクレーンの小言を聞かなくて済んだアランは店員に向かって親指を立てて礼を伝えると、ノリの良い店員も同じように返してきた。

「あの店員さん絶対意味わかってないですよあれ。」

そんなアランたちの様子を見ていたニコルが苦笑しながら呟く。

「もう、さっさと食べましょう。」

と憮然とした表情で答えるマクレーン。

「そうですね。」

いつもの光景にくすくすと、笑いを堪えきれないニコルが頷く。
ふとアランの方を見ると彼は既に目の前のご馳走に舌鼓を打っていた。
相変わらず凄い食欲だなぁ、とニコルは感心しながら目の前の朝食に視線を移すと、そこにはこの地方の特産物が所狭しと並べられていた。

巨大な足を持つサザンガニのボイル。
色鮮やかな虹色貝のチーズ焼き。
大皿にはレモンの添えられた瑠璃怪魚のソテー。
可愛らしい形のスターフィッシュのマリネ。

等々見たことも無い食材のオンパレード。

「お、凄いでかいなこの足!身もぎっしりだ♪こっちは宝石みたいな貝だな、味もなかなか♪これ、家が建ってた魚じゃないか!食えるんだな♪星型の切り身なんてはじめて見たぞ、お!こりこりしてうまいなこれ♪」

全ての食材の感想を言いつつ、アランはどんどん皿を空にしていく。
相変わらずのその食いっぷりに、マクレーンもニコルもぽかんとしながら、その姿を見つめていた。

「ほんとに良く食べますねぇ。」

ニコルが呆れながら言う。

「ん、そうか?この位普通じゃないか?」

もぐもぐと食べる手を止めずにアランが答える。

「いや、普通の人はそんなに食べられませんよ。」

アランがあまりにもさらりと言うのでマクレーンはつい割って入ってしまった。

「ん~そうなのか?」

マクレーンの突っ込みにアランは不思議そうに首を傾げる。
その間にもアランは次々と朝食を平らげていった。

どうみても食べ過ぎだ……。

アランの食いっぷりに少々引きながらマクレーンは胸中でごちた。

「俺の故郷じゃこの位みんな食べてたぞ?兄弟も多かったし、なにより食べなきゃ身が持たなかったからなぁ。」

「え?ご兄弟がいるのですか?あと身が持たないっていうのは?……。」

興味津々といった表情でニコルがアランの呟きに身を乗り出して聞き返す。

「ん?ああ、俺の兄弟か?俺の家は8人兄弟で男5人と女が3人、あと親父とお袋、爺ちゃんに、婆ちゃんもいるぞ。。」

巨大なカニの足を片手に持ちながらアランは指折り数えながら家族構成を語りだした。
そんなアランの話を興味深げにニコルが聞く。

「俺の実家って傭兵家業なんてもんをやっていたから物心着く頃には剣の扱い方を仕込まれてたんだよ、だから毎日稽古稽古でさ……食わなきゃ体が持たなかったし兄弟も沢山いたから食事のときは戦場だったなぁ~。」

と、しみじみと言うアラン。
そんなアランの話に「へぇ~」と感嘆の声を上げるニコル。

だからこんなに大食いになったのか……。

意外なところでアランの大食いの経緯を知ったマクレーンは胸中で呟く。
その間にもアランの手は休まる事無く食べ物を口に運んでいた。

だからと言って食べ過ぎですけどね!

まるで底なしの如く食べ続けるアランの姿に少々引きながらマクレーンは胸中で叫ぶのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...