所詮、狗。

はちのす

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心配性

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ブーッ ブーッ

割り当てられた部屋に到着するや否や、青野に渡されたスマートフォンが鳴動した。

「うわっ、この感覚久しぶりすぎてビビるな」

マナー状態になっているらしく、控えめに振動を続けている。
画面に表示された番号は見覚えが無かったが、おそらくアイツだろうと当たりをつけて通話をタップした。

『先輩!出てくれてありがとうございます』

「あー、青野?本当にすぐ連絡してきたな」

『その日中に電話なんて、少し気味悪がられるかなと思ったんですが……今日を逃すと二度と出てくれないんじゃないかって』

「んな不義理なことはしねぇよ……多分」

『自信なさげに言わないでください!』

「すまんすまん。で、どうしたんだ?もうお前は俺が居なくても立派にやれてるだろ」

『そういう事じゃないんですよ、黒谷先輩……』

俺があの穴倉を抜けてからというもの、青野は月に一度は必ず生存確認の電話を掛けてきていた。

その日暮らしで食い繋いでいた俺を心配して、オカンの如く心配性を発揮していたのだ。

それが、懐加減を理由に、数ヶ月前にスマートフォンを解約する事を伝えないまま全てを手放してしまった。
今考えると、事前に連絡するなりしておけばよかったと思う。

(でもまあ……いつまでも俺の生活で気を揉ませるのも悪いなと思ってたんだ)

結局のところ俺を見つけ出して、わざわざ自分の私財を投じてまで連絡手段を持たせてきたことには驚いたが。

『……で、なんですかあの白王って男は』

「気に食わなかったか?」

『当たり前ですよ、太々しい、先輩をどうしたいのか読めないところも不可解ですね』

「それは全面的に同意する」

『それに……先輩に痕をつけるなんて、許せないです』

「痕…?あ、首のことか」

首あたりに視線を感じるとは思っていたが、やはり目敏く見つけていたらしい。
電話口からでも、不満の色がありありと伝わってくる。

『先輩、やっぱり俺の所じゃ駄目ですか?どうしても、俺とは暮らせないですか』

「だから青野、申し出は有難いが彼女さんの事も考えてやれよ」

『……それとコレは別です』

そう、コイツが理解出来ない理由の一つがコレ。

仕事一筋なのか何なのか。コイツはどんな事があっても仕事……ひいてはを、恋人との予定よりも優先する癖がある。
張り込みで数日間共に時間を過ごした後でも、プライベートでメシに誘ってくる人間なんだ。

(いち早く戻って、彼女さんと食べればいいものを……)

『よく知りもしない輩に貴方の手綱を握られて、おめおめと引き下がれる筈ありません』

「はあ?いや待てよ……」

『住居は、あの探偵社ですね?準備が整ったら迎えに行きますから』

「あっ、おい!」

最後は青野が捲し立てるように一方的に話を進め、プツリと通話が途絶えた。

「……こっちの話を聞きやしねぇ」

まさか本当にここまで乗り込んでくるのか?

(過保護もここまで来るとコトだな)

良い加減俺を鬱陶しく思った青野の恋人に、背後から刺されるイメージが湧いて出た。
そんな未来が訪れないようにと祈りながら、人知れず大きく息を吐いた。

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