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9.醜女姫と第二王子
しおりを挟む「義姉上、こんなところで、どうしたのですか?」
その次の日、第一王子妃が書庫室の机で調べ物をしていると、背後から声がかけられた。
振り返ってみると、第一王子の弟である第二王子が不思議そうな顔で、こちらを見ていた。
「これは、第二王子殿下。今日もお勉強ですか?」
第一王子妃は、そう言って口元に笑みを作った。
目深に被ったフードから覗く皺のある口元から作り出される微笑みは、王宮で長く務めるベテランの側近たちでさえ、少々眉を顰めてしまうほど恐ろしく見える筈なのだが。
しかし、この第二王子は美醜を問わないのか、涼しい顔で挨拶をしてきてくれる稀有な存在であった。
「はい。ですが、義姉上はなぜこんな所に?たしか謹慎のはずではなかったですか?」
「ふふ、謹慎と言っても国王の部屋に入れないだけで、他は自由にして良いと言われてますのよ。」
第一王子妃は、可笑しそうに笑いながらそう説明する。
皆なぜか謹慎謹慎と煩いのだ、さすがの第一王子妃も周りの煩さにうんざりして、ここへ逃げてきたのだが、まさか第二王子に会うとは思っていなかった。
「確か今日は、語学の先生がいらしていたのではありませんか?」
第二王子の予定を思い出しながら聞いてみると、義弟は困ったような顔で話し出した。
「はい、先程まで授業を受けていたのですが、課題を出されてしまって……。」
秀才と期待される第二王子には、名高い功績をあげている著名人が教師に就いている。
そのため、時々こうして高度な課題を出されては、専門書を求めて書庫へと足を運んでいるのだそうだ。
第一王子妃は第二王子の話を聞きながら、「大変ですね。」と労いの言葉をかけていた。
「今回の課題は、どういったものなのですか?」
「はい、近隣諸国の古代語などの翻訳です。」
「まあ……。」
第二王子の言葉に王子妃は絶句する。
さすがにそれは、15歳のまだ成人していない男の子には、ハードルが高いのではないかと思われた。
「学者レベルですわね。」
「はい、何故か期待されてしまっているようで……。」
第二王子は王子妃の言葉に、困ったように眉根を下げながら言ってきた。
教師の期待度の高さに、第二王子様も大変ね、と内心でエールを贈る。
「近隣諸国ですと、私の国の言葉もあるかもしれませんね。もし私でわかる事があれば、お力になりましょうか?」
「本当ですか!?助かります!」
第一王子妃の言葉に、第二王子は顔をぱあっと輝かせて頷いてきた。
そして、いそいそと第一王子妃の向かいに腰掛けると、参考書を開いて見せてきた。
「これと、ここの言葉が良くわからないのです。」
そう言って指さしてきた言語は、運よく第一王子妃の母国の言葉だった。
「あら、これでしたら私も王女教育で習いましたわ。」
「本当ですか、良かったぁ~。」
ほっと胸を撫で下ろし、にこりと向けられた年相応の無邪気な笑顔に、第一王子妃も釣られて相好を崩した。
その途端、何故か第二王子はぽっと頬を染め、何やらもじもじし始めてきた。
どうしたのだろうと首を傾げていると、第二王子が恥ずかしそうに、はにかみながら言ってきた。
「そ、その……こんな事を言うのは大変失礼なんでしょうけど……。」
「何がですか?」
第一王子妃が、何を言うのだろうと身構えていると、義弟はこんなことを告白してきた。
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