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2章 新生活スタート
58 先生
しおりを挟む(さてと、まずは誰に報告しようか。)
挨拶も兼ねて、職員室に行こう。
今回の魔法模擬試験の件でも、色んな先生にお世話になりっぱなしだったし。
広く長い廊下をゆったりと進む。
マーナと初めて会った時も思ったが、この学舎の作りは驚くほど技巧に富んでいる。
「マーナは剥製の様にただ鎮座するだけって言ってたな…確かにそれじゃあ退屈すぎて、学院に貢献しようとは思えないかもしれない」
その時に思いを馳せていると、溌剌とした声に呼び止められる。
「おっ、カンザキ!今帰りか?試験はどうだった?」
「あ、ダリア先生。色々協力していただいて、ありがとうございました。お陰様で、上々の出来でした」
「そうか!それは良かったなぁ、境遇は大変だったろうが結果が出るのは楽しいだろう」
「そうですね、大変勉強になりました…ちなみに、魔獣学では優秀者になったんですよ」
「は、優秀者?!俺も取ったことないのに?!」
「ダリアさん、それ言わなくてもいいんですよ…!」
「あぁ、すまんすまん。しっかし凄いな!よくやった!」
わしゃわしゃわしゃーッ!
感情が昂ったダリア先生により、思いっきり髪の毛を掻き回される。
ダリア先生は自分の事のように喜んでくれていることは伝わるのだが…
「あの!皆さんのおかげで…!!うわっ」
「はははっ!今日は良い日だな!」
「…はは、そうですね~」
髪の毛が鳥の巣状態になってしまい、遠い目をしてしまうのは許してほしい。
「来年も試験がんばろうな、次は国史でも優秀者になってくれよ!」
「あ、その事なんですが…」
かくかくしかじか、事の経緯を説明すると、大口を開けて驚いた。
「そ、そうか…だが、確かにこの期間過ごしていて記憶が戻る予兆もないのなら仕方ないな。」
「ここまで良くしていただいたのに、申し訳ないです」
「ああ良いんだよ、お前が思う道を行け。…しっかし、創世の使徒に気に入られて連れ立つなんて、学院が始まって初の事だ。きっと、良い旅になる!」
そう励まされ、ハイル先生にも挨拶をしてこいと送り出された。
(最後まで良い人だったな、ダリア先生。)
「ハイル先生!」
「あぁ、カンザキ君。この度はおめでとう…何かありましたか?髪の毛が散々乱れていますよ」
「あ、すみません!ダリア先生にやられました」
俺は直ぐにダリア先生を売った…いや、嘘偽りなく事実を述べた。
「ダリアさんが…?無意味にこんなことはしないでしょう、どうしたんですか」
「あぁ、それが…」
俺が事情を説明すると、ハイル先生は深く頷いた。
「記憶、戻ると良いですね。貴方の行先に幸多からんことを…あぁ、動かないで。髪、整えて差し上げますので」
ハイル先生の剣術で鍛え上げられた武骨な指が、俺の髪を往来する。
時折、耳にあたる指が擽ったくて、笑みが溢れそうになった。
数十秒すると髪を整え終わったようで、ポンポンと俺の頭を軽く撫で、半歩後ろに下がる。
「はい、終わりです。貴方の髪は素直で艶がありますね」
「え?」
「…いえ、何でもありません」
ハイル先生に髪のことで褒められるなんて。
いつも研ぎ澄まされた水の様な清らかさだから、そんな褒め方をするとは思っていなかった。
(この人、ロボットじゃないんだった。そうだよな…)
「ありがとうございます、ハイル先生の髪も美しいですね…芯の強さと柔軟さを感じます。先生みたいに」
「あ、ありがとうございます」
素直な褒め言葉に、ハイル先生は顔をそっと赤らめて俯いた。
最後になってようやく、こうして他愛もない話が出来たことが喜ばしい。
また、何かのキッカケで会えるだろうか。
「では、バール先生にも挨拶に行ってきますね。ありがとうございました!」
「ええ…また、旅からお戻りになったら私のクラスへ来てください」
心がほわっと温かくなり、足取りも軽くなりそうな物だが、次に訪れる場所を思って気分が重くなる。
…次は、バール先生だ。
「なんて言われるんだろうか…」
この後のことを想像して、軽く身震いをした。
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