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5.隠謀
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「これは何事です!?」
王宮の離れの一角で、女性の金切り声が響く。
ここは、第一王子妃に宛がわれたプライベートルーム ――王妃の寝室である。
そこに数人の騎士たちが、先触れも無く押しかけてきていた。
三人の侍女たちは、主人を守ろうと屈強な騎士たちの前に立ち塞がり、部屋の中に入れないよう牽制しているところだった。
その気丈な侍女たちを忌々しそうに睨み付けながら、騎士団長だと言う男が部屋の中にいる王妃に向かって声をかけてきた。
「第一王子妃様には、国王暗殺の嫌疑がかけられております。」
「なっ!?」
「よって、王子妃様の温室を検めさせて頂きたい。」
侍女が抗議の声を上げる前に、騎士団長は早口で要件を伝えてきた。
その言葉に、部屋の中で様子を窺っていた第一王子妃が、騎士団長の前に出てきた。
ローブの隙間から騎士団長を窺うと、醜い容姿に怯む様子も無くこちらを見降ろしている。
「それは誰の命令ですか?」
「第一王子様の、ご命令でございます。」
「……そうですか。」
騎士団長の答えに、王子妃は小さく息を吐き出すと、少しだけ横へずれ、騎士たちを招き入れる。
「温室は国王陛下から賜ったものです。貴重な薬草もあります。決して踏み荒らさないようお願いしますね。」
「……わかりました。」
騎士たちは、国王の名が出たことに一瞬躊躇いはしたが、しかし引き下がる事はせず温室に入って行った。
そして何種類かの薬草を採取すると、「検査の結果は追ってご報告に上がります。」と言って部屋から出て行った。
「な~んて無礼な奴らでしょう。」
騎士たちが、遠ざかって行ったのを確認した侍女たちは、部屋の中でぷりぷりと怒っていた。
「まあまあ、彼らも仕事だから仕方ないわ。」
第一王子妃は、そんな侍女たちに苦笑しながら席に着く。
侍女たちは、王子妃の動きに合わせて甲斐甲斐しく世話を焼き始めた。
彼女らは、第一王子妃がこの国へ来るときに一緒に連れてきた侍女たちだ。
王子妃と歳が近い彼女らは、主従というよりも友達に近い感覚で話せるので、王子妃にとって気の置けない侍女たちであった。
「でも、案外早かったですわね。」
一人の侍女が、ティーポット片手にそう話しかけてきた。
「ええ、本当に。ふふふ、あいつら、お嬢様の薬草を、毒だと思い込んでるみたいでしたわ。」
寝室の片付けに行っていた、もう一人の侍女が大きな籠を持ちながら、可笑しそうに笑ってきた。
「そうそう、どれも毒なんて無いのにね。毒があるのは、あの女が淹れるお茶位なものなのに。」
二人の侍女の言葉に相槌を打ちながら答えるのは、王子妃に朝食の用意をしていた侍女だった。
皆思い思いの事を話す侍女たちに、王子妃は苦笑を零す。
「あなた達ったら……。あとは検査の結果を待ちましょう。あちらがどう動いてくるのか、まだわからないけれどね。」
王子妃が困ったような顔で首を傾げると、三人の侍女たちは揃って胸を叩いてきた。
「その事については、私たちにお任せください!」
「ええ、守備は万端です!」
「お嬢様には、指一本触れさせませんわ!」
「……いや、そうではなくて……。」
無い胸を張って鼻息を荒くする侍女たちに、第一王子妃は眉根を下げて苦笑するしかなかった。
王宮の離れの一角で、女性の金切り声が響く。
ここは、第一王子妃に宛がわれたプライベートルーム ――王妃の寝室である。
そこに数人の騎士たちが、先触れも無く押しかけてきていた。
三人の侍女たちは、主人を守ろうと屈強な騎士たちの前に立ち塞がり、部屋の中に入れないよう牽制しているところだった。
その気丈な侍女たちを忌々しそうに睨み付けながら、騎士団長だと言う男が部屋の中にいる王妃に向かって声をかけてきた。
「第一王子妃様には、国王暗殺の嫌疑がかけられております。」
「なっ!?」
「よって、王子妃様の温室を検めさせて頂きたい。」
侍女が抗議の声を上げる前に、騎士団長は早口で要件を伝えてきた。
その言葉に、部屋の中で様子を窺っていた第一王子妃が、騎士団長の前に出てきた。
ローブの隙間から騎士団長を窺うと、醜い容姿に怯む様子も無くこちらを見降ろしている。
「それは誰の命令ですか?」
「第一王子様の、ご命令でございます。」
「……そうですか。」
騎士団長の答えに、王子妃は小さく息を吐き出すと、少しだけ横へずれ、騎士たちを招き入れる。
「温室は国王陛下から賜ったものです。貴重な薬草もあります。決して踏み荒らさないようお願いしますね。」
「……わかりました。」
騎士たちは、国王の名が出たことに一瞬躊躇いはしたが、しかし引き下がる事はせず温室に入って行った。
そして何種類かの薬草を採取すると、「検査の結果は追ってご報告に上がります。」と言って部屋から出て行った。
「な~んて無礼な奴らでしょう。」
騎士たちが、遠ざかって行ったのを確認した侍女たちは、部屋の中でぷりぷりと怒っていた。
「まあまあ、彼らも仕事だから仕方ないわ。」
第一王子妃は、そんな侍女たちに苦笑しながら席に着く。
侍女たちは、王子妃の動きに合わせて甲斐甲斐しく世話を焼き始めた。
彼女らは、第一王子妃がこの国へ来るときに一緒に連れてきた侍女たちだ。
王子妃と歳が近い彼女らは、主従というよりも友達に近い感覚で話せるので、王子妃にとって気の置けない侍女たちであった。
「でも、案外早かったですわね。」
一人の侍女が、ティーポット片手にそう話しかけてきた。
「ええ、本当に。ふふふ、あいつら、お嬢様の薬草を、毒だと思い込んでるみたいでしたわ。」
寝室の片付けに行っていた、もう一人の侍女が大きな籠を持ちながら、可笑しそうに笑ってきた。
「そうそう、どれも毒なんて無いのにね。毒があるのは、あの女が淹れるお茶位なものなのに。」
二人の侍女の言葉に相槌を打ちながら答えるのは、王子妃に朝食の用意をしていた侍女だった。
皆思い思いの事を話す侍女たちに、王子妃は苦笑を零す。
「あなた達ったら……。あとは検査の結果を待ちましょう。あちらがどう動いてくるのか、まだわからないけれどね。」
王子妃が困ったような顔で首を傾げると、三人の侍女たちは揃って胸を叩いてきた。
「その事については、私たちにお任せください!」
「ええ、守備は万端です!」
「お嬢様には、指一本触れさせませんわ!」
「……いや、そうではなくて……。」
無い胸を張って鼻息を荒くする侍女たちに、第一王子妃は眉根を下げて苦笑するしかなかった。
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