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セラピー隊、出動!
しおりを挟む「死別…」
「この状況下では、むしろ生き残る人間の方が少ないが…スイッチはこの状況になる前に、その友人を亡くしている」
「え、ゾンビになったわけではないんだ」
「詳しくは俺も聞いていないが、違うようだ」
「そっか……」
やっぱりクリスもこれ以上は知らないようだ。
「よし、とにかく俺がしっかりして、危険な事をしなければ大丈夫ってことだな!」
とりあえず、で自分を納得させると、ちょうどいいタイミングでシノビさんやアニマさんが帰ってきた。
「おかえりなさいっ!!!」
*******
さて、遅くなってしまったけど…。
用意できた卵粥を持ち、スイッチの部屋に訪れる。
「あ、でも寝ちゃったかもしれないよな……」
今は夜の10時。朝が早いヒーロー達にとっては、既に寝てもいい時間帯だ。
「ど、どうしよ…起こしちゃうのも嫌だし、かと言って置いて帰るわけにも…」
右往左往していると、ドアが一人でに開く。
「……何してんの」
「あ、起こしちゃった?ごめん。ご飯作ってみたんだけど、食べられるかな」
「……入って」
スイッチは俺を招き入れると、デスクチェアに座らせた。
俺は手に持っていた卵粥をデスクに置かせてもらうと、スイッチに向き直る。
「卵粥?」
「そう。柔らかいものがいいかと思ってね」
スイッチはジッと卵粥を見ていたかと思うと、おもむろにデスクを探り始める。
「あった」
その手にはヒーロースーツと揃いの仮面が握られていた。
「これを着ければ食べれるようになる」
「あ、スイッチ…それはつけなくていい」
スイッチは俺の言葉を聞き、疑問符を3つほど頭に浮かべている。
「つければ食べれるし、積極的に行動できるかもしれない。
…でも、それ以上にスイッチの心を蝕んでしまうと思うんだ」
「…!」
「スイッチ…嫌なら嫌と叫んでもいいんだよ。そしたら俺はずっと背をさするし、ハグだって幾らでもする。
『無理に気持ちを抑えなくていい。君が悲しむ気持ちも、悔しく思う気持ちも、大切な感情だ』
…だよね?」
俺が助けられた時に言われた言葉、そっくりそのままスイッチに掛けてあげたい。
俺の言葉に覚えがあったのか、スイッチは目が落ちそうなほど開いていた。
そして、そのままその場でガクリと膝から崩れ落ちる。
俺は慌てて席を立ち、スイッチを全身で支えた。
「…こわい…俺は、怖いんだ」
「…何が?」
スイッチの様子は、朝同様焦燥しており、あまり話を長引かせても不安だ。
でも、そうやって逃げ続けるのが得策とも思えない。
…話したがる分は話させよう。
「俺の選択により、助かる命と助からない命がある…誰かを助けていながら、一方の人間を見捨てている事になるんだ」
「それは状況によって、」
「あの時もそうだった」
「あの時…?」
スイッチは何かが見えているのか、虚空に手を伸ばす。
「俺が…ぅ"っ…!」
「ごめん…スイッチ、無理しないで。今は忘れよう」
また心音が不規則になり、えずき始めたスイッチの背を摩りながら、さっきのクリスとの会話を思い出す。
『あの時』かぁ…きっとこれがトラウマの原因なんだろうな。
「しばらく、こうしていようか」
俺は抱き着きながら、スイッチの肩口に顔を埋める。
…柔軟剤の優しい香りがする。
俺が場にそぐわずほのぼのとしているのを感じたのか、スイッチも俺に縋り付く様に額を押し付けてくる。
段々と心音が規則的になり、硬直していた背は緩く力が抜けて行った。
「食べられそう……?」
擦り寄せられた頭がコクン、と頷くのを感じ取った俺は、少し身体を離しご飯を目の前まで引き寄せる。
「はい、まだ冷めてないと思うから食べてみて?」
「……」
だが、スイッチは全く動こうとしない。
それどころか、俺の顔をジッと見つめるだけだ。
(…え?何?どういうこと?)
「食べさせて」
「…ん??」
耳がおかしくなったのかと思い聞き返したが、スイッチは形のいい唇で縁取られた口をパカリと開けて何かを待つ体勢だ。
も、もしや…俺はスプーンを手に取り、粥を掬うとスイッチの口に押し入れた。
「あーん…?」
もぐ、もぐ…
「…うまい」
「あ、そ、そうですか…」
思わず敬語になってしまった。
今のスイッチは甘えたなのか…?
朝見たスイッチの様子と違いすぎて、温度差に火傷しそうだ。
俺は状況が飲み込めないまま、密着した体勢でスイッチに粥を食べさせ続けた。
(え、これ普通に食べられるんじゃ…あ、なんでもないです)
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