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2章 新生活スタート
30 個性強めの部活動!
しおりを挟むかくして俺の魔法模擬試験対策月間が始まった。
魔獣学はセシルさん、薬学はバールさん、魔法史と国史はダリアさんという手厚過ぎるフォロー体制で試験に臨む。
(物凄く有難いんだけど、失敗は許されないという重圧を感じる…)
今日から各科目の教科書を持ち歩くことになったので、ちょっと鞄が重い。
ちなみに、今日はセシルさんの魔獣学だ。
魔獣の生態を主に学ぶらしい。
(…マーナと生活してるし、分からなかったら勘で答えられるかもな。)
朝から対策の事ばかり気なってしまい、授業中も上の空だ。
その時、突然隣から肩を突かれた。
「っ!」
「カンザキ、何かあったのか?なんか魂がここにないみたいだぞ。」
「…あ、すまん。なんか言ったか?」
「いや、今日昼飯一緒に行けないからさ。先に言っておこうと思っただけだ。」
「珍しいな。課題が残ってるのか?」
実はこのユージン、真面目そうに見えて意外と課題をやってこない癖がある。
昨日も国史の課題をやり忘れたと照れ笑いしていた。
爽やかに笑ったって課題は免除にならないぞ、ユージン。
そう言えば、初めて会った時も赤髪と黒髪に課題がどうとか言われてたな…
そう考えると、常習犯なのかもしれない。
「今日はやってきてる!…そうじゃなくて。部活があってさ」
「え、部活があるのか?!」
魔法の世界にも部活がちゃんとあるのか!
意外だったな…偏見だけど、そう言う世俗的なものは無いのかと思ってた。
「いつもじゃないんだけど、時々昼に練習あるんだよ。」
「へぇ、そうなのか。頑張れよ。」
聞くところによると、ユージンが所属しているのは、投擲部らしい。
槍を投げたり、球を投げたり…いわゆるスポーツ系の部活だ。
(そういえば、体力測定の投擲で、あのザックを抜いてぶっちぎりの1位だったような…)
さすが投擲部!
「(それにしても、部活かあ。前の世界では帰宅部だったしなあ…)俺も部活入ってみたいな。」
「まだ転入したばかりだから案内が来ていないと思うけど、近々勧誘があるんじゃないか?」
「勧誘?こんな時期にか?」
「実はウチの学校って部活動は有志メンバーだけで成り立ってるんだ。
別にやらなくても問題ないから、生徒の半分くらいしか所属してないんだよ。
だから入部時期とかも定まってない。」
「成る程、何時でも入れるし出れるって事か。」
「そう。大体の部活は常時部員募集してるんだ。」
「それは有難いな。…俺、体動かすのは得意じゃないんだよな。
運動を伴わない、平和的な部活とかないのか?」
「そうか、なら投擲部はダメだな…図書部、治癒部、魔獣部、魔王部なんてのもあるぞ。」
「待て待て待て…ま、魔王部?なんだそれ。」
「魔王部は魔王の熱狂的な信者が集まる部活だよぉ~!」
唐突に、横から黒い物がグイッと飛び出して視界を奪った。
俺と肩を組んだ状態で、耳元で喋っているのか、ダイレクトに声が聞こえてくる。
この人をイラッとさせる喋り方は…!
「…グリム君、何か用か?」
「僕の所属する部活の話が出たからねぇ~、解説してあげようと思って!」
「え、グリム君、魔王部なのか?」
「そうだよ~!新入部員だけどね~。」
グリムは今日もユルユルな笑みと反して、ハイライトの無い暗い瞳をしていた。
今にも包丁とか持ち出しそうで怖いんだよなコイツ…
この暗い目、ちょっとやそっとじゃ出来ない目だ。
瞳の色自体は露を帯びた新芽が放つ、美しく多彩な色を併せ持っている。
(良く見たらピンクっぽい色も見えるな。)
だが、内側にドス黒い物を持っているんだろう。
美しい虹彩が掻き消えてしまうような濁った暗さしか印象に残らない。
(ユージンも良くこんなのとタメで話せるな。)
「え~!そんなに熱烈に見られちゃ、恥ずかしい♡」
ハッ!ついうっかり見つめてしまった…
グリムは身体をくねりながら笑みを深めるが、やはり目は暗いままだった。
怖っ
「あ、すまない。魔王部とは何をするのか気になってな…」
「お!興味持ってくれたんだねぇ~!魔王部は、魔王降臨の儀の研究をしてるんだ~」
「(魔王降臨の儀…?)研究というと、具体的には?」
「降臨の儀に使う術式の解明と、魔道具の発明、あわよくば魔王降臨!なんてね。」
「おいグリム!」
「ふふ、まあお遊びだと思ってくれて良いよ~」
ユージンが焦った様に口を挟む。
そういえば、魔術史で習ったな。
何千年も前に、突如現れた魔王が悪逆非道の限りを尽くし、結果として同族の魔族によって封印されたって…
「危険じゃないのか?その研究。」
「だから言ったじゃ~ん!お遊びだってぇ。誰も魔王を復活させようだなんて思ってなかったよ。…オレ以外はね。」
「え?」
最後の方は耳元で喋られている俺でさえも聞こえない程の声量だった。
前の世界で良く見た漫画の展開だと、ここで聞こえなかったがために、後々大ごとになるパターンだろう。
しかし俺はバッチリ聞いていた。
聴力がとんでもなく良いんだよな俺。
面白展開を潰してしまってすまん。許せ。
(というかこいつ…魔王復活を狙って魔王部入ったの?更に怖いんだけど…)
魔王復活はこの世界ではあまり歓迎されない事なのではないだろうか。
ユージンの反応がそれを体現している。
魔術史の授業でも聞いた。
魔王がいた時代は、全世界を手中に収めんとしていたらしく、魔族の黒歴史的な扱いをされていた。
「ま、折角だし体験においでぇ~!キミ、珍し~い色を持ってるし…歓迎だよ♡」
「あ、か、考えておく。」
伝家の宝刀!"持ち帰って検討いたします"
グリムって目のハイライトが無いし、あまり近寄らないほうがいいだろう。
目のハイライトがないからな。(n回目)
ちょうどその時、話の切れたタイミングでハイル先生が教室に入ってきた。
「じゃ、良いお返事期待してるよ~♡」
そう言うと、グリムは軽快な足取りで自分の席に帰っていった。
(アイツ本当に魔王復活を目論んでるのか…?参ったな…平穏な暮らしの中にとんだ伏兵がいたもんだ。)
下手な事をされて俺の平和な暮らしが瓦解するのも嫌だし、一回様子見だけでもしてみる価値はありそうだ。
儀式について詳しそうな人に聞いてみるか。
*****
「じゃあまた午後の授業で!」
「ああ。」
さてと、昼はどうするかな…食堂行こうにも、一人だと席も探しづらい。
悩んでいると、控えめに肩が叩かれた。
誰だ?と思い振り返ると、そこには意外な人物が立っていた。
「…飯、食わないか?」
「(ザック!)」
もしかしなくても、これはランチに誘ってくれているのだろうか。
あのツンケンしたザックが…?
喧嘩っ早く、上級生まで相手取ると噂のザックが…?!
俺は近所にいつのまにか居着いた野良猫が擦り寄ってきたかの様な感動を覚えた。
キュンとするぞこれ…
俺が感動で黙りこくっていると、ザックは断られると思ったのか、段々と身体がソワソワしてきていた。
ちょっと面白くなって様子を見ていると、
青くなった顔で
「…い、嫌ならいい!!」
と踵を返してしまう。
ー あ!野良猫が逃げてしまう!
咄嗟に腕を掴み、俺よりも15センチは高いその身体をグイッと引き寄せた。
「ッ!」
「違うんだ、ザック君。嬉しくて停止してた。…一緒に行こう。」
「…分かったから、早く行くぞ。」
その言葉を聞き、逃げられないと悟った俺は掴んだ腕をそっと離した。
何故かザックは俺の腕を目で追っている。
「どうした?」
「あ、いや…なんでもない。お、俺のことはザックと呼んでくれ。」
「いいのか?じゃあ…行こうか、ザック。」
「ああ!」
ザックははにかみながら歩き始めた。
…ちょっとルンルンしてない?
やたらと嬉しそうだな。
耳や尻尾が生えていたら、ブンブン振られているそうな程だ。
「そういえばザック、食事って…」
「ああ、あの小屋に用意してある。」
「準備がいいな。もしかして、2人分あるのか?」
「ある。「もしかして、手作りか?!」…なんか文句あんのかよ。」
文句なんてとんでもない。久しぶりの自分以外の手料理だ。嬉しくない訳がない。
彼女もおらず、仕事と終電が恋人だった俺にとって、手料理はレストランで食べるコース料理よりも尊いものなんだよ!
伝わるかなこの情熱!!
「久しぶりなんだよ、手料理。凄く楽しみだ!」
思わず手を握り力説すると、ザックは勢いに押されながら、そうかよ、と呟いた。
…昨日のマーナみたいに顔真っ赤だけど大丈夫か?
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