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はちのす

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ゾンビ×ゾンビ×ゾンビ!

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飛んで行ったのは確かスイッチのタオルだ。


「タオルまで飛んでったとなれば、スイッチのテンションがもっと落ちちゃうかもしれない…!」


あのテンションを更に降下させるようなことがあれば…


(うっ…共同生活に支障が出そうな予感さえする)


俺は覚悟を決めて、外界とアジトを隔てる高い塀を潜る。
潜るといっても、ドアがあるのだが……

目についた押しボタン式の鍵をアンロックする。

目の細かい鉄格子を開くと、そこは草木の茂るちょっとした雑木林の様だった。


「あ、そういえば、アジトがどこにあるのか聞いてなかったな…」


(こんな深い森みたいな林、近所にあったかなあ?)


俺はそこはかとない違和感を覚えながら、タオルが飛んでいった方向を探る。


「確かあっちに向かって消えてったよな」


探り始めたは良いものの、この木が生い茂っている環境じゃ、どうにもならないよな。

ちょっと冒険をしている気分になって、森を進んでみる。

少し歩くと、開けた場所に出た。


「え…田んぼ?!」


俺が住んでいた都内の住宅街とは異なり、田畑が見える。

生まれてこの方、東京を出たことが無い俺は物珍しさに夢中になる。

勿論人の歩く姿はなく、所々でゾンビと思しき小さな影がゆっくりと移動しているのみだ。


「てか、ここどこなんだよ……」


元いた土地に物凄く愛着があるか、と言われるとそうでも無いが、新しい土地に一人きりとなると少し心細い。


「も、戻ろうかな…」


少し怖くなってきた俺は、後ろを振り返った。

そこにいたのは……


「ぁがぁあ!!」

「あぎゃあ!!!!!ゾゾゾンビィ!!!」


明らかに肩が外れ腕がだらん、と垂れ下がってしまっているゾンビだった。


「なんでこいつコッソリ近寄ってきてんだよ!!!!」


俺はガタガタと震える足を叱咤して走り出した。


(まるで不意打ちを狙っているみたいだった)


もうちょっと気付くのが遅れたら…そう思うと、また足が震えそうになる。


「怖い、けど…俺の方が足が速いっ!!!」


道中、何回か"ぁががぁ"という不吉な呻き声がしたが、振り返らず走った。


「はぁ…っ!扉!!」


奴らと結構な距離を離し、扉に辿り着いた俺は思いっきりドアを引いた。


ガシャン!!!


「…へ?」


ガシャガシャ!!

思わず何度か引いてみたが、全く開く気配がない。


俺の頬に冷や汗がダラリと垂れる。


「もしや…オートロック…」


そうか、なんで気が付かなかったんだ…押しボタン式だなんて、オートロックに決まってるじゃないか…


「あ、終わった…」


俺は力なくその場にへたり込むと、脳も終わりを悟ったらしく走馬灯が見え始めた。


「うう…こんな終わり方、助けてくれたスイッチに申し訳ない…」


目に膜が張り、鼻水も出てきそうだ。

奴らがじわじわと近寄ってくる。
その背後には、綺麗な青空が広がっていた。


(いや、諦めちゃダメだ…っ!これでも、俺もビジランテのメンバーなんだ!)


俺は恐怖を振り絞り、塀沿いにどこか入れる場所はないかと走り出す。


「…っはあ、どこか…どこか入れる場所!!」


施設は思いの外広く、周りを駆けるだけでも相当時間が掛かっている。

必死過ぎて永遠と塀が続いているようにも感じるが、実際の所は4~5分くらいだろう。


息も絶え絶えに走っていると、ふと目の前に塀の色とは違う、大きな門が見えた。


「…っ、も、もしかして、正面?!」


俺は門の前まで辿り着くと、施設を見上げた。

全体的に白いアジトは、3階建てになっており、一つ一つの階がスペースのある作りになっていた。

きっと中の天井が高いのだろう。

こう見てみると、ちょっとした城のような風貌だ。

そういえば、1階しか入ったことがなかったなんて考え始めた頃、自分の置かれた状況を思い出した。


「やっべ、どこからか入らないと…っ!」


慌てて門を観察し始めた俺は、監視カメラがこちらを向いたことに気が付いた。

何処からともなく、機械音声が鳴り響く。



"サポートメンバー ユウト 承認"


ギイイィィッ…


「エ、エェェ?!?!」



門が…開いた。


逃げなければ!と、足だけは一人でに動いて門の中に駆け込む。

でも、まだ頭では理解しきれていない。


(助かった…のか?)


ってか、


「こ、ここもオートなのかよ…」


諦めなくてよかった…。


安心から、本日2度目の脱力感に苛まれたのは言うまでも無い。


******


結局、スイッチのタオルは見つけられなかった。


「はぁぁ…スイッチにどう説明しよう…」


(あれ、めちゃくちゃ大切なタオルだったらどうしよう…

"あれが無いと寝られない!"とか、"形見です!"とか)


うう、駄目だ…考えただけで胃が痛い。

でも何の報告もしないなんてもっと許されない。


俺はスイッチの部屋の前に立ち、
意を決してドアをノックした。



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