79 / 93
第一章【出会い編】
55.大地の割れ目
しおりを挟む
ヒョオオオオオオオ。
目の前に土埃を巻き上げながら風が通り過ぎていく。
埃っぽい空気に。
乾いた大地。
目の前には断崖絶壁。
行く手を阻むその断崖は、地平線のどこまでも続いていた。
大地の割れ目――ウイッチブレイク。
マクレーン達が次に降り立ったそこは、そんな名前で呼ばれる場所だった。
「すごいですねぇ。」
谷間から吹き上げてくる風に髪を靡かせながら、ニコルは目の前の大きな穴を見下ろしながら呟いた。
大きな穴というが、実は丸く空いているわけではない。
穴に見えていたそれは、大昔に魔女がつけたと言われる大地の傷跡だった。
その傷跡は、世界を分断するほどに巨大な亀裂のため、人がその姿を見ようとすれば果ての見えない大穴にしか見えない。
遥か上空から見下ろすと、きっちり十時の形に分断されているらしい。
しかも、そのあまりの広さと底の見えない深さと、時々起こる地殻変動のせいで橋を通すこともできないのだ。
まさに神の御業ならぬ、魔女の御業である。
「すごいな、俺初めて見たよ。」
「ええ、僕もです。」
「そんな事より早く行きましょう。」
強大な力の痕跡を目の当たりにし感動しているアラン達に、マクレーンはさして興味もなさそうに催促してきた。
「なんだよ、もう少しいいだろう?」
マクレーンの言葉に、アランが詰まらなさそうに振り返る。
「割れ目なら他の転柱門の所でも見たでしょうが。」
もう少し見ていたいと目で訴えてくるアランに、マクレーンはそう言いながら嘆息した。
アランの気持ちも、わからない訳ではなかった。
なにせここは他の転柱門とは訳が違った。
亀裂の中心に、ぽっかり残った大地。
そこに、この転柱門はあった。
そして、こここそが世界を分断した魔女の奇跡が振るわれた場所であった。
遥か昔、魔女はこの地を中心に世界を分断した。
その時魔女が立っていた場所は小さな浮き島の様に残ったそうだ。
この大地こそが、魔女暦666年の始まりの場所――魔女を信仰する人々にとって、まさに聖地なのである。
そんな場所に、魔女を崇拝する者が来たら多少はしゃいでしまうのは仕方が無いだろう。
だが――。
「そんな事していたら、日が暮れちゃいますよ!ここは治安が悪いんですから、早く行かないと危険なんです!」
状況わかってんのかお前ら!!と米神に怒りマークを露にして、マクレーンはアランを睨みながら言った。
そうここは聖地、しかし悲しいかな世界で一番治安が悪い場所なのである。
マクレーンは、数日前の姉とのやり取りを思い出しながら溜息を吐くのだった 。
「そういえば、お婆様の所にも行くのでしょう?」
「ええ、もちろん。」
5日前、姉であるイレーニアの屋敷で寛いでいると、ふとそんな事を聞かれた。
「お婆様の所に行くなら、あそこを通らないといけないのよねぇ。」
何か含みを持たせた姉の言い方に、マクレーンは首を傾げる。
「あそこと言うと……バラックの事ですか?」
「ええそう、あそこは今ちょっと治安が悪いみたいなのよ、なんでも盗賊が出るらしいわよ。」
「盗賊……ですか?」
マクレーンは姉の話を聞きながら首を傾げた。
大地の割れ目は魔女が大地を分断させた影響からか当初から作物の育たない荒れた土地だった。
しかしその逆に割れた大地の下には豊富な資源が眠っていたのだ。
世界共通で流通されている宝石と呼ばれる鉱石が地中深くに埋まっているのだそうだ。
その宝石の種類はさまざまで黄金色のものから透明なものまでいろいろある。
その宝石を求めて世界中の人々が一攫千金を狙って集まってくるのが先程マクレーンが言ったバラックだった。
鉱夫の街バラック ―― 一攫千金を狙うだけあって集まってくる輩は荒くれ者達が多いその村では盗賊が出るなど珍しくも無い日常茶飯事のことだ。
それ故姉の言った言葉にマクレーンは首を傾げたのだった。
「そう、でもいつもより頻繁に出るらしいわ、しかも数も増えているそうよ。」
「また新しい鉱石でも出たのでしょうか?」
姉の言葉に首を傾げつつよくある仮定を挙げてみた。
たまに今まで発見された事が無い宝石が出る事があるらしい。
そういう類はまずその希少性から高値がつく。
しかも美しければ美しいほどだ。
発見された宝石類は聖教会が管理しているのだが、その管理の目を盗んで密輸や窃盗を働く不届きものが後を絶たない。
その大半は盗賊達が絡んでいる事が多いのだが。
「私も詳しくはわからないのよ、でも気をつけるに越したことは無いわ。」
「……そう、ですね。」
心配そうな顔をしながらこちらを見て微笑む姉に、なんとなく引っかかるものを感じながらマクレーンは頷くのだった。
目の前に土埃を巻き上げながら風が通り過ぎていく。
埃っぽい空気に。
乾いた大地。
目の前には断崖絶壁。
行く手を阻むその断崖は、地平線のどこまでも続いていた。
大地の割れ目――ウイッチブレイク。
マクレーン達が次に降り立ったそこは、そんな名前で呼ばれる場所だった。
「すごいですねぇ。」
谷間から吹き上げてくる風に髪を靡かせながら、ニコルは目の前の大きな穴を見下ろしながら呟いた。
大きな穴というが、実は丸く空いているわけではない。
穴に見えていたそれは、大昔に魔女がつけたと言われる大地の傷跡だった。
その傷跡は、世界を分断するほどに巨大な亀裂のため、人がその姿を見ようとすれば果ての見えない大穴にしか見えない。
遥か上空から見下ろすと、きっちり十時の形に分断されているらしい。
しかも、そのあまりの広さと底の見えない深さと、時々起こる地殻変動のせいで橋を通すこともできないのだ。
まさに神の御業ならぬ、魔女の御業である。
「すごいな、俺初めて見たよ。」
「ええ、僕もです。」
「そんな事より早く行きましょう。」
強大な力の痕跡を目の当たりにし感動しているアラン達に、マクレーンはさして興味もなさそうに催促してきた。
「なんだよ、もう少しいいだろう?」
マクレーンの言葉に、アランが詰まらなさそうに振り返る。
「割れ目なら他の転柱門の所でも見たでしょうが。」
もう少し見ていたいと目で訴えてくるアランに、マクレーンはそう言いながら嘆息した。
アランの気持ちも、わからない訳ではなかった。
なにせここは他の転柱門とは訳が違った。
亀裂の中心に、ぽっかり残った大地。
そこに、この転柱門はあった。
そして、こここそが世界を分断した魔女の奇跡が振るわれた場所であった。
遥か昔、魔女はこの地を中心に世界を分断した。
その時魔女が立っていた場所は小さな浮き島の様に残ったそうだ。
この大地こそが、魔女暦666年の始まりの場所――魔女を信仰する人々にとって、まさに聖地なのである。
そんな場所に、魔女を崇拝する者が来たら多少はしゃいでしまうのは仕方が無いだろう。
だが――。
「そんな事していたら、日が暮れちゃいますよ!ここは治安が悪いんですから、早く行かないと危険なんです!」
状況わかってんのかお前ら!!と米神に怒りマークを露にして、マクレーンはアランを睨みながら言った。
そうここは聖地、しかし悲しいかな世界で一番治安が悪い場所なのである。
マクレーンは、数日前の姉とのやり取りを思い出しながら溜息を吐くのだった 。
「そういえば、お婆様の所にも行くのでしょう?」
「ええ、もちろん。」
5日前、姉であるイレーニアの屋敷で寛いでいると、ふとそんな事を聞かれた。
「お婆様の所に行くなら、あそこを通らないといけないのよねぇ。」
何か含みを持たせた姉の言い方に、マクレーンは首を傾げる。
「あそこと言うと……バラックの事ですか?」
「ええそう、あそこは今ちょっと治安が悪いみたいなのよ、なんでも盗賊が出るらしいわよ。」
「盗賊……ですか?」
マクレーンは姉の話を聞きながら首を傾げた。
大地の割れ目は魔女が大地を分断させた影響からか当初から作物の育たない荒れた土地だった。
しかしその逆に割れた大地の下には豊富な資源が眠っていたのだ。
世界共通で流通されている宝石と呼ばれる鉱石が地中深くに埋まっているのだそうだ。
その宝石の種類はさまざまで黄金色のものから透明なものまでいろいろある。
その宝石を求めて世界中の人々が一攫千金を狙って集まってくるのが先程マクレーンが言ったバラックだった。
鉱夫の街バラック ―― 一攫千金を狙うだけあって集まってくる輩は荒くれ者達が多いその村では盗賊が出るなど珍しくも無い日常茶飯事のことだ。
それ故姉の言った言葉にマクレーンは首を傾げたのだった。
「そう、でもいつもより頻繁に出るらしいわ、しかも数も増えているそうよ。」
「また新しい鉱石でも出たのでしょうか?」
姉の言葉に首を傾げつつよくある仮定を挙げてみた。
たまに今まで発見された事が無い宝石が出る事があるらしい。
そういう類はまずその希少性から高値がつく。
しかも美しければ美しいほどだ。
発見された宝石類は聖教会が管理しているのだが、その管理の目を盗んで密輸や窃盗を働く不届きものが後を絶たない。
その大半は盗賊達が絡んでいる事が多いのだが。
「私も詳しくはわからないのよ、でも気をつけるに越したことは無いわ。」
「……そう、ですね。」
心配そうな顔をしながらこちらを見て微笑む姉に、なんとなく引っかかるものを感じながらマクレーンは頷くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる