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2章 新生活スタート
21 少数精鋭
しおりを挟むユージンに連れられ教室へと向かう。
道中聞いたのだが、授業は属性ごとのクラスでやるようだ。
その上、魔法を中心に扱う魔技クラスと剣術を中心に指導する剣技クラスがあるらしい。
魔法学校なだけあって、各学年、魔技クラスは各属性2クラスあるらしいが、剣技クラスは一つのみだそう。
魔技クラスに所属する生徒は魔導士となり、剣技クラスの卒業者は騎士団や近衛団として活躍するらしい。
上記の職業は国際魔法免許がないと就く事ができない職業で、それ以外はサービス業や農業といった職になるそうだ。
(この世界も大変だな…)
妙にリアルな世界観に胃がキリキリ言い出した。
(そういえば俺、絶賛無職だもんな…)
思い出さないようにしていた事実に、
身が震える。
(もし帰れたとしても、職も家も失っている可能性が高いよな)
帰ってからの生活に暗い影が落ちる。
憂鬱な気持ちで歩いていると、ユージンが突然振り返った。
「そういえば、職員室行かなくていいのか?先生に挨拶してないんだろ?」
…職員室!!
しまった。高校なんて十何年前の話で、すっかりその存在を忘れてしまっていた。
俺が思考の海に沈んでいる間に、職員室の目の前まで来ていたのだ。
「ありがとう、ユージン。職員室の存在をすっかり忘れてた。」
「やっぱりか!
教室まで一緒に行けなくて残念だけど、先生に顔見せた方がいいと思うぞ。」
「じゃ行ってくる。ここまでありがとう。」
さすがユージン、気が利くし、人を喜ばせるのが上手い。
好青年を絵に描いたような人間だ。
ユージンに見送られながら、俺は職員室の扉を開いた。
ここもかなり扉がデカい。
「失礼します。」
「おーう…あれ?カンザキじゃないか!」
扉に一番近い席に座っていた教師がこちらを見遣る。
ちょっと抜けた返事をしてきたのは、以前熱烈なバンドシェイクを披露してくれたダリアだ。
思わず2歩ほど下がってしまった俺は悪くないと思う。
「あ、ダリアさん…いや、先生か。
おはようございます。実は、今日から木属性の剣技クラス所属になりまして。」
「そうかそうか!良かったなあ!歓迎するぞ。」
人の良い笑みを浮かべながら、俺の肩に手を置いてきた。
力加減が出来ないこの男に弱い関節に触れられたというだけで、俺は半ビビリ状態だ。
何?ビビリだって?痛いの苦手なんだよ…大目に見てくれ。
「だが、木属性か…残念だな。折角なら俺が指導したかったぞ。」
「(全力で遠慮させていただきます)」
危ない危ない。心の声が出かかってしまった。
ダリア先生はくるりと後ろを向き、
緑色の髪をしたポニーテールの男性に向かって声をかけた。
「ハイル!転入生のカンザキが来たぞ!」
「カンザキくん、おはようございます。こちらへどうぞ。」
こちらを振り返ったハイル先生の容姿を一言で表すなら"ラストサムライ"だ。
腰ほどまであるポニーテール、腰に差した長物、剣を扱う為か、ローブは着用しておらず洋装だ。
椅子から立ち上がる所作は洗礼されており、隙がない。
ゲームの登場人物のような様に、思わずじっくり観察してしまった。
「どうかされましたか。」
「あ、いえ…すみません。
今日から木属性の剣技クラス所属になりましたカンザキです。宜しくお願いします。」
「私は指導担当のハイルです。どうぞよしなに。」
ー よ、よしな?!
そんな言葉遣い久しぶりに聞いたな。
あまりのキャラの濃さと、相反するような清廉な雰囲気に動揺してしまった。
この雰囲気を例えるなら、そうだな。
深い森に湧く透き通った水ってところだろうか。
「校長より話は聞いています。大変でしたでしょう。
無理をせず、心ゆくまで学んで行ってください。」
静かで、曇りのない透き通った目で見据えられる。
心の深いところまで見透かされた様な気がしてきた。
…俺みたいな隠し事が多い人間には些か居心地が悪い。
更には設定上の悲劇に心を痛めてくれているらしい。
それもまた気後する理由かもしれない。
「早速ですが、朝礼の時間も迫ってきましたし、早速教室へ向かいましょう。
学園のことは道中お話しします。」
*****
「剣技クラスのことは聞いていますか?」
「魔法を使用した剣技を中心に学ぶクラスと聞いてきます。」
「おや、ご存知でしたか。」
「先程小耳に挟みまして。」
「そうですか。それは良かった。
それが一番の特徴ですね。
その他に剣技クラスの特徴を挙げるとするなら、もう一点。
剣技クラスは総じて『少数精鋭』なのですよ。」
「少数精鋭?」
「まあ、ご覧いただければ分かりますよ。」
ハイル先生はある教室の前に立ち、静かな動作で扉を開く。
先生が入った後の扉の隙間からチラッと中を覗いてみた。
そこには机が2台、3台…え、4台?
少数精鋭が過ぎるだろ。
「皆さん、おはようございます。
本日から新しいクラスメイトを迎える事になりました。
カンザキくん、自己紹介していただけますか?」
「あ、はい…」
ハイル先生は全く変わらぬ調子で、入り口で固まっていた俺に入室を促した。
いそいそと教壇の上に立ち自己紹介を始めた。が、俺はそこでハッとする。
「カンザキです。えーっと…」
自分を説明出来る言葉が何一つ無いのだ。
魔力がありません…口外禁止、論外。
記憶がありません…重過ぎる、論外。
「…よろしくお願いします。」
考えても打開案が浮かばなかった。
仕方なしに、潔く名前を名乗るだけで自己紹介を終えた。
斬新過ぎる自己紹介に、数少ない生徒たちからも動揺した空気を感じる。
(あああ…やってしまった。
初日からこれはめちゃくちゃ印象悪いぞ。)
顔から火が出そうだ。
…出るわけないけど。
「ありがとうございます。
カンザキくんの席は…あの端の席です。」
さして気にしていない風な先生に指差された先を確認すると
(あ!ユージン!!)
微笑みながらこちらに緩く手を振るユージンを見つけた。
その隣の席は窓側の端で、空席だ。
恥ずかしさと嬉しさのあまり早足で近付いて行くと
「お疲れ。隣になれて良かったな。」
と小声で囁かれた。
ド級の爽やか光線に目眩がした。
(ユージンがこんなに頼もしい…)
「1時間目はウォームアップの体力測定です。各自着替えて20分後に校庭で集合して下さい。」
朝礼が終了し、ハイル先生が退室したと同時に俺の席に影が落ちる。
誰かが前に立っているらしい。
顔を上げると、ユルい笑みを浮かべる男と目があった。
「ね~キミ本当に木属性?オレそんな髪の色、見たことな~い!」
顔を覗き込まれ、じーっと目の色を観察される。
(近い近い近い…え、怖っ)
このユル男、顔はニマニマしているのに、目が全く笑っていないのだ。
能面かのような暗い目に覗き込まれ、身が竦んでしまった。
蛇に睨まれた何とやらの気持ちがよく分かる。
「いや…あの…」
「おい、グリム。急に覗き込んだらカンザキが驚くだろ。やめてやれ。」
「あれぇ~ユージン、この人の知り合い~?」
「まあな。」
「ふぅ~ん、まあいっか。
カンザキクン、また後でお話ししようねえ~」
グリムというらしいユル男がこれまたユルい動作で去っていった。
なんなんだ…
「驚かせてごめんな。あいつ、気になる事があると猪突猛進でさ。制御効かないんだわ。」
「あ、ああ…」
フォローしてくれたユージンが困り顔をしている。
おい、ユル男!!ユージンを困らせるんじゃない!!
せめてもう一人はまともであってくれと盗み見てみた。
が、秒で後悔した。
俺の身勝手な希望を打ち砕いたその人は、長髪だが片側を刈り上げ、首にはタトゥー、耳にはピアスをバチバチに開けている目つきの悪い男だった。
(ガラ悪っ!!)
人は見た目で判断しちゃいけないって言うけど、全身から近寄りがたいオーラが出ていて、とても話しかけられそうにない。
俺…ユージンが別の属性の子とご飯食べてる理由が分かったわ。
(これは友達増やす事自体がハードルとてつもなく高いな)
俺はそんな事を考えながら、
魔法で着替える面々を尻目に、先生から受け取った実技服に着替えるためにトイレへ向かった。
現実逃避した訳じゃないぞ。断じて。
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