僕のおつかい

麻竹

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第一章【出会い編】

67.最後のおつかい

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マクレーンは、ひとり長い道を歩いていた。
あの後、ウルガと別れ彼は一人でここへ来ていた。
暫く歩くと開けた場所へと出た。
ここは”彼女”が最も愛すべき場所だった。

「お久しぶりです。」

マクレーンは久しぶりに会った相手に笑顔を向けた。
マクレーンの視線の先には、美しい庭があった。
美しい花々が咲き誇り、その花の周りを蝶や小鳥たちが飛び交っている。
その花や小動物たちに混じって、小さなキラキラと光るものも飛び回っていた。

「あら、珍しい。久しぶりね。」

彼女はそう言うと、にっこりと微笑を返してきた。
そして、こちらへ来るように手招きしてくる。
その皺の寄った美しい手に誘われながら、マクレーンは庭の中へ足を踏み入れた。
マクレーンが庭に入ると、近くで飛んでいた蝶やキラキラしたものが一斉に飛び立った。
その美しい光景に見入っていると、彼女が声をかけてきた。

「久しぶりのお出かけは、どうだったの?」

「あ、はい、久しぶりだったので少々手間取ってしまいました。遅くなってしまい申し訳ありません。」

マクレーンは生真面目にそう言いながら、肩にかけていたバッグからチェリーパイとワインの入った籠を取り出してきた。

「これ、お母様からお婆様にです。」

「まあ、あの子のチェリーパイ!ありがとう。」

祖母は顔の皺を深くしながら嬉しそうに微笑む。
喜んでくれたことにマクレーンは内心ほっとして籠をテーブルへと置いた。

「ふふふ、疲れたでしょう?お茶でも飲んでいきなさいな。」

いつもの祖母の優しい誘いに、マクレーンは素直に頷くと椅子へと腰を下ろした。
マクレーンの様子に満足そうに笑みを深くした祖母は、お気に入りのティーセットに紅茶を入れると目の前においてくれた。
久しぶりに飲む祖母の紅茶は、相変わらず美味しかった。

「あなたが久しぶりに出てきてくれたって、みんな喜んでいたわ。」

祖母は同じ紅茶を飲みながら、話しかけてくる。
優しい声音にマクレーンは頷くと少しだけバツの悪そうに肩を竦めてみせた。

「でも、途中で人と関わってしまいました。」

「あら、素敵じゃない。」

そういうマクレーンに、祖母は嬉しそうに手を叩く。

「ねえ、どんな人なの?あなたとお友達になれそう?」

「え、ええっと……。」

矢継ぎ早に聞いてくる祖母に、マクレーンが困惑していると、横から声がかけられた。

「そんなに勢い良く聞いたら驚くだろう。」

声のした方を見ると、赤髪の美しい青年が立っていた。

「あら、だって、この子にはじめてお友達ができそうなのよ、こんな嬉しい事ってないわ。」

宥めてきた相手に祖母は、まるで少女の様に剥れてみせる。
その様子に、マクレーンは嬉しくなって苦笑した。

「お久しぶりです。あ、みんなの分もあるので後で食べてください。」

マクレーンはそう言うと、バッグから次々と籠を出してきた。

「ああ、ありがとう。それにしても久しぶりだな、アレも元気にしてるか?」

青年は、その様子に苦笑しながら言葉をかける。

「ええ、今回は留守番してもらってますけど。」

マクレーンは赤髪の青年の言葉に苦笑しながら答えた。
その言葉に青年は軽く目を見張る。

「よくあの過保護が、外出を許したもんだ。」

「ええ、今回は母のお使いですから。」

「なるほど。」

感心したような声に、マクレーンが肩を竦めて答えると、青年は面白そうに口元を吊り上げながら言ってきた。
そんな遣り取りをした後、マクレーンは祖母に視線を戻してきた

「お婆様がお元気そうで良かったです。」

マクレーンは、そう言いながら席を立った。

「あら、もう帰ってしまうの?」

「はい、もう帰らなければ。紅茶美味しかったです。」

祖母はマクレーンに悲しそうな顔で言ってきた。
その姿に申し訳なさそうに謝罪すると、祖母の隣の赤髪の青年に視線を向ける。

「お婆様の事、よろしくお願いします。」

「ああ、お前も気をつけてな。」

「はい、ではお婆様ごきげんよう。」

「ええ、また会える日を楽しみにしているわ。」

マクレーンは祖母に別れの挨拶をすると、美しい庭園から去って行った。



「行ってしまったわね。」

孫が出て行った庭園の出口を見ながら、彼女は残念そうに呟く。

「そうだな、だがまたすぐ会えるぞ。」

「あら、そうなの?」

隣の青年の言葉に彼女は振り向く。

「ああ、お前の孫たちが何やら企んでいそうだと、仲間達が言っていたからな。」

「まあ、そうなの、あの子達が?」

彼女はそう呟くと、楽しそうに笑った。

「あの子達が動くのなら、では私は見ていましょう。」

「ああ。」

彼女は突然、すっと顔を引き締めここの主の顔に戻る。
青年は、その姿に目を細めながら抑揚のない声で頷いた。

「あら、そういえば……」

「どうした?」

「私の娘は、どうしたのかしら?」

突然首を傾げて言ってきた彼女に、赤髪の青年は首を傾げる。
そして、彼女の言葉に青年は「あっ」と言いながら、今まで忘れていた彼女の娘を思い出した。
そして

娘も出張っていたな。

と、あの破天荒な娘の事を思い出しながら、青年は庭の出口を見ながら「ご愁傷様。」と呟いたのだった。
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