研究ばかりで衣食住が壊滅的な魔術師長である婚約者が死なないように世話係(監視)をやれと命じられましたが彼が変態すぎて困っています。

麻竹

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9.婚約者と研究狂いの私

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今日は、アマーリエの姿を見ていないな……。

私はふと、実験中にその事に気づいたのだった。
壁に掛けられた時計を見ると、既に昼食の時間はとうに過ぎていた。
いつもなら、アマーリエの可愛らしい声で食事の時間を報せてくれている筈だった。
しかし何故か今日に限って、あの声が聴けていないのだ。
しかも姿も見ていない事に気づき、私は研究室の扉を暫くの間凝視した。
しかし、待てども待てども彼女が現れる気配はなかった。



この魔術師が集う魔術師塔の最上階が、私の職場だ。
宮廷魔術師長という面倒な肩書があるお陰で、私はこの塔に閉じ込められている。
まあ、毎日自由に研究が出来るのだから不満は無いのだが、その分、国王や他の小五月蠅い貴族達から、あれこれと指図されるのには辟易していた。
あれさえ無ければ快適な暮らしなのだが、しがない宮廷魔術師の身としては、国の莫大な補助のお陰で好きな事が出来ているので目を瞑っていた。
そんな窮屈な生活を強いられる私にも、一筋の希望があった。

それがアマーリエだ。

初めて彼女に会ったのは、私が10歳の時だった。
実は婚約する以前に、私は彼女と出会っていたのだ。
まあ、アマーリエは覚えていないようだが……。

当時まだ幼い彼女は、天使のように可愛いらしかったのを覚えている。
私が、宮廷魔術師だった恩師の所に預けられていた時、王宮の裏庭で薬草の採取をしていると、そこへ彼女がやって来たのだ。
薬草取りに集中していた私は、ふと視線を感じて見ると、すぐ側でちょこんと座ってこちらをじっと見ている翠の瞳と目が合った。
驚いた私は声も出せずに、突然現れた小さな少女を凝視していると、その少女が話しかけてきたのだった。

「なにを取ってるの?」

「え?」

「その、先がくるくるしてるのかわいい!」

「こ、これ!?」

「うん!」

「これは、今夜の夕食用で……」

「食べられるの?」

「あ、う、うん。」

「じゃあ、これも?」

「あ、それは綿毛花だから食べられないよ。」

「そうなんだ……。」

ジークハルトの言葉に、少女がしょんぼりしていると、一陣の風がさっと吹いてきた。
綿毛花の綿毛が、風に攫われて飛んでいく。
それを見た少女が、大きな瞳を見開いて声を上げた。

「わあ。これ、まほう!?」

「え?」

おねえちゃん・・・・・、まほう使える人なんでしょう?」

少女はジークハルトの綺麗な顔を、キラキラした目で見上げながら興奮した様子で聞いてきた。
その言葉に、ジークハルトは言葉に詰まる。
どこから突っ込めばいいんだと困惑していると、少女がまた話しかけてきた。

「その服、まほう使いさんの服だってパパが言ってたの。」

少女はそう言って、ジークハルトが着ていたローブを指さしてきた。
ジークハルトは、師匠から貰った己の着ていたローブを見下ろし「ああ」と納得する。

「うん、でもまだ見習いなんだ。」

「ミナライ?」

少女はジークハルトの言葉に、可愛らしい顔を少しだけ傾けながら鸚鵡返ししてきた。
その仕草に胸の奥がムズムズする。
ジークハルトは、こそばゆい感覚を誤魔化すように説明してきた。

「見習いっていうのは、半人前……ええっと、魔法使いになる前ってことだよ。」

「ふーん。」

少女は解ったのかわかっていないのか、きょとんとした顔で頷いてきた。

「そうなんだ、でもさっきのすっごくキレイだったよ!また見せてね!」

そう言うと少女は、にぱっと笑ってきたのだった。
ジークハルトはその笑顔に、知らず頬が熱くなっていく。
ジークハルトが、突然起こった胸の鼓動に困惑していると、少女がまた話しかけてきた。
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