残業リーマンの異世界休暇

はちのす

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2章 新生活スタート

29 魔法模擬試験

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学校生活二日目。

俺はまた壁にブチ当ることとなる。



「では、朝礼を始めます。皆さん、休み明けでまだ浮ついた気持ちでいるかもしれませんが、定期試験がありますので準備は怠らずに。」


(定期試験…?模試的なやつか?俺何の知識もないぞ…)


「この学校を卒業する際に受ける試験、国際魔法免許の試験の模擬試験です。
一生を大きく左右する試験ですから、模擬と言えど本番と変わらない気持ちで取り組んでください。」


なるほど…この試験、途中転入かつ持たざる者の俺でも受けられるのだろうか。

幾らセシルさんの温情で授業を受けさせて貰っているとはいえ、魔力がないんじゃ模試以前の問題だ。



「(俺には関係ないイベントだな…)」


「カンザキ、試験どうするんだ?
転入したばっかりだろ。」



早々に聞き流す態勢に入った俺を引き戻したのは、心配そうな表情をしたユージンだった。

本当何をする時も俺を気にかけてくれるな…有難いけど、これではユージン自身が気疲れしてしまわないだろうか。


「心配してくれてありがとう。
流石に転入したばかりだからパスさせて貰えるか交渉してみるよ。」


「だよな…あ、でも基礎学問は受けられるんじゃないか?」


「(き、基礎学問?)…どうだろうな。先生に相談してみるよ。」


また飛び出てきた新たなワードに俺の頭は混乱しきりだ。

口裏合わせのために、ダリア先生を捕まえるか。


今日の朝セシルさんに聞いたところによると、俺が記憶喪失だと伝えられているのは担任のハイル先生と、お世話係のダリアさんとバールさんの3人だ。

この3人には、魔力絶縁体ともいえるこの体質のことも伝えているらしい。


(そういえばハイル先生も治癒魔法が効かないって知ってたな。)


ただ、ハイル先生には俺が魔力0ということを伝えていない様だ。
事情があるそうだが、理由は聞くことができなかった。

でも、これで体力測定で遠慮が欠片も無かった理由がわかった。
…よかった、虐められていた訳じゃないんだね。

こう言う事情で、ハイル先生よりもダリアさん、バールさんを頼ることが多くなりそうだが…

バールさんとは研究室以外の接触を避けたい。何かありそうで怖い。


(…しっかし、ハイル先生に気付かれないよう授業をやり過ごす必要があるのはちょっと辛いな。)


普通事情通の人が担任をやるものと思ってたけど、実は生徒枠に空きがあるのが木属性だけらしかった。

火属性、闇属性、無属性に比べて木属性は魔力が多い傾向にあるようで、優秀な魔導士を数多く輩出している。

そのため、ただでさえ人数が少ない傾向にある剣技クラスの中でも、とりわけ少数なのが木属性剣技クラスってことだ。


(聞きたいことが色々あるな)


移動教室のため廊下に出ると、燃えるような赤髪を見つけた。

ユージンに断りを入れ、その背を追いかける。



「ダリア先生!」


「おお、カンザキ!授業はどうした?」


「次移動教室なんでが、急ぎで聞きたいことがあったんです。今いいですか?」


「ああ、次は授業もないからな!」


「ありがとうございます。
あの、魔法の試験があると聞いたのですが…」


「おー、模試のことか!そうか、カンザキには少し厳しいな。
あの模試は実技を伴うからな…」


「(…それは無理だな)…クラスメイトから基礎学問なら受けられるのではと助言を受けたんですが、記憶のない俺にはそれも難しいかなと」


「うーむ、そうかもな。
セシル校長は座学すらも免除にしてくれるだろうが、クラスメイトへの説明が難しいな。」


「そうなんです。記憶喪失だと知られて腫れ物扱いされたくなくて…」


「大丈夫だ!試験までは3週間ある。
基礎学問はそれまでに履修範囲を終わらせるんだ。その方が後々良いぞ!」


お、鬼ー!!!!
ここの世界の人達が数年かけてやった事を、3週間でやれと?!


(うう…俺も分かってたよ!それが一番ベストだって!)


クラスメイトとの知識のズレも、昨日でよくよく理解したし、それを埋められればとも思ってたけど…

3週間て…



「俺とバールが教えれば問題はない!

これから3週間、みっちり教えてやるから放課後を空けておくように!」



二人の先生との1on1での特別補習ってとこか…

うわぁああ、凄く有難いけどプレッシャーも半端ないぞコレ!


「よ、よろしくお願いします…」




******



「…と言うことがありまして。」


「そうだったんだね。
でも、ダリア先生とバール先生が教えてくれるなら大丈夫。
あの二人は教師陣の中でも優秀だし口が固いからね。」



俺は昼休みを活用してセシルさんに突撃訪問していた。
模試の実技免除のお願いと、放課後の予定が潰れてしまう事の報告のためだった。

急な訪問にも関わらず、セシルさんは学食のデリバリーを取ってくれると言う大盤振る舞いをしてくれた。

生まれ変わったらセシルさんの息子になりたい…



「実技に関しては魔法が使えない以上どうしようもないけど、座学は出来た方がいいからね。
もし私にも手伝える事があれば手を貸すからね。」


「ありがとうございます。」


実はこの空間に入る直前までは、この間の失態を思い出してしまい入室が戸惑われた。

だが、今ではセシルさんの温かな雰囲気に絆されむしろ心地よくなってしまっている。
良い人だなあ…

優雅に食事をしていたセシルさんが、ふと思いついたように目を合わせてきた。



「そうだカンザキくん、明日の放課後の予定はリスケジュールするかい?」


「え、良いんですか?」


「勿論。期限のある試験対策の方が急ぎだし…その代わり、明日は私との個人授業にしよう。」


「え?」


「基礎学問の試験科目は魔法史、国史、魔獣学、薬学だ。そのうち魔獣学は私が担当しよう。これでも、魔獣には詳しくてね!」


バチッとウインクをしたセシルさんの様子はどこか楽しげだ。



「校長という肩書である以上、子供たちに物を教える事から遠ざかっていたからね。
今回の件は天啓だよ…それに、私はそもそも物を教えるのが好きなんだ。」


(セシルさん…教育者の鑑だ!)


「…君の記憶も何かのきっかけで戻るかもしれない。その瞬間に立ち会いたいんだ。」



セシルさんは視線を離さず俺を見つめ続けた。

その眼差しに、優しいだけではない何かを感じたが、セシルさんに限ってそれはないなと思い直し勧めてくれた食事を食べ進めた。


(やっぱり肉料理美味いなあ…)


なんて、久し振りに喧騒と離れランチを楽しんでいた俺は、
セシルさんが獲物を見るかのような目でコチラを見ていたことに気付くことができなかった。

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