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2章 新生活スタート
12 入学のススメ
しおりを挟む朝起きると視界一杯にモフモフが映り込んだ。
ーえ?何で?
「起きたか、カンザキ」
重低音が耳元で響き、魂が抜けかけた。
「いやいや、なんで添い寝してんの?」
「昨日カンザキが私を撫でながら寝たからだろう。朝起きたら続きをしてもらおうとな。」
「朝から?!何かが減る気がするから断る。」
「まあそう言うな。簡単に撫でるだけで良い」
「…今日だけだぞ」
フワフワの毛並みを撫で付け、耳の付け根を軽く揉んだ。
「さ、今日はセシルさんに呼ばれてるんだ。早めに行くぞ。」
「…ぁ、ああ。」
俺が立ち上がった動作に合わせ、
耳と体をフルリと震わせ立ち上がる。
本当に犬だなあ…
あ、狼か。
「あれ?昨日風呂とか入ってないはず…」
何故か寝巻きに着替えており、身体も至って清潔だ。
「それなら私がクリーンの魔法をかけておいた。基本的に魔族は風呂には入らないぞ。」
「え?この家には風呂あったろ。」
「あの小童の計らいだろう。入りたければ入れ。」
なんで不機嫌そうなんだ。
セシルさんのこと嫌いすぎだろう…
時間も時間だし、今日は風呂はいいや。
早速セシルさんのところに向かおう。
「カンザキ、今日の昼過ぎは暇だろ?
会わせたい奴がいる。」
「断定かよ。暇だけどさ…
会わせたいって、突然だな。誰?」
「まあ、会うまで楽しみにしてろ。」
「ふーん」
特に気にもせず、衣服を整え始めた。
セシルさんからもらった服は、ブラウスとスラックス。
これならどこに行っても恥ずかしくないな。
持ち物も特にないし。
さあ、行きますか。
******
所変わって校長室。
「おはよう、カンザキくん。…人型をとられているマーナガルム様は久しぶりに見たよ。」
セシルさんの笑顔は今日も眩しい。
少し困り顔だけど。
「おはようございます、セシルさん。
昨夜はログハウスに泊まりました。
非常に快適な住まいをありがとうございます。」
「気に入ってもらえた様で嬉しいよ。
私も今度遊びに行ってもいいかな?」
「遊びに行くなんて。セシルさんの持ち物なんですから、いつでもお越し下さい。」
「ふふ、ありがとう…マーナガルム様は何で機嫌が悪そうなのかな?」
「小童に私の縄張りに入られるのが不快だ。」
「おい、マーナ。セシルさんにその態度はないだろ。」
軽い言い合いを始めると、セシルさんが焦ったように口を挟んできた。
「待って待って。カンザキくん、昨日も思ったんだけどマーナって?マーナガルム様のことだよね?」
「そうですが…」
「マーナガルム様はこの学院の構内を守護をしてくださっている聖獣なんだ。
その、言葉遣いには…」
「私がマーナと呼べと頼んだのだ。小童は口を挟むな」
マーナの言葉を聞くなり、セシルさんは信じられないとこちらを凝視してきた。
「カ、カンザキくん…君なにしたの…」
「いや、何もしてないです。」
(一緒に住んでます、って言ったらどんな表情をするだろうか。)
これは俺の悪い癖だが、反応の良い人を虐めたくなってしまうことがある。
一度気になってしまえば実行したくて仕方なくなるのも、その質の悪さに拍車をかけている。
「コホン、まあいいです。マーナガルム様が側にいてくださっているのならば、学院を自由に行き来しても問題ないね。
魔力がないから、授業には出られないのだけど、それでもいいかな?」
「!ありがとうございます。実は昨日の話にもあった展示館に行ってみたかったんです。」
「ああ、そうだね。是非行ってみて。
何か情報があるはず。
ただ、通行に魔力認証が必要なんだ。
必ずマーナガルム様と共に行動すること。」
(それはかなり面倒くさ…いや、マーナがいてくれて助かるな。)
ふと視線を感じて横を見ると、得意げにこちらを見て尻尾をフリフリしている。
口パクで何か言ってるな。
「な、で、ろ」
いや、またかよ。
「そうだセシルさん。昨日食堂を使ったんですが、支払いはどちらにすれば…」
「あ、それはいいですよ。私の方で負担します。それに、カンザキくんお金持ってないでしょう?」
(ば、バレてたー!!!)
無銭飲食がバレてしまった。
かなり居心地が悪いぞこれ。
「すみません。かわりに、私に何かできることはありますか?」
(なんでも便利に魔法でこなせてしまうのに、人力の仕事なんてあるわけないだろうけど…)
そう考えていると、セシルさんの目が「待ってました」と言わんばかりに爛々と輝いた。
ー え?
「いやー!助かります。実は研究の助手がいなくて、丁度探していた所なんだ。
カンザキくんさえ良ければ、放課後の時間を私にくれないかな?」
「勿論いいですけど…そんなことで良いんですか?」
助手なんて、大した仕事ではないだろうと了承したところに、今まで大人しくしていたマーナが口を挟んだ。
「どんな研究内容だ。」
「ああ、マーナガルム様。いえ、無属性中級魔法の研究ですよ。
効果範囲を調べるだけです。」
「効果範囲、ねえ?実験台は用意しているのか?」
「…ッお見通し、ですか。特段危険なものではありませんよ。」
「俺の目がない所でカンザキに何かしてみろ、お前の無属性魔法を無効化してやる」
「…ご心配には及びませんよ。」
(え、え、これどう言う状況?)
俺がワタワタしているうちに話は終わったのか、校長はこちらに向き直った。
「じゃあカンザキくん。今日の放課後から、研究棟に来てもらいたいんだ。
校長室から一緒に向かおう。」
「承りました。マーナも連れてきて良いんですか?」
「研究室内は基本的に研究者と助手以外は入れないんだ。校長室までは一緒においで。」
(マーナは途中解散ね。何の研究だろう…)
マーナは不機嫌そうに尻尾を揺らしている。
マーナでも覆せない規則があるのか…
少し不安になりながら、俺たちは校長室を後にし、展示館へと向かった。
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