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10.醜女姫と第二王子2
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「その……義姉上を見ると、乳母を思い出しまして……。」
「乳母、ですか?」
その昔、赤ちゃんだった頃の第一王子と第二王子の子守をしたという乳母は、確か御年八十を超えると聞く。
歴代の乳母だったらしく、なんと国王の子供のころの世話係もしたというベテランだ。
――でも、確かその乳母の方って……。
第一王子妃が思考に耽っていると、第二王子が言葉を続けてきた。
「し、失礼な事とは重々理解しているのですが、義姉上を見ていると懐かしくなってしまって……。」
そこまで聞いて、第一王子妃はなるほど、と合点がいった。
確か、乳母は昨年亡くなってしまったと聞いていた。
今まで身の回りの世話をしてくれていた、優しい祖母の様な人が突然いなくなってしまったのを寂しく思っていたのだろう。
そこへ、自分のような者が来れば面影を重ねてしまっても仕方がないといえる。
第一王子妃はくすりと微笑むと
「わたくしは、その乳母の方に似ているという訳ですね?」
「はい……勝手にお慕いしてしまって、申し訳ありません。」
「いえいえ、そんなこと気になさらなくていいんですよ。逆に私のような姿の者を好ましく思ってくださって、ありがとうございます。」
そう言って第一王子妃は、義弟に頭を下げた。
「お、面を上げてください!僕は貴方に大変失礼な事をしていたんですから!!」
そう言って第二王子は、王子妃の代わりにぺコペコ頭を下げてきた。
その狼狽え振りに、王子妃は苦笑してしまう。
「本当に申し訳ありません。僕より三つしか違わない貴女に、こんな事を思うなんて。」
そう言って、第二王子はまた頭を下げてきた。
そう、何を隠そう第一王子妃はまだ18歳なのだ。
しかも、夫である第一王子とは同い年である。
本来なら、うら若き乙女に昨年亡くなった老婆を重ねるなんて失礼極まりないことである。
しかもその容姿に、もしコンプレックスを持っていたら、不敬にもほどがあるというものだった。
しかし第一王子妃は、第二王子を咎めるどころか
「まあ、こんな姿ですしねぇ。」
と当の本人は、あっけらかんとしていた。
「は、はあ。」
第一王子妃の言葉に、呆気に取られる義弟。
「しかも醜女姫なんて、仇名まで付いていますからね。今更、傷つきませんよ。」
「それは……。」
なんて事ないように笑う第一王子妃に、第二王子は不機嫌そうに眉間に皺を寄せてきた。
「その呼び名、いったい誰が広めたのでしょうか?」
不機嫌も露わに呟く義弟に、第一王子妃はおや?と首を傾げる。
「さあ、私もそこまでは。でもこの姿では仕方がないですから。」
「しかし、人の容姿を影で笑うのは良くない事です!」
真っすぐなその意見に、第一王子妃は微笑ましい気持ちになる。
ふふ、と笑みを零すと、ちょっと意地悪な質問をしてみた。
「殿下は、わたくしの容姿のこと、お聞きにならないのですか?」
「え?」
「気になるんでしょう?」
そう言って、少しだけフードを上げる素振りをする。
「……いえ、人には色々な事情があると教えられました。そして、その事情について根掘り葉掘り聞くなとも。」
第二王子は王子妃の挑発を物ともせず、そう言ってゆるく首を振ってきた。
その答えに第一王子妃は、にんまりと深く笑む。
「……そうですか。わたくし、そろそろ戻りませんと。大変有意義な時間でしたわ、ありがとうございます第二王子殿下。」
「あ、はい。僕も、とても楽しかったです。また機会がありましたら、お話ししましょう。」
「ええ、是非。それでは、お先に失礼します。」
第一王子妃はそう言ってカーテシーをすると、書庫から退室していった。
「乳母、ですか?」
その昔、赤ちゃんだった頃の第一王子と第二王子の子守をしたという乳母は、確か御年八十を超えると聞く。
歴代の乳母だったらしく、なんと国王の子供のころの世話係もしたというベテランだ。
――でも、確かその乳母の方って……。
第一王子妃が思考に耽っていると、第二王子が言葉を続けてきた。
「し、失礼な事とは重々理解しているのですが、義姉上を見ていると懐かしくなってしまって……。」
そこまで聞いて、第一王子妃はなるほど、と合点がいった。
確か、乳母は昨年亡くなってしまったと聞いていた。
今まで身の回りの世話をしてくれていた、優しい祖母の様な人が突然いなくなってしまったのを寂しく思っていたのだろう。
そこへ、自分のような者が来れば面影を重ねてしまっても仕方がないといえる。
第一王子妃はくすりと微笑むと
「わたくしは、その乳母の方に似ているという訳ですね?」
「はい……勝手にお慕いしてしまって、申し訳ありません。」
「いえいえ、そんなこと気になさらなくていいんですよ。逆に私のような姿の者を好ましく思ってくださって、ありがとうございます。」
そう言って第一王子妃は、義弟に頭を下げた。
「お、面を上げてください!僕は貴方に大変失礼な事をしていたんですから!!」
そう言って第二王子は、王子妃の代わりにぺコペコ頭を下げてきた。
その狼狽え振りに、王子妃は苦笑してしまう。
「本当に申し訳ありません。僕より三つしか違わない貴女に、こんな事を思うなんて。」
そう言って、第二王子はまた頭を下げてきた。
そう、何を隠そう第一王子妃はまだ18歳なのだ。
しかも、夫である第一王子とは同い年である。
本来なら、うら若き乙女に昨年亡くなった老婆を重ねるなんて失礼極まりないことである。
しかもその容姿に、もしコンプレックスを持っていたら、不敬にもほどがあるというものだった。
しかし第一王子妃は、第二王子を咎めるどころか
「まあ、こんな姿ですしねぇ。」
と当の本人は、あっけらかんとしていた。
「は、はあ。」
第一王子妃の言葉に、呆気に取られる義弟。
「しかも醜女姫なんて、仇名まで付いていますからね。今更、傷つきませんよ。」
「それは……。」
なんて事ないように笑う第一王子妃に、第二王子は不機嫌そうに眉間に皺を寄せてきた。
「その呼び名、いったい誰が広めたのでしょうか?」
不機嫌も露わに呟く義弟に、第一王子妃はおや?と首を傾げる。
「さあ、私もそこまでは。でもこの姿では仕方がないですから。」
「しかし、人の容姿を影で笑うのは良くない事です!」
真っすぐなその意見に、第一王子妃は微笑ましい気持ちになる。
ふふ、と笑みを零すと、ちょっと意地悪な質問をしてみた。
「殿下は、わたくしの容姿のこと、お聞きにならないのですか?」
「え?」
「気になるんでしょう?」
そう言って、少しだけフードを上げる素振りをする。
「……いえ、人には色々な事情があると教えられました。そして、その事情について根掘り葉掘り聞くなとも。」
第二王子は王子妃の挑発を物ともせず、そう言ってゆるく首を振ってきた。
その答えに第一王子妃は、にんまりと深く笑む。
「……そうですか。わたくし、そろそろ戻りませんと。大変有意義な時間でしたわ、ありがとうございます第二王子殿下。」
「あ、はい。僕も、とても楽しかったです。また機会がありましたら、お話ししましょう。」
「ええ、是非。それでは、お先に失礼します。」
第一王子妃はそう言ってカーテシーをすると、書庫から退室していった。
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