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ふたつ、ということ
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「師匠。今日は、簡単なクエストを受けた後に市街地で買い物をします。なにか欲しいものはありますか?」
「大丈夫だよ、いらない。それより、ジョシュアはそろそろ国に帰って……」
「では、いってきますね。すぐ戻りますから」
「あ、いってらっしゃい」
遮るように言葉を重ねたのは意図的なのだろう。
今年で十六になった捨て子……ジョシュアは見違えるほど立派に成長した。
前世でも独身だった俺はろくに子育てらしい事はできないだろうと割り切って、この残酷な世界を生き延びる方法だけをジョシュアに教え込んだ。
戦闘方法、魔力の操作方法、金銭的な概念、政局……そういった俺にとって煩わしい事柄でさえも、元の育ちのおかげか吸収が早かった。
これならば、もう一人立ち出来るだろうと判断してこの森を出ろと伝えたのが去年のこと。
そもそも大した縁もなく居着いただけの土地だろうから、ジョシュアもこの日を待ち望んでいただろうと思っていた。
だが、思惑は外れた。
俺の言葉を聞いたジョシュアは酷く傷付いた顔をして、頭を横に振ったのだ。どうしてそんなことを言うんだ、私はここで生きていきたいのに。そう言って俺の手に縋って泣きだした。
縋られた側の俺の衝撃といったら、相当なものだ。まさか、そんなにこの家に思い入れがあるなんて思ってもみなかった。
ギャン泣き騒動以来、ジョシュアは実入りの良い長期クエストも受けなくなり、頑なにこの家を離れようとしない日々が続いている。
──この状況は良くない。
本来、人間と魔人の生活は交わらない。捕食する側である魔人の俺の渇きも日に日に増していく。
元々は果物や別の生物の肉を食べて過ごしていたが、四六時中御馳走が目の前にあるのだ。少なからずストレスになる。
それに、なにも自分の都合だけでジョシュアを追い出そうとしているわけではない。
ジョシュアを発見したあの日。
家に持ち帰ってボロボロの身体を丸洗いしたところ、全身に加護の魔術が施されていたことに気が付いた。
ジョシュアの言う母上とやらが最後の頼みの綱として掛けた加護だったのだろう。そう考えると、わが子への処遇は、望んで行ったものではないはずだ。
事実、ジョシュアの祖国は激しい内乱と侵略で統制を失っていた。
誰が敵になるとも分からない世の中で、わが子の生存に一縷の望みをかけた、愛ゆえの放棄。
その願いを託した先が、閉ざされた森に巣食う主、つまりは俺だった。
そう考えれば、ジョシュアが腰を落ち着けるべき場所は、ここではないことは明白だ。
「言っても聞かないガキンチョへの対処法かぁ……あ、そうだ」
名案を思いついた俺は、早速準備に取り掛かった。
軽いクエストなら、あと数時間後にはジョシュアが戻ってくるだろう。俺は指先に纏わせた魔力で、木製のテーブルに傷跡を残していく。
「よし、いい感じ。ま、あとは頑張ってね……ジョシュア」
♦♢♦
次の住居は心機一転、海沿いにしてみることにした。
海に面しながらも人里離れた土地を探すのは骨が折れたが、魔人として生きていくためには必要な労力だ。
前の森も気に入っていたけど、別にそこで一生を終えたいと願っていたわけではない。どうせ引っ越すなら、全く違う土地に住んでみたいという、ちょっとした遊び心だ。
ジョシュアに告げず、着の身着のままで家を出たのが数年前。
言っても聞かないなら、行動で示す。
何も告げず家を出ると、突発的に決断したのが良かった。念入りに計画を立てていたら、妙に察しの良いジョシュアに勘付かれていただろう。そうなれば、また泣かれて御破算になっていたはずだ。
『海での生活も悪くないなぁ』
家の目の前には、小さな砂浜がある。波打ち際に足を浸けているだけで、瞬く間に時間が吸われていく。
きらきらと煌めく水面は、いつか見た子供の無垢な瞳にそっくりだった。
この間、人に紛れて街へ出たときに、面白い噂を耳にした。
──人の業とは思えない闘い方をする、救国の英雄がいる。
ああ、ジョシュアだ。直感的にそう思った。
あの子供に教え込んだのは、魔人として生きてきた俺が一番恐怖と感じる、捨て身の戦法。
こうして、国を超えて噂をされる英雄になったとは。長生きはするものだと、喜ばしく感じた。
なにより、ジョシュアが祖国に帰ったことを推測できる内容に安堵した。
あの日の決断は間違っていなかった。
アイツはあの森で慎ましく生を終える存在じゃなかった。
多くを救い、国を建て、大手を振って幸せに暮らすべき人間だった。俺と森に隠れて生きるだなんて、そんなことがあってはならなかった。
『……よかったよ、これで』
放り出した足に、優しく打ち寄せる青と戯れる。
触れたところから歪み、肌や太陽の色を巻き込んで屈折した光は彩りに満ちていた。
こうして未練たらしく考えてしまうのは、きっとあの生活も悪くないと感じていたから。綺麗な思い出として昇華されたあの日々は、きっとこれからも俺の糧になる。
アイツもきっと────
「見つけた」
突然、全身を強い力で拘束されて頭が真っ白になる。
気配すらも悟らせず、指の一本すらも動かせないほどの強制力を伴う魔術で雁字搦めにされたのだ。
何が起きたのか把握できないまま、命の危機であることだけを理解する。全身を覆うように、冷汗が噴き出た。
この拘束を逃れる術はないかと、唯一動かせる眼球で相対する獲物を捉えようとした。
「師匠。酷いじゃないですか、私を一人にするなんて」
底冷えするような声色で、恨み言を呟く声。
『ジョシュア……』
「それ、ジョシュアって言ってくれましたか? そうです。ジョシュアです……貴方に捨てられた憐れな人間です」
「捨てたんじゃない。分かってるでしょ、君も」
「いいえ、分かりません。私は貴方と生きる以外になにも望んでいないのですから」
身動きが取れず座り込んだ俺の身体を全身で包むように抱いたジョシュアの身体は、数年でより大きく逞しくなっていた。
俺が老いて小さくなったのかと思ったが、魔人の寿命は人間の比ではない。単純にジョシュアの成長によるものだった。
「聞き分けが悪いな、そんな子に育てた覚えはありませんけど?」
「なんとでも言ってください。私にとって貴方の声が紡ぐ言葉は、睦言も同然ですから」
「……は?」
「師匠……アルベール。貴方と離れて過ごす日々は最悪の一言でした。生きた心地がしなかった。また、戻ってきてくれませんか」
「え? そんなに?」
聞き間違いかと思ったが、本人は大真面目らしい。この薄ら寒い愛情表現は、誰が聞いても師弟の関係を超えている。
いや、それは違うじゃん。そんな表情が眉間の皺の数から読み取れたのだろう。ジョシュアは、深く溜息をついて、俺の身体を軽々と抱き上げた。
「え、ちょっと? 俺はまだなにも……!」
「どれだけ長い時を共に過ごしたと思っているんですか。あなたの表情だけで意志は読み取れます。最初から拘束しておいてよかったです。手間が省けました」
一切抵抗できない俺は、ジョシュアの腕の中で自省する他なかった。どうしてこうなったんだ、どこから間違えたのか……色々と思考を巡らせてみたが、答えは見つからない。
俺の百面相を見ていたのか、ジョシュアが可笑しそうに微笑んでいる。
「なんだか、私を拾ってくれたあの時の再現のようですね」
「構図は全くの逆だけど」
「ふふ、そうですね……もう、我儘を言って逃げ出さないでくださいね」
俺の思いやりを我儘と言ってのけたジョシュアは、一瞬笑みを消すと俺の耳元で低く囁いた。
「アルベール。アンタが何処へ逃げようと、地の果てまで追いまわしてやるから、諦めな」
「ふ、不遜なガキンチョめ……!」
背筋を伝う冷汗に気付かない振りをして、精一杯の憎まれ口を叩いた。
英雄とまで言われる実力者になったジョシュアに追われれば、逃げ切ることは叶わないのだろう。
鋭い瞳で睨まれた俺の脳の裏側には、その事実だけが刻み込まれた。
──救国の英雄には、秘密がある。
何人も立ち入ることを禁じられた森の中で、愛し君を幽閉しているらしい。その森に手出しをしたら最後、二度と朝日を拝むことはできないだろう。
「大丈夫だよ、いらない。それより、ジョシュアはそろそろ国に帰って……」
「では、いってきますね。すぐ戻りますから」
「あ、いってらっしゃい」
遮るように言葉を重ねたのは意図的なのだろう。
今年で十六になった捨て子……ジョシュアは見違えるほど立派に成長した。
前世でも独身だった俺はろくに子育てらしい事はできないだろうと割り切って、この残酷な世界を生き延びる方法だけをジョシュアに教え込んだ。
戦闘方法、魔力の操作方法、金銭的な概念、政局……そういった俺にとって煩わしい事柄でさえも、元の育ちのおかげか吸収が早かった。
これならば、もう一人立ち出来るだろうと判断してこの森を出ろと伝えたのが去年のこと。
そもそも大した縁もなく居着いただけの土地だろうから、ジョシュアもこの日を待ち望んでいただろうと思っていた。
だが、思惑は外れた。
俺の言葉を聞いたジョシュアは酷く傷付いた顔をして、頭を横に振ったのだ。どうしてそんなことを言うんだ、私はここで生きていきたいのに。そう言って俺の手に縋って泣きだした。
縋られた側の俺の衝撃といったら、相当なものだ。まさか、そんなにこの家に思い入れがあるなんて思ってもみなかった。
ギャン泣き騒動以来、ジョシュアは実入りの良い長期クエストも受けなくなり、頑なにこの家を離れようとしない日々が続いている。
──この状況は良くない。
本来、人間と魔人の生活は交わらない。捕食する側である魔人の俺の渇きも日に日に増していく。
元々は果物や別の生物の肉を食べて過ごしていたが、四六時中御馳走が目の前にあるのだ。少なからずストレスになる。
それに、なにも自分の都合だけでジョシュアを追い出そうとしているわけではない。
ジョシュアを発見したあの日。
家に持ち帰ってボロボロの身体を丸洗いしたところ、全身に加護の魔術が施されていたことに気が付いた。
ジョシュアの言う母上とやらが最後の頼みの綱として掛けた加護だったのだろう。そう考えると、わが子への処遇は、望んで行ったものではないはずだ。
事実、ジョシュアの祖国は激しい内乱と侵略で統制を失っていた。
誰が敵になるとも分からない世の中で、わが子の生存に一縷の望みをかけた、愛ゆえの放棄。
その願いを託した先が、閉ざされた森に巣食う主、つまりは俺だった。
そう考えれば、ジョシュアが腰を落ち着けるべき場所は、ここではないことは明白だ。
「言っても聞かないガキンチョへの対処法かぁ……あ、そうだ」
名案を思いついた俺は、早速準備に取り掛かった。
軽いクエストなら、あと数時間後にはジョシュアが戻ってくるだろう。俺は指先に纏わせた魔力で、木製のテーブルに傷跡を残していく。
「よし、いい感じ。ま、あとは頑張ってね……ジョシュア」
♦♢♦
次の住居は心機一転、海沿いにしてみることにした。
海に面しながらも人里離れた土地を探すのは骨が折れたが、魔人として生きていくためには必要な労力だ。
前の森も気に入っていたけど、別にそこで一生を終えたいと願っていたわけではない。どうせ引っ越すなら、全く違う土地に住んでみたいという、ちょっとした遊び心だ。
ジョシュアに告げず、着の身着のままで家を出たのが数年前。
言っても聞かないなら、行動で示す。
何も告げず家を出ると、突発的に決断したのが良かった。念入りに計画を立てていたら、妙に察しの良いジョシュアに勘付かれていただろう。そうなれば、また泣かれて御破算になっていたはずだ。
『海での生活も悪くないなぁ』
家の目の前には、小さな砂浜がある。波打ち際に足を浸けているだけで、瞬く間に時間が吸われていく。
きらきらと煌めく水面は、いつか見た子供の無垢な瞳にそっくりだった。
この間、人に紛れて街へ出たときに、面白い噂を耳にした。
──人の業とは思えない闘い方をする、救国の英雄がいる。
ああ、ジョシュアだ。直感的にそう思った。
あの子供に教え込んだのは、魔人として生きてきた俺が一番恐怖と感じる、捨て身の戦法。
こうして、国を超えて噂をされる英雄になったとは。長生きはするものだと、喜ばしく感じた。
なにより、ジョシュアが祖国に帰ったことを推測できる内容に安堵した。
あの日の決断は間違っていなかった。
アイツはあの森で慎ましく生を終える存在じゃなかった。
多くを救い、国を建て、大手を振って幸せに暮らすべき人間だった。俺と森に隠れて生きるだなんて、そんなことがあってはならなかった。
『……よかったよ、これで』
放り出した足に、優しく打ち寄せる青と戯れる。
触れたところから歪み、肌や太陽の色を巻き込んで屈折した光は彩りに満ちていた。
こうして未練たらしく考えてしまうのは、きっとあの生活も悪くないと感じていたから。綺麗な思い出として昇華されたあの日々は、きっとこれからも俺の糧になる。
アイツもきっと────
「見つけた」
突然、全身を強い力で拘束されて頭が真っ白になる。
気配すらも悟らせず、指の一本すらも動かせないほどの強制力を伴う魔術で雁字搦めにされたのだ。
何が起きたのか把握できないまま、命の危機であることだけを理解する。全身を覆うように、冷汗が噴き出た。
この拘束を逃れる術はないかと、唯一動かせる眼球で相対する獲物を捉えようとした。
「師匠。酷いじゃないですか、私を一人にするなんて」
底冷えするような声色で、恨み言を呟く声。
『ジョシュア……』
「それ、ジョシュアって言ってくれましたか? そうです。ジョシュアです……貴方に捨てられた憐れな人間です」
「捨てたんじゃない。分かってるでしょ、君も」
「いいえ、分かりません。私は貴方と生きる以外になにも望んでいないのですから」
身動きが取れず座り込んだ俺の身体を全身で包むように抱いたジョシュアの身体は、数年でより大きく逞しくなっていた。
俺が老いて小さくなったのかと思ったが、魔人の寿命は人間の比ではない。単純にジョシュアの成長によるものだった。
「聞き分けが悪いな、そんな子に育てた覚えはありませんけど?」
「なんとでも言ってください。私にとって貴方の声が紡ぐ言葉は、睦言も同然ですから」
「……は?」
「師匠……アルベール。貴方と離れて過ごす日々は最悪の一言でした。生きた心地がしなかった。また、戻ってきてくれませんか」
「え? そんなに?」
聞き間違いかと思ったが、本人は大真面目らしい。この薄ら寒い愛情表現は、誰が聞いても師弟の関係を超えている。
いや、それは違うじゃん。そんな表情が眉間の皺の数から読み取れたのだろう。ジョシュアは、深く溜息をついて、俺の身体を軽々と抱き上げた。
「え、ちょっと? 俺はまだなにも……!」
「どれだけ長い時を共に過ごしたと思っているんですか。あなたの表情だけで意志は読み取れます。最初から拘束しておいてよかったです。手間が省けました」
一切抵抗できない俺は、ジョシュアの腕の中で自省する他なかった。どうしてこうなったんだ、どこから間違えたのか……色々と思考を巡らせてみたが、答えは見つからない。
俺の百面相を見ていたのか、ジョシュアが可笑しそうに微笑んでいる。
「なんだか、私を拾ってくれたあの時の再現のようですね」
「構図は全くの逆だけど」
「ふふ、そうですね……もう、我儘を言って逃げ出さないでくださいね」
俺の思いやりを我儘と言ってのけたジョシュアは、一瞬笑みを消すと俺の耳元で低く囁いた。
「アルベール。アンタが何処へ逃げようと、地の果てまで追いまわしてやるから、諦めな」
「ふ、不遜なガキンチョめ……!」
背筋を伝う冷汗に気付かない振りをして、精一杯の憎まれ口を叩いた。
英雄とまで言われる実力者になったジョシュアに追われれば、逃げ切ることは叶わないのだろう。
鋭い瞳で睨まれた俺の脳の裏側には、その事実だけが刻み込まれた。
──救国の英雄には、秘密がある。
何人も立ち入ることを禁じられた森の中で、愛し君を幽閉しているらしい。その森に手出しをしたら最後、二度と朝日を拝むことはできないだろう。
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