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第一章【出会い編】
66.意外な過去
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「何すんだ!?」
止められた男は、怒りのまま相手を振り返ると目を見張って固まってしまった。
他の用心棒達も同じように動きを止めて、割って入ってきた相手を見ている。
そこには――
アッシュグレイの髪に褐色の肌を持つウルガ・ゴードンが立っていた。
「何をやっている。」
答えを知っているかのような問いかけに、用心棒達はびくりと反応する。
そういえばこの人達、前にウルガさんに注意されていた人達だ。
マクレーンはウルガと用心棒たちの様子を眺めながら、ふとそんな事を思い出した。
確か闘技場で自分に絡んでいたゴロツキ達だ、ウルガを見るまで忘れていたことに、マクレーンは内心で己に苦笑した。
「こいつは俺の知り合いだって言ったのを、もう忘れたのか?」
「い、いや、でも……。」
「賞金もベルトも返したのだろう、もう開放してやれ。」
ウルガはそう言うと、用心棒の腕を放した。
その腕にはウルガの太い指の痕がくっきりと残っている。
どれだけ強い力で掴んでいたんだと、腕を庇いながらウルガに怯える用心棒達を見て肩を竦めた。
そして、ウルガに窘められて用心棒達は引き下がっていった。
後に残されたマクレーンはウルガに礼を言う。
「ありがとうございます。……街道でも助けていただきましたよね。」
マクレーンは確信を込めてウルガに言ってきた。
その言葉に、ウルガはふっと笑みを零す。
「まあ、お節介だったようだがな。」
「いえ、助かりました。」
揶揄するような口調のウルガに、マクレーンは真面目に礼を言った。
そんなマクレーンにウルガは肩を竦めると、不思議そうに首を傾げてみせた。
「連れはどうした?」
「あの二人には、まだ隠れてもらってます。賞金を返すだけだったので。」
「……そうか。」
ウルガは何か言いたそうだったが、それ以上は追求してこなかった。
「ウルガさんは、随分顔が利くんですね。ここの出身ですか?」
ふと、マクレーンが珍しく質問してきた。
珍しい様子にウルガは彼を見る。
真っ直ぐこちらを見てくるマクレーンに、ウルガは目を細めた。
他人に関心がないと思ったんだが、珍しい事もあるもんだ。
ウルガはふと、彼の質問に答えてみたくなった。
単なる気まぐれだ、答えたところでさして問題も無い。
ウルガは軽い気持ちで答えた。
「いや、俺はここに流れ着いた者だ。昔住む家を追われてな。」
「住む家を追われた?」
訝しみながら聞き返してきたマクレーンを見て、思ったより口が滑ってしまった自分に内心驚いた。
これでは聞いてくれと言っているようではないか。
己の珍しい言い回しにウルガは焦る。
そんな事を胸中で考えながら、何故かウルガの口は勝手に動いていた。
「ああ、10年前、俺はあの女に全てを焼かれて命からがら、ここへ辿り着いたんだ。」
自分の言葉に目を見張る。
「あの女?」
「そう、あの女だ……”紅蓮の炎を操る赤の魔女”にだ。」
ウルガの言葉に、今度はマクレーンが目を見張った。
その様子を頭の隅で見ながら、ウルガは言葉を続けた。
「あの魔女に、俺の村は焼かれた。全て灰にされた、家族も村の仲間達も、恋人も……。」
ウルガは自分は何を言いたいのだろう、と言葉を続けながら内心思っていた。
自分の考えとは反対に何故か言葉が、すらすらと出てきてしまう。
何故かはわからないが、今この話をしなければいけないと、頭の片隅で何かが訴えているのだ。
今言わなければ後悔すると……。
そんなウルガの葛藤を他所に、マクレーンの顔は段々と沈んだものに代わっていった。
そして俯き何かを堪えるように歯を食いしばっている。
同情されているのだろうか、とウルガは思った。
「そう、ですか……。」
しかし、マクレーンの口からは搾り出すような、そのひと言だけが聞けただけだった。
止められた男は、怒りのまま相手を振り返ると目を見張って固まってしまった。
他の用心棒達も同じように動きを止めて、割って入ってきた相手を見ている。
そこには――
アッシュグレイの髪に褐色の肌を持つウルガ・ゴードンが立っていた。
「何をやっている。」
答えを知っているかのような問いかけに、用心棒達はびくりと反応する。
そういえばこの人達、前にウルガさんに注意されていた人達だ。
マクレーンはウルガと用心棒たちの様子を眺めながら、ふとそんな事を思い出した。
確か闘技場で自分に絡んでいたゴロツキ達だ、ウルガを見るまで忘れていたことに、マクレーンは内心で己に苦笑した。
「こいつは俺の知り合いだって言ったのを、もう忘れたのか?」
「い、いや、でも……。」
「賞金もベルトも返したのだろう、もう開放してやれ。」
ウルガはそう言うと、用心棒の腕を放した。
その腕にはウルガの太い指の痕がくっきりと残っている。
どれだけ強い力で掴んでいたんだと、腕を庇いながらウルガに怯える用心棒達を見て肩を竦めた。
そして、ウルガに窘められて用心棒達は引き下がっていった。
後に残されたマクレーンはウルガに礼を言う。
「ありがとうございます。……街道でも助けていただきましたよね。」
マクレーンは確信を込めてウルガに言ってきた。
その言葉に、ウルガはふっと笑みを零す。
「まあ、お節介だったようだがな。」
「いえ、助かりました。」
揶揄するような口調のウルガに、マクレーンは真面目に礼を言った。
そんなマクレーンにウルガは肩を竦めると、不思議そうに首を傾げてみせた。
「連れはどうした?」
「あの二人には、まだ隠れてもらってます。賞金を返すだけだったので。」
「……そうか。」
ウルガは何か言いたそうだったが、それ以上は追求してこなかった。
「ウルガさんは、随分顔が利くんですね。ここの出身ですか?」
ふと、マクレーンが珍しく質問してきた。
珍しい様子にウルガは彼を見る。
真っ直ぐこちらを見てくるマクレーンに、ウルガは目を細めた。
他人に関心がないと思ったんだが、珍しい事もあるもんだ。
ウルガはふと、彼の質問に答えてみたくなった。
単なる気まぐれだ、答えたところでさして問題も無い。
ウルガは軽い気持ちで答えた。
「いや、俺はここに流れ着いた者だ。昔住む家を追われてな。」
「住む家を追われた?」
訝しみながら聞き返してきたマクレーンを見て、思ったより口が滑ってしまった自分に内心驚いた。
これでは聞いてくれと言っているようではないか。
己の珍しい言い回しにウルガは焦る。
そんな事を胸中で考えながら、何故かウルガの口は勝手に動いていた。
「ああ、10年前、俺はあの女に全てを焼かれて命からがら、ここへ辿り着いたんだ。」
自分の言葉に目を見張る。
「あの女?」
「そう、あの女だ……”紅蓮の炎を操る赤の魔女”にだ。」
ウルガの言葉に、今度はマクレーンが目を見張った。
その様子を頭の隅で見ながら、ウルガは言葉を続けた。
「あの魔女に、俺の村は焼かれた。全て灰にされた、家族も村の仲間達も、恋人も……。」
ウルガは自分は何を言いたいのだろう、と言葉を続けながら内心思っていた。
自分の考えとは反対に何故か言葉が、すらすらと出てきてしまう。
何故かはわからないが、今この話をしなければいけないと、頭の片隅で何かが訴えているのだ。
今言わなければ後悔すると……。
そんなウルガの葛藤を他所に、マクレーンの顔は段々と沈んだものに代わっていった。
そして俯き何かを堪えるように歯を食いしばっている。
同情されているのだろうか、とウルガは思った。
「そう、ですか……。」
しかし、マクレーンの口からは搾り出すような、そのひと言だけが聞けただけだった。
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