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1巻
1-2
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俺がプルプルと震えながら、今後の打開策について考えていると、リドさんが戻ってきた。
「ユウ、部屋はどうだ?」
「リドさん! 見てください、結構綺麗になりましたよ!」
「あぁ、これなら夕方までには落ち着けそうだな」
「こんな素敵な家まで貸していただいて、本当にありがとうございます」
礼儀正しく一礼すると、リドさんは少し不思議そうな表情をした後にニンマリと笑った。
「ま、その分働いてもらうぞ?」
「はい、もちろんです!」
「いい返事だ……ああ、そうだ。これをユウにやろうと思ってな」
そう言って、リドさんは質のよさそうな青いスカーフを俺の手に乗せた。艶やかな生地には少しの光沢があり、シルクのような手触りだ。
「え? こんな高価そうなもの、受け取れませんよ!」
「いや、必需品なんじゃないか? それ、頭に巻いてみろよ」
「頭に……?」
俺は言われた通り、頭を一周するように被ってみる。
「あ! 髪の毛の色が見えなくなった!」
なるほど、帽子の代わりってことか。スカーフを巻くなんて、元いた世界ではしたことがない。
なんだか、異世界っぽくてテンションが上がる。
「それは俺からの引越し祝いだ。似合うぞ」
リドさんはウキウキし始めた俺の頭を、布の上から軽くポンポンと叩いた。
「住む場所までいただいたのに、こんな素敵なものまで……」
「お前は遠慮し過ぎなところがあるな。いいんだ、俺の好きでやってるから」
優しげな目つきで頭を撫でられてしまえば、もう反論はできなかった。ここでもらわなきゃ、逆に失礼になるかもしれないと思い、できる限りの笑顔でお礼をする。
「ありがとうございます」
「おう、いいってことよ。あと、これも。俺のお下がりだけどな」
リドさんに手渡されたのは、薄く青色に染めてあるベストと綿のような素材の服だった。運動をするのに適しているのか、軽くて動きやすそうな素材だ。
「俺にはもう小さいし、もらい手がいなかったんだ。アンナの婆さんの服だけだと、洗い替えがないだろ?」
「な、何から何まで、ありがとうございます!」
俺は思わず、神様リド様村長様と拝んでしまった。感謝の気持ちが限界突破したが故の行動だったのだが、こちらには拝むと言う習慣がないのか、リドさんに不審がられてしまった。
「お前、所々で異世界感出てるから気を付けた方がいいぞ」
「あ、ハイ。すみません」
「明日は街に行くぞ。一着だけじゃ足りないだろうし、ユウの体にあった服を買おう」
「え⁉ 大丈夫ですよ。アンナさんからいただいた服もありますし、それにこっちの通貨のこと全然知らないので、買い物はちょっと……」
「何言ってんだ。俺が出すに決まってる」
俺は今度こそ目眩がした。
リドさんってば、人が好すぎるにもほどがある。アンナさんから聞いてはいたけど、助けてもなんのメリットもない異世界人を村に招き入れただけじゃなくて、こんなにも親切にしてくれるなんて。
「いや、そこまでしてもらうわけにはいきません!」
大慌てで提案を拒むと、リドさんは戸惑ったように小首を傾げ、ぽつりと言った。
「……俺と街に出かけるのは嫌か?」
「嫌じゃないです! ぜひ行かせてくださいっ!」
一瞬、獅子のようだと思っていたリドさんが拗ねた猫のように見えてしまった。
「じゃあ、とりあえずウチで食事にしよう。用意してある」
「は、はい」
リドさんは、きっとド級の世話好きなんだろう。
俺は一種の諦めを覚えて、リドさんの親切心に甘えさせてもらうことにした。
リドさんの家に戻ると、食卓には肉とスープ、パンが用意されていた。肉も食用として流通しているんだな、と一人安堵しながら食卓を眺める。リドさんが用意してくれたパンは、アンナさんのところとは違い、少し現代のパンに似ていて柔らかい。まさかとは思うが、各家庭でパンを手作りしているのだろうか。
「もしかして、この食事は珍しいか? 畑で採れた実を使った主食で、シバムと呼ばれている。火の魔力持ちが練ると出来上がりも見違えるぞ。俺は地の系統だから、まぁまぁの出来だな」
「や、やっぱり、リドさんが作ったんですか」
「ああ、自炊はこの村の基本だ」
「そうなんですか……」
まずいぞ、一人暮らしを初めて四年目になるけど、面倒臭いからとまともな自炊をしていなかった。今さら慣れない環境で飯を作るとなっても、それこそダークマターができてしまう気がする。
「俺、前途多難かもしれないです」
「? よく分からないが、暮らしで何か困ったら言ってくれ」
食事事情までリドさんにお世話になるわけにもいかないし、頑張って練習してみよう。俺は頭の中でパンを捏ねるイメージトレーニングをしてみる。
「そうだ、ユウ。色々と聞きたかったんだが、そもそもなんで異世界からの出自だということを隠しているんだ。王宮に召し抱えられた方が、生活は安定するだろう」
「それは……ここの王国の人って、異世界人を強力な勇者だと思って召喚してるんですよね?」
「ああ、そうだな」
「明らかに、俺そっちの要員じゃないんです」
「全面的に同意する」
リドさんは俺の腕をチラリと見て、ウンウンと頷く。それはそれでムッとするけど、事実だし仕方ない。
「なるほど、それで王宮には出向かないってことか」
「一生関わり合いになりたくないですね」
「そう邪険にしないでやってくれ。王も国を救おうと思っての方策だ。方針が他力本願なのは否めないけどな」
「本当に実力者が召喚できていればいいんですけど、召喚したのが普通の人間じゃ話になりませんって。あ、そういえば国内からも勇者は選ばれるんですよね?」
「一年に一回、成人した男の中で一番実力のある者が選ばれる仕組みになっている。アンナの婆さんの息子も、昨年の勇者になって討伐隊に参加した訳だ」
リドさんはそこで話を区切ると、少しだけ目を伏せた。
「……魔王がいるとされる城までの道は常に一定で、迷うことはない。生き残りは二ヶ月ほどで帰ってくるんだけどな」
「二ヶ月、ですか」
「しかも、魔王じゃなくても魔物は数えられないほど存在する。魔王に辿り着く前にクエストに失敗する例が後を絶たない。で、悲しい報せだが、今年の勇者はハズレだって話だ」
「ハズレっていうのは、弱いってことですか?」
「いや、力は強いが仲間との折り合いが悪いらしい。一人だけ強くたって、他との連携ができなきゃ話にならない。到底魔王とは戦えないだろう」
「あ~、耳が痛いです」
俺の発言を聞いて、リドさんは頭の上に疑問符を浮かべている。
そりゃなんの話だってなるよな。
今の話を聞いて、少しばかり自己投影してしまっただけだ。就職活動を早期に終わらせられなかったのも、きっとその会社に入って役に立つ働きができないと見透かされていたからだ。
実現したいことや、夢みたいなものもあったけど、現実味のない目標ばかり。そのくせ人に期待されるのが苦手で、いざという時に緊張で足が竦んでしまうこともあった。
思い出したくない記憶まで引きずられて出てきそうで、頭を振って思考を止める。
「ま、そんなこんなで、確かにユウは王宮に近寄らない方がいい」
リドさんはそんな俺の言動の意味を深く追及することはなく、話を切り替えてくれた。
「そういうことですね」
「残念だ。ここの国王や王子は見目がいいと国民にも人気なんだが」
「いや、そういうのは結構ですので」
先ほどまではショックで味を感じる余裕もなかったが、今は鮮烈に異国の風味を味わうことができる。温かな夕飯で胃を満たし、新たに始まる生活に想いを馳せた。
魔力なんてものがある世界だ。想像もしていない職業なんかもあるだろう。畑を耕したり、動物の世話をしたり、そういったスローライフもこの村で営まれている。
俺にとっては、実は渡りに船だった。現実味のない目標……それが、誰も自分のことを知らない土地で、今まで想像したこともないような暮らしをしてみることだった。
帰る方法なんて、どうせ簡単には見つからない。国からお触れが出るほどの召喚術っていうなら、元の世界へ帰る術も、王宮の魔術師って奴しか知らないかもしれない。王宮に出向くような、わざわざ命を危険に晒すような行為はしたくない。
だから、俺はここで適応して、村人Aとして暮らしていこう。
「リドさん、俺が力になれることはなんでもします! これから末永くよろしくお願いします」
俺は座ったままながらも、深々と頭を下げた。少ししても反応がないのでリドさんを盗み見ると、なんだか微妙な表情をしている。
「……なんか、契りを交わすみたいだな」
「へ? 契り?」
「いや、なんでもない」
リドさんはそう言うと、俺を見ることなくさっさと皿を片付け始めてしまう。
何かの儀式の話だろうか。リドさんの様子も気になったが、新しい生活が始まることへの期待感で胸が一杯な俺はすぐに忘れて、ホワホワと新生活を妄想するのだった。
風がそよぐ音と、草木の香り、柔らかな光が五感を刺激する。ここ最近、圧迫面接でこき下ろされる夢ばかりを見ていた俺にとって、最高な目覚ましだった。
「むにゃ、ふあぁ……あ、そっか。ここ、異世界なんだっけ」
窓の外に映る見慣れない風景を、寝ぼけた頭で処理する。朝がこんなに清々しいものだってこと、すっかり忘れてたな。
簡単に身支度を済ませて、昨日覚えたばかりの道を辿る。目的地に近付くと、家の前で佇む人影が見えた。
「おはようございます!」
「おう、おはよう。よく似合ってるよ」
リドさんは俺の姿を見て、すぐに声をかけてくれる。もらった青のスカーフと、リドさんのお下がりを着ていたのを確認したのだろう。
「ありがとうございます……でも、こんなにリドさんにもらった物ばっかり着てると、なんか照れますね」
少し長い裾を弄りながら照れ笑いすると、リドさんが硬直してしまった。例えるなら、何かとんでもなく恐ろしいもの見た、という表情をしている。
「え、リドさん? どうしました?」
「あ、いや、気にするな。考えごとをしていた」
「そうですか? 俺が何か変なことをしていたら教えてくださいね」
その後も挙動不審なリドさんに連れられて村を出ると、昨日歩いてきた草原がある方向とは逆に進み出した。
「あ、街はこっちなんですね」
「ああ、昨日は草原から来たんだよな。あっちの方向は魔物が出る領域に近いんだ。だから、人通りも少ない」
「なるほど、それで誰ともすれ違わなかったのか」
街への道に石畳などは敷かれておらず、ザクザク茂った草を踏むように進む。某ゲームならモンスターがランダムに飛び出してきそうな草むらだ。自分の想像にちょっと笑いながら、大きな背に着いて歩いた。
「この通りにも魔物は出たりするんですか?」
「魔物は出るが、低級ばかりだな。高位のいわゆる魔族は出てこない。こっちでは、貴族ではない戦闘向きな奴は大抵冒険者になるんだが、その駆け出しの冒険者たちでもタコ殴りすれば勝てるようなのばかりだ」
「タコ殴り……」
俺は思わず、この黒髪のせいで魔物と間違えられて、冒険者たちに殴られる想像をしてしまった。俺の敵は、魔物だけではなく人間も当てはまるのかもしれない。
若干気分が悪くなりながらも、しっかりとした足取りで進んでいると、ふと嗅ぎ慣れない匂いが風で運ばれてきた。
「あれ? この塩っぽい香り……もしかして」
「お、気が付いたか。鼻がいいな」
向かっていたのは小高い丘の上らしい。森の木々の隙間を縫って、空と光を反射して煌めく青色が見えてきた。
「うわぁ!」
思わず開けた場所まで走り、全景を視界に捉える。
そこには果てしなく広がる海が悠然と待ち構えていた。輝く水平線に様々な帆船が行き交い、海に接する土地には、石畳が敷かれて簡易的な停泊所になっているようだ。ここの林に繋がる道はメイン通りなのだろう、いくつものテントや小屋が並んでいる。街の全貌までは見ることができないが、
それでもこの街がかなり栄えていることは間違いないだろう。
「えっ、えええ⁉」
驚きと興奮に語彙と感情が迷子になり、とにかく感嘆の声を漏らすしかできなかった。
あの、いかにもRPGあるあるな、さいしょのむらっぽい村の近所がこんなに栄えてるだなんて、想像もしていなかったのだ。
「すごいだろ。この国一番の港街なんだ」
ニカッと笑っているリドさんは、俺の反応を楽しんでいるようだった。
「はいっ! 早く見て回りたいですっ!」
「はは、そう焦るなって。この街は今後も使うことになるから、じっくり見て回ろうか」
「え、村の皆さんはこの街に頻繁に来るんですか?」
「ああ、そりゃあ育てたモン売りに来ないと、金はできないからな」
「……あ! そうか、ここに市場的な機能もあるんですね」
「そういうことだ。よし、まずはユウの服を買って、それから市場を見に行こう」
「はい、ありがとうございます!」
すごい、すごい! これぞ異世界だ。
俺は興奮気味に街並みを目に焼き付ける。以前は海に縁遠い場所に住んでいたため、こんなに人が往来する、発展した港街を観光するのは稀だった。
いやいや、俺は観光しに来たんじゃない。これからの生活に役立つ情報を得る機会だ。気合を入れて観察しなきゃ。
にへっと緩んでいた表情を正し、リドさんと並び立ってメイン通りに続く道へと足を踏み入れた。
♦♢
俺とリドさんは生い茂った草を踏み越え、土で固められた道へと辿り着いた。
数メートルほど先に、メイン通りの起点が見える。踏み慣れた舗装された道の感触に、少し安堵した。
今まで歩いた草原とは打って変わって人工的な風景だな。俺は来た道を振り返り、ふと疑問に思う。
「それにしても、村の皆さんこの道を使うんですよね? やけに草が生えてませんでした?」
「何かおかしいことでもあるのか? 普通だろ」
「え、草って普通踏んだら枯れていきますよね」
「そんな軟弱なわけ……まさか、そっちではそうだったのか?」
後半は周りに気を遣ってか、リドさんは声を潜めて質問を投げかけてきた。
「そうでした。踏まれて枯れて、それが道になるんです。どうもこっちでは事情が違いそうですね」
「なるほど、色々違いはありそうだな。今度こっちの魔物や植物についても知る機会を作ってやるよ。生活に必要だろう?」
「わぁっリド様! ありがとうございます!」
俺がキラキラとした眼差しでまた拝み始めると、リドさんは困ったように苦笑した。
「それ、なんのポーズか分からないが、なんか恥ずかしいな……あと、様付けは性に合わないから止めてくれ」
リドさんは歩く速度を緩め、俺の目線まで屈む。
「ほら、あれが市場だ。見てみろ、毎日数え切れないほどの人間が出入りしてる」
リドさんが指を差した先、メイン通りの奥のテントが連なっている場所に、ドラマや映画で一度は見たような活気のある市場が広がっていた。樽の中に沢山の野菜が詰められていたり、捌きたての鶏らしき肉が軒先に吊り下げられたりしている。
港街らしく、市場の一番見やすいど真ん中のスペースでは魚類や塩が取り扱われ、またある一角では、お酒らしき樽も売られていた。
遠目に見るだけでも彩り豊かなその風景に、沸き起こる好奇心が抑えられない。
「す、すすすすごい……っ!」
あまりに夢のある光景を目の当たりにして、心の中の五歳児が大はしゃぎする。もちろん子供っぽく見られるのは嫌なので、表面的にはクールぶっているが。
「すっ、すごいですね。近くで見てみたいなー、なんて……」
「遠慮せずどうぞ、と言いたい所だが、先に目的を果たしてからにしろよ?」
あれが服屋だ、と指差されたのは入り口からほど近い場所にある店だった。
確かに、当初の目的をきれいさっぱり忘れ去っていた。表には出さないように適度に落ち込みつつ入店すると、これまた華やかな服が売られている。
てっきり普段着を買いに来たのだと思っていたから、入った瞬間の豪華絢爛な雰囲気にのまれてフリーズする。
「え、リドさん? これ、村では浮いちゃうんじゃ」
「ユウには深い色の服が似合うと思ったんだ。働く時の服は、また俺のお下がりでいいだろう」
「……え」
はにかんだ笑みを残すと、リドさんはテキパキと服を選び始める。深紅や深緑の色合いの服を二着持ってくると、俺に押し付けた。
「えっ、えっ……?」
「これは頭まで布がくる形状の服だ。試しに着てみろ」
「は、はいっ!」
命の恩人の命令には逆らえん! と、ササッと小部屋に移動し、深紅の服に着替えた。
着替えるには着替えたが、その姿をリドさんに見せるのはなんだか気恥ずかしくて、ひょっこりと小部屋のドアから顔を覗かせる。
すると、リドさんは上機嫌に俺の手をとり、ぐいっと試着室から引き摺り出してしまった。
「ほら、似合ってるだろ」
「なんか、俺のことなのに自信満々ですね……」
「俺の目に狂いはない。その自負はあるんだ」
リドさんは俺が脱ぐのも待たず、会計を始めてしまう。
「あ、あの。まだもう一着あるんですけど」
「そんなに似合うんだ、これきりしか見れないなんてもったいないだろ? それに、もう一着も似合うに決まってるさ」
リドさんは俺の持っている二着の会計を済ませると、外で待つ、と言って出ていってしまった。
「あ、嵐のような人だな」
俺は洋服屋の店主にニコニコと見守られながら、元の服に着替えて店を出た。店を出た瞬間に荷物を掠め取られ、俺は手ぶらになってしまう。
「よし、目的は果たしたから市場でも見るか」
「おおお……っ!」
俺が思わず拍手をすると、リドさんはまた困ったように笑った。もしかして、拍手も通じないのか。
俺はハッと気が付き、いそいそと手を引っ込める。
これじゃあ、自分から注目してくださいって言ってるようなものだよな。この世界にない習慣が出ないようにコントロールしないと。
「ユウ、次は市場での買い物なんだが、なにぶん人が多い。逸れないようにな」
リドさんの心配はもっともで、市場周辺はこの街でも一番混み合っていた。俺はリドさんの半歩後ろに下がると、袖をギュッと握る。
「ユウ?」
「逸れないように、対策しておきます!」
天才の発想だと言わんばかりのしたり顔で悪戯っぽく笑いかけると、リドさんは顔を手で覆い唸り始めた。
「はぁぁ……お前という奴は」
「え、え?」
突然の唸りに動揺しているうちに、リドさんは顰めっ面で人波の中をズンズンと市場へと歩いていってしまう。もちろん、俺の歩幅を考慮した速度で。
なんで不機嫌になったのかは分からないけど……歩調を合わせてくれるあたり、俺に怒っているわけではなさそうだ。
疑問に思いつつも、俺も早足でリドさんの後を追いかける。
市場には遠目から見た通り、とても華やかな食材たちが並んでいた。あっちもこっちも気になってしまい、側から見たら不審者扱いされそうなほど、キョロキョロしている自覚がある。
「ほら、前見て歩け」
「あ、ごめんなさい」
リドさんに言われた通りに、きちんと視線を前に向ける。
そうだよな、誰かにぶつかったりしたら大事だもんな。
リドさんは酒販店がお目当てだったのか、商品をザッと確認すると、すぐにお店の人と話し始める。店に着いたならもういいかと、きつく握っていたリドさんの裾を離した。握った圧で服に皺がついてしまっていた点については、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「このエールは何を原料にしているんだ? 薬草か?」
リドさんの手には水筒らしき物が握られており、それに入れるお酒を選んでいるらしい。樽ごと買う訳ではないようだ。
てっきり、樽ごとでしか売っていないのかと思っていた。まさに下戸の勘違いだな。
一人で赤面しながら視線を泳がせていると、小さな影を視界に捉えた。
痩せた小学生くらいの子供が、自分の背丈ほどありそうな大きな荷物を運んでいる。足元が見えていないのか、覚束ない足取りで、速度もまさに亀の歩みだ。
大丈夫かなと思って眺めていたら、突然、背後から勢いよく抜いていった大人の荷物が子供の荷物に当たり、バランスを崩してしまった。
――危ない、そう思った瞬間に、身体が勝手に動き出した。
俺はスカーフを押さえながら、人混みをすり抜け子供の体を支える。
「……っはぁ、間に合った」
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
「え? いや、なんで謝るの?」
子供は怯えるように俺から距離をとって、不安そうにこちらを窺っていた。
「それより怪我はなかった? どこも痛くない?」
「え、はい……大丈夫です」
「そう、それはよかった! でもこんな大荷物、一体どこまで運ぶ予定なの?」
「すぐそこなんです、そこの路地裏に」
子供が指さしたのは、今いる道の目と鼻の先だった。
「あ、あの距離なら……」
リドさんを見てみると、話が白熱しているらしく、こちらに気付いていない様子だった。
まぁこの距離だし、迷子になることはないだろう。すぐに戻れば、問題ないはず。
そう判断して、大きな荷物を持ち上げる。
「よし、俺が持つから、案内してくれない?」
「え、でも」
「いいから、いいから!」
俺は荷物を持つと、子供の先導に従って路地裏に入った。
「あ、ここで大丈夫です。後は他の子と協力して運びます。本当にありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げた子供の近くにワラワラと同世代の子が集まってくる。
「すごいっ! こんなにたくさん!」
「やったー!」
口々に喜びの声をあげた子供たちはあっという間に荷物を持っていった。
――たぶんだけど、彼らだけで生活しているのだろう。
声をかけた子供は、俺の方を何度か振り返りながら立ち去った。
「……何人もいるんなら、最初からみんなで行けばよかったのに」
素朴な疑問を感じていると、背後で砂利を踏みしめるような音が聞こえた。
「あれぇ? 何してるのかな、こんな路地裏に一人で。攫ってくれと言わんばかりじゃないか……ヒヒッ!」
背筋が冷えるような気味の悪い声が路地裏に木霊する。
バッと後ろを振り返ると、豪華な身なりをした五十代くらいの脂の乗った男がこちらを楽しそうに眺めていた。いや、眺めているという感じではなく、品定めされているような嫌な目線だ。
「どなたですか」
「おや、教養もあるようだね、身なりも綺麗だし。なんといっても、その艶のある華奢な身体! きっといい値がつくに違いない」
男が興奮したように唾を飛ばしながら叫んだ内容に、俺は身体が硬直してしまった。
「まさか……ひ、人攫いだったり」
そのまさかなのだろう。男は金属の手錠のような物を手に、俺にじりじりと近寄ってくる。
「こっちにおいで、もっと君を素敵にしてあげるよ、ヒヒッ!」
「い、嫌だ! 離れろ!」
俺は精一杯の力で男の手を弾くと、身を翻して逃げようとした……が、そこで気が付く。
この道の奥には、先ほど手助けしたあの子供たちがいる。ここで俺があの子たちの住処にコイツを連れていってしまうようなことがあれば、あの子たちは一網打尽、皆コイツの餌食になってしまうだろう。
俺は路地裏方向に逃げることもできず、立ち止まるしかなかった。
「おや? 逃げるのはもう辞めたんだね。それなら大人しく……」
「大人しく捕まるのは貴様だろう、奴隷商」
「……へ?」
男の言葉を両断するように、突然厳しい声が響いた。力強く、男を貫くような言葉だった。
俺も男も目を丸くして声の発生源を見てみると、メイン通り側から、一人の男性が毅然とした態度で歩み寄ってきていた。
「咎を受ける覚悟はできているな?」
リドさんの茶色っぽいオレンジの髪の毛とは違い、炎がごとく赤く燃え上がる髪を後ろに撫でつけた長身の男性は、鬼のような目付きで男の胸ぐらを掴んだ。
リドさんに負けないくらい洗練された立ち振る舞いと鍛え上げられた体格は、物語の騎士のような優美な服装と相まって、その場にいるだけで威圧されてしまうオーラを放っている。
「この国に、お前のような輩に立ち入りが許された場所は一つもない」
憎々しげにそう言い放った男性は、掴んでいた奴隷商の男を、玩具のように振りかぶって地面にz叩きつけた。
「え、ええええええ!?」
物理法則を完全に無視した攻撃方法に、俺は自分の目がおかしくなったのかと何度も目を擦ったが、この光景に変化はない。慣れた手つきで奴隷商を縛り上げると、男性はすぐに俺のそばに近寄って膝をついた。
近くで見ると、洗練されたその声に見合った精悍な顔立ちをしていた。眉は男らしくキリッとしているが、それに反して俺に注がれる眼差しは優しげだ。
「助けに入るのが遅れてすまない。奴隷商なんぞに触れられて……怖かっただろう?」
「あ、俺は大丈夫です。というか、むしろその後の衝撃がすごくて」
「後?」
あ、やばい。気が動転して、余計なことを言いそうになってしまった。
「あ、なんでもないんですっ! とにかく、ありがとうございました」
「こんな路地裏に一人で入っては危険だ。不甲斐ない話だが、路地裏にはああいう輩が出やすい。どうして入ったかは分からないが、今後は気を付けて……」
「お兄さん!」
呼びかけられた声に振り返ると、さっきの子供が、手にオレンジのような果物を持ってこちらに近付いてきていた。
「さっきはありがとうございました! お礼に、これを」
子供はそれだけ伝えると、俺を助けに入った男性をチラリと一瞥し、また走って立ち去っていった。
「……そうか、俺は君に礼を言わなければいけなかったようだ」
「へ? あ、いや、それで助けられてたら訳ないっていうか」
俺はそこまで喋ってハッとする。なんでこの強そうな人にお礼を言われてるんだ、俺。子供を手助けしたのは別に俺が勝手にやったことで、彼にはなんの関係もないはずなのに。
そこでようやく、俺は赤髪の男性の手慣れた拘束方法と、規格外の強さ、そして冷静になってみればおかしいほどの優美な服装を思い出す。
もしやこの人、国の警察的な役割の人だったりするのだろうか。その可能性に辿り着いた瞬間、俺はスカーフで顔の半分程度を隠した。
やばい、やばいやばい! 髪の色は見えなかっただろうか。
突然慌てだした俺の様子を見て、何を思ったのか、男性は極力優しく声をかけてくる。
「大丈夫だ。アレは私が責任を持って詰所に連行しよう。安心してくれ」
スカーフを掴んでいない方の俺の手を包むように、上から手を重ねられる。思わず、距離が近くなることの恐怖でビクッと体を揺らすと、何を勘違いしたのか彼が悲痛な顔をした。
「……すまない、配慮が足りなかった」
そう言って、重ねていた手をそっと離した。
助けてくれた男性に申し訳ないと思いつつも、俺としては奴隷商よりも身バレが一番怖いので、さっさとここから立ち去らせてほしいと切に願う。
「ユウ、部屋はどうだ?」
「リドさん! 見てください、結構綺麗になりましたよ!」
「あぁ、これなら夕方までには落ち着けそうだな」
「こんな素敵な家まで貸していただいて、本当にありがとうございます」
礼儀正しく一礼すると、リドさんは少し不思議そうな表情をした後にニンマリと笑った。
「ま、その分働いてもらうぞ?」
「はい、もちろんです!」
「いい返事だ……ああ、そうだ。これをユウにやろうと思ってな」
そう言って、リドさんは質のよさそうな青いスカーフを俺の手に乗せた。艶やかな生地には少しの光沢があり、シルクのような手触りだ。
「え? こんな高価そうなもの、受け取れませんよ!」
「いや、必需品なんじゃないか? それ、頭に巻いてみろよ」
「頭に……?」
俺は言われた通り、頭を一周するように被ってみる。
「あ! 髪の毛の色が見えなくなった!」
なるほど、帽子の代わりってことか。スカーフを巻くなんて、元いた世界ではしたことがない。
なんだか、異世界っぽくてテンションが上がる。
「それは俺からの引越し祝いだ。似合うぞ」
リドさんはウキウキし始めた俺の頭を、布の上から軽くポンポンと叩いた。
「住む場所までいただいたのに、こんな素敵なものまで……」
「お前は遠慮し過ぎなところがあるな。いいんだ、俺の好きでやってるから」
優しげな目つきで頭を撫でられてしまえば、もう反論はできなかった。ここでもらわなきゃ、逆に失礼になるかもしれないと思い、できる限りの笑顔でお礼をする。
「ありがとうございます」
「おう、いいってことよ。あと、これも。俺のお下がりだけどな」
リドさんに手渡されたのは、薄く青色に染めてあるベストと綿のような素材の服だった。運動をするのに適しているのか、軽くて動きやすそうな素材だ。
「俺にはもう小さいし、もらい手がいなかったんだ。アンナの婆さんの服だけだと、洗い替えがないだろ?」
「な、何から何まで、ありがとうございます!」
俺は思わず、神様リド様村長様と拝んでしまった。感謝の気持ちが限界突破したが故の行動だったのだが、こちらには拝むと言う習慣がないのか、リドさんに不審がられてしまった。
「お前、所々で異世界感出てるから気を付けた方がいいぞ」
「あ、ハイ。すみません」
「明日は街に行くぞ。一着だけじゃ足りないだろうし、ユウの体にあった服を買おう」
「え⁉ 大丈夫ですよ。アンナさんからいただいた服もありますし、それにこっちの通貨のこと全然知らないので、買い物はちょっと……」
「何言ってんだ。俺が出すに決まってる」
俺は今度こそ目眩がした。
リドさんってば、人が好すぎるにもほどがある。アンナさんから聞いてはいたけど、助けてもなんのメリットもない異世界人を村に招き入れただけじゃなくて、こんなにも親切にしてくれるなんて。
「いや、そこまでしてもらうわけにはいきません!」
大慌てで提案を拒むと、リドさんは戸惑ったように小首を傾げ、ぽつりと言った。
「……俺と街に出かけるのは嫌か?」
「嫌じゃないです! ぜひ行かせてくださいっ!」
一瞬、獅子のようだと思っていたリドさんが拗ねた猫のように見えてしまった。
「じゃあ、とりあえずウチで食事にしよう。用意してある」
「は、はい」
リドさんは、きっとド級の世話好きなんだろう。
俺は一種の諦めを覚えて、リドさんの親切心に甘えさせてもらうことにした。
リドさんの家に戻ると、食卓には肉とスープ、パンが用意されていた。肉も食用として流通しているんだな、と一人安堵しながら食卓を眺める。リドさんが用意してくれたパンは、アンナさんのところとは違い、少し現代のパンに似ていて柔らかい。まさかとは思うが、各家庭でパンを手作りしているのだろうか。
「もしかして、この食事は珍しいか? 畑で採れた実を使った主食で、シバムと呼ばれている。火の魔力持ちが練ると出来上がりも見違えるぞ。俺は地の系統だから、まぁまぁの出来だな」
「や、やっぱり、リドさんが作ったんですか」
「ああ、自炊はこの村の基本だ」
「そうなんですか……」
まずいぞ、一人暮らしを初めて四年目になるけど、面倒臭いからとまともな自炊をしていなかった。今さら慣れない環境で飯を作るとなっても、それこそダークマターができてしまう気がする。
「俺、前途多難かもしれないです」
「? よく分からないが、暮らしで何か困ったら言ってくれ」
食事事情までリドさんにお世話になるわけにもいかないし、頑張って練習してみよう。俺は頭の中でパンを捏ねるイメージトレーニングをしてみる。
「そうだ、ユウ。色々と聞きたかったんだが、そもそもなんで異世界からの出自だということを隠しているんだ。王宮に召し抱えられた方が、生活は安定するだろう」
「それは……ここの王国の人って、異世界人を強力な勇者だと思って召喚してるんですよね?」
「ああ、そうだな」
「明らかに、俺そっちの要員じゃないんです」
「全面的に同意する」
リドさんは俺の腕をチラリと見て、ウンウンと頷く。それはそれでムッとするけど、事実だし仕方ない。
「なるほど、それで王宮には出向かないってことか」
「一生関わり合いになりたくないですね」
「そう邪険にしないでやってくれ。王も国を救おうと思っての方策だ。方針が他力本願なのは否めないけどな」
「本当に実力者が召喚できていればいいんですけど、召喚したのが普通の人間じゃ話になりませんって。あ、そういえば国内からも勇者は選ばれるんですよね?」
「一年に一回、成人した男の中で一番実力のある者が選ばれる仕組みになっている。アンナの婆さんの息子も、昨年の勇者になって討伐隊に参加した訳だ」
リドさんはそこで話を区切ると、少しだけ目を伏せた。
「……魔王がいるとされる城までの道は常に一定で、迷うことはない。生き残りは二ヶ月ほどで帰ってくるんだけどな」
「二ヶ月、ですか」
「しかも、魔王じゃなくても魔物は数えられないほど存在する。魔王に辿り着く前にクエストに失敗する例が後を絶たない。で、悲しい報せだが、今年の勇者はハズレだって話だ」
「ハズレっていうのは、弱いってことですか?」
「いや、力は強いが仲間との折り合いが悪いらしい。一人だけ強くたって、他との連携ができなきゃ話にならない。到底魔王とは戦えないだろう」
「あ~、耳が痛いです」
俺の発言を聞いて、リドさんは頭の上に疑問符を浮かべている。
そりゃなんの話だってなるよな。
今の話を聞いて、少しばかり自己投影してしまっただけだ。就職活動を早期に終わらせられなかったのも、きっとその会社に入って役に立つ働きができないと見透かされていたからだ。
実現したいことや、夢みたいなものもあったけど、現実味のない目標ばかり。そのくせ人に期待されるのが苦手で、いざという時に緊張で足が竦んでしまうこともあった。
思い出したくない記憶まで引きずられて出てきそうで、頭を振って思考を止める。
「ま、そんなこんなで、確かにユウは王宮に近寄らない方がいい」
リドさんはそんな俺の言動の意味を深く追及することはなく、話を切り替えてくれた。
「そういうことですね」
「残念だ。ここの国王や王子は見目がいいと国民にも人気なんだが」
「いや、そういうのは結構ですので」
先ほどまではショックで味を感じる余裕もなかったが、今は鮮烈に異国の風味を味わうことができる。温かな夕飯で胃を満たし、新たに始まる生活に想いを馳せた。
魔力なんてものがある世界だ。想像もしていない職業なんかもあるだろう。畑を耕したり、動物の世話をしたり、そういったスローライフもこの村で営まれている。
俺にとっては、実は渡りに船だった。現実味のない目標……それが、誰も自分のことを知らない土地で、今まで想像したこともないような暮らしをしてみることだった。
帰る方法なんて、どうせ簡単には見つからない。国からお触れが出るほどの召喚術っていうなら、元の世界へ帰る術も、王宮の魔術師って奴しか知らないかもしれない。王宮に出向くような、わざわざ命を危険に晒すような行為はしたくない。
だから、俺はここで適応して、村人Aとして暮らしていこう。
「リドさん、俺が力になれることはなんでもします! これから末永くよろしくお願いします」
俺は座ったままながらも、深々と頭を下げた。少ししても反応がないのでリドさんを盗み見ると、なんだか微妙な表情をしている。
「……なんか、契りを交わすみたいだな」
「へ? 契り?」
「いや、なんでもない」
リドさんはそう言うと、俺を見ることなくさっさと皿を片付け始めてしまう。
何かの儀式の話だろうか。リドさんの様子も気になったが、新しい生活が始まることへの期待感で胸が一杯な俺はすぐに忘れて、ホワホワと新生活を妄想するのだった。
風がそよぐ音と、草木の香り、柔らかな光が五感を刺激する。ここ最近、圧迫面接でこき下ろされる夢ばかりを見ていた俺にとって、最高な目覚ましだった。
「むにゃ、ふあぁ……あ、そっか。ここ、異世界なんだっけ」
窓の外に映る見慣れない風景を、寝ぼけた頭で処理する。朝がこんなに清々しいものだってこと、すっかり忘れてたな。
簡単に身支度を済ませて、昨日覚えたばかりの道を辿る。目的地に近付くと、家の前で佇む人影が見えた。
「おはようございます!」
「おう、おはよう。よく似合ってるよ」
リドさんは俺の姿を見て、すぐに声をかけてくれる。もらった青のスカーフと、リドさんのお下がりを着ていたのを確認したのだろう。
「ありがとうございます……でも、こんなにリドさんにもらった物ばっかり着てると、なんか照れますね」
少し長い裾を弄りながら照れ笑いすると、リドさんが硬直してしまった。例えるなら、何かとんでもなく恐ろしいもの見た、という表情をしている。
「え、リドさん? どうしました?」
「あ、いや、気にするな。考えごとをしていた」
「そうですか? 俺が何か変なことをしていたら教えてくださいね」
その後も挙動不審なリドさんに連れられて村を出ると、昨日歩いてきた草原がある方向とは逆に進み出した。
「あ、街はこっちなんですね」
「ああ、昨日は草原から来たんだよな。あっちの方向は魔物が出る領域に近いんだ。だから、人通りも少ない」
「なるほど、それで誰ともすれ違わなかったのか」
街への道に石畳などは敷かれておらず、ザクザク茂った草を踏むように進む。某ゲームならモンスターがランダムに飛び出してきそうな草むらだ。自分の想像にちょっと笑いながら、大きな背に着いて歩いた。
「この通りにも魔物は出たりするんですか?」
「魔物は出るが、低級ばかりだな。高位のいわゆる魔族は出てこない。こっちでは、貴族ではない戦闘向きな奴は大抵冒険者になるんだが、その駆け出しの冒険者たちでもタコ殴りすれば勝てるようなのばかりだ」
「タコ殴り……」
俺は思わず、この黒髪のせいで魔物と間違えられて、冒険者たちに殴られる想像をしてしまった。俺の敵は、魔物だけではなく人間も当てはまるのかもしれない。
若干気分が悪くなりながらも、しっかりとした足取りで進んでいると、ふと嗅ぎ慣れない匂いが風で運ばれてきた。
「あれ? この塩っぽい香り……もしかして」
「お、気が付いたか。鼻がいいな」
向かっていたのは小高い丘の上らしい。森の木々の隙間を縫って、空と光を反射して煌めく青色が見えてきた。
「うわぁ!」
思わず開けた場所まで走り、全景を視界に捉える。
そこには果てしなく広がる海が悠然と待ち構えていた。輝く水平線に様々な帆船が行き交い、海に接する土地には、石畳が敷かれて簡易的な停泊所になっているようだ。ここの林に繋がる道はメイン通りなのだろう、いくつものテントや小屋が並んでいる。街の全貌までは見ることができないが、
それでもこの街がかなり栄えていることは間違いないだろう。
「えっ、えええ⁉」
驚きと興奮に語彙と感情が迷子になり、とにかく感嘆の声を漏らすしかできなかった。
あの、いかにもRPGあるあるな、さいしょのむらっぽい村の近所がこんなに栄えてるだなんて、想像もしていなかったのだ。
「すごいだろ。この国一番の港街なんだ」
ニカッと笑っているリドさんは、俺の反応を楽しんでいるようだった。
「はいっ! 早く見て回りたいですっ!」
「はは、そう焦るなって。この街は今後も使うことになるから、じっくり見て回ろうか」
「え、村の皆さんはこの街に頻繁に来るんですか?」
「ああ、そりゃあ育てたモン売りに来ないと、金はできないからな」
「……あ! そうか、ここに市場的な機能もあるんですね」
「そういうことだ。よし、まずはユウの服を買って、それから市場を見に行こう」
「はい、ありがとうございます!」
すごい、すごい! これぞ異世界だ。
俺は興奮気味に街並みを目に焼き付ける。以前は海に縁遠い場所に住んでいたため、こんなに人が往来する、発展した港街を観光するのは稀だった。
いやいや、俺は観光しに来たんじゃない。これからの生活に役立つ情報を得る機会だ。気合を入れて観察しなきゃ。
にへっと緩んでいた表情を正し、リドさんと並び立ってメイン通りに続く道へと足を踏み入れた。
♦♢
俺とリドさんは生い茂った草を踏み越え、土で固められた道へと辿り着いた。
数メートルほど先に、メイン通りの起点が見える。踏み慣れた舗装された道の感触に、少し安堵した。
今まで歩いた草原とは打って変わって人工的な風景だな。俺は来た道を振り返り、ふと疑問に思う。
「それにしても、村の皆さんこの道を使うんですよね? やけに草が生えてませんでした?」
「何かおかしいことでもあるのか? 普通だろ」
「え、草って普通踏んだら枯れていきますよね」
「そんな軟弱なわけ……まさか、そっちではそうだったのか?」
後半は周りに気を遣ってか、リドさんは声を潜めて質問を投げかけてきた。
「そうでした。踏まれて枯れて、それが道になるんです。どうもこっちでは事情が違いそうですね」
「なるほど、色々違いはありそうだな。今度こっちの魔物や植物についても知る機会を作ってやるよ。生活に必要だろう?」
「わぁっリド様! ありがとうございます!」
俺がキラキラとした眼差しでまた拝み始めると、リドさんは困ったように苦笑した。
「それ、なんのポーズか分からないが、なんか恥ずかしいな……あと、様付けは性に合わないから止めてくれ」
リドさんは歩く速度を緩め、俺の目線まで屈む。
「ほら、あれが市場だ。見てみろ、毎日数え切れないほどの人間が出入りしてる」
リドさんが指を差した先、メイン通りの奥のテントが連なっている場所に、ドラマや映画で一度は見たような活気のある市場が広がっていた。樽の中に沢山の野菜が詰められていたり、捌きたての鶏らしき肉が軒先に吊り下げられたりしている。
港街らしく、市場の一番見やすいど真ん中のスペースでは魚類や塩が取り扱われ、またある一角では、お酒らしき樽も売られていた。
遠目に見るだけでも彩り豊かなその風景に、沸き起こる好奇心が抑えられない。
「す、すすすすごい……っ!」
あまりに夢のある光景を目の当たりにして、心の中の五歳児が大はしゃぎする。もちろん子供っぽく見られるのは嫌なので、表面的にはクールぶっているが。
「すっ、すごいですね。近くで見てみたいなー、なんて……」
「遠慮せずどうぞ、と言いたい所だが、先に目的を果たしてからにしろよ?」
あれが服屋だ、と指差されたのは入り口からほど近い場所にある店だった。
確かに、当初の目的をきれいさっぱり忘れ去っていた。表には出さないように適度に落ち込みつつ入店すると、これまた華やかな服が売られている。
てっきり普段着を買いに来たのだと思っていたから、入った瞬間の豪華絢爛な雰囲気にのまれてフリーズする。
「え、リドさん? これ、村では浮いちゃうんじゃ」
「ユウには深い色の服が似合うと思ったんだ。働く時の服は、また俺のお下がりでいいだろう」
「……え」
はにかんだ笑みを残すと、リドさんはテキパキと服を選び始める。深紅や深緑の色合いの服を二着持ってくると、俺に押し付けた。
「えっ、えっ……?」
「これは頭まで布がくる形状の服だ。試しに着てみろ」
「は、はいっ!」
命の恩人の命令には逆らえん! と、ササッと小部屋に移動し、深紅の服に着替えた。
着替えるには着替えたが、その姿をリドさんに見せるのはなんだか気恥ずかしくて、ひょっこりと小部屋のドアから顔を覗かせる。
すると、リドさんは上機嫌に俺の手をとり、ぐいっと試着室から引き摺り出してしまった。
「ほら、似合ってるだろ」
「なんか、俺のことなのに自信満々ですね……」
「俺の目に狂いはない。その自負はあるんだ」
リドさんは俺が脱ぐのも待たず、会計を始めてしまう。
「あ、あの。まだもう一着あるんですけど」
「そんなに似合うんだ、これきりしか見れないなんてもったいないだろ? それに、もう一着も似合うに決まってるさ」
リドさんは俺の持っている二着の会計を済ませると、外で待つ、と言って出ていってしまった。
「あ、嵐のような人だな」
俺は洋服屋の店主にニコニコと見守られながら、元の服に着替えて店を出た。店を出た瞬間に荷物を掠め取られ、俺は手ぶらになってしまう。
「よし、目的は果たしたから市場でも見るか」
「おおお……っ!」
俺が思わず拍手をすると、リドさんはまた困ったように笑った。もしかして、拍手も通じないのか。
俺はハッと気が付き、いそいそと手を引っ込める。
これじゃあ、自分から注目してくださいって言ってるようなものだよな。この世界にない習慣が出ないようにコントロールしないと。
「ユウ、次は市場での買い物なんだが、なにぶん人が多い。逸れないようにな」
リドさんの心配はもっともで、市場周辺はこの街でも一番混み合っていた。俺はリドさんの半歩後ろに下がると、袖をギュッと握る。
「ユウ?」
「逸れないように、対策しておきます!」
天才の発想だと言わんばかりのしたり顔で悪戯っぽく笑いかけると、リドさんは顔を手で覆い唸り始めた。
「はぁぁ……お前という奴は」
「え、え?」
突然の唸りに動揺しているうちに、リドさんは顰めっ面で人波の中をズンズンと市場へと歩いていってしまう。もちろん、俺の歩幅を考慮した速度で。
なんで不機嫌になったのかは分からないけど……歩調を合わせてくれるあたり、俺に怒っているわけではなさそうだ。
疑問に思いつつも、俺も早足でリドさんの後を追いかける。
市場には遠目から見た通り、とても華やかな食材たちが並んでいた。あっちもこっちも気になってしまい、側から見たら不審者扱いされそうなほど、キョロキョロしている自覚がある。
「ほら、前見て歩け」
「あ、ごめんなさい」
リドさんに言われた通りに、きちんと視線を前に向ける。
そうだよな、誰かにぶつかったりしたら大事だもんな。
リドさんは酒販店がお目当てだったのか、商品をザッと確認すると、すぐにお店の人と話し始める。店に着いたならもういいかと、きつく握っていたリドさんの裾を離した。握った圧で服に皺がついてしまっていた点については、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「このエールは何を原料にしているんだ? 薬草か?」
リドさんの手には水筒らしき物が握られており、それに入れるお酒を選んでいるらしい。樽ごと買う訳ではないようだ。
てっきり、樽ごとでしか売っていないのかと思っていた。まさに下戸の勘違いだな。
一人で赤面しながら視線を泳がせていると、小さな影を視界に捉えた。
痩せた小学生くらいの子供が、自分の背丈ほどありそうな大きな荷物を運んでいる。足元が見えていないのか、覚束ない足取りで、速度もまさに亀の歩みだ。
大丈夫かなと思って眺めていたら、突然、背後から勢いよく抜いていった大人の荷物が子供の荷物に当たり、バランスを崩してしまった。
――危ない、そう思った瞬間に、身体が勝手に動き出した。
俺はスカーフを押さえながら、人混みをすり抜け子供の体を支える。
「……っはぁ、間に合った」
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
「え? いや、なんで謝るの?」
子供は怯えるように俺から距離をとって、不安そうにこちらを窺っていた。
「それより怪我はなかった? どこも痛くない?」
「え、はい……大丈夫です」
「そう、それはよかった! でもこんな大荷物、一体どこまで運ぶ予定なの?」
「すぐそこなんです、そこの路地裏に」
子供が指さしたのは、今いる道の目と鼻の先だった。
「あ、あの距離なら……」
リドさんを見てみると、話が白熱しているらしく、こちらに気付いていない様子だった。
まぁこの距離だし、迷子になることはないだろう。すぐに戻れば、問題ないはず。
そう判断して、大きな荷物を持ち上げる。
「よし、俺が持つから、案内してくれない?」
「え、でも」
「いいから、いいから!」
俺は荷物を持つと、子供の先導に従って路地裏に入った。
「あ、ここで大丈夫です。後は他の子と協力して運びます。本当にありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げた子供の近くにワラワラと同世代の子が集まってくる。
「すごいっ! こんなにたくさん!」
「やったー!」
口々に喜びの声をあげた子供たちはあっという間に荷物を持っていった。
――たぶんだけど、彼らだけで生活しているのだろう。
声をかけた子供は、俺の方を何度か振り返りながら立ち去った。
「……何人もいるんなら、最初からみんなで行けばよかったのに」
素朴な疑問を感じていると、背後で砂利を踏みしめるような音が聞こえた。
「あれぇ? 何してるのかな、こんな路地裏に一人で。攫ってくれと言わんばかりじゃないか……ヒヒッ!」
背筋が冷えるような気味の悪い声が路地裏に木霊する。
バッと後ろを振り返ると、豪華な身なりをした五十代くらいの脂の乗った男がこちらを楽しそうに眺めていた。いや、眺めているという感じではなく、品定めされているような嫌な目線だ。
「どなたですか」
「おや、教養もあるようだね、身なりも綺麗だし。なんといっても、その艶のある華奢な身体! きっといい値がつくに違いない」
男が興奮したように唾を飛ばしながら叫んだ内容に、俺は身体が硬直してしまった。
「まさか……ひ、人攫いだったり」
そのまさかなのだろう。男は金属の手錠のような物を手に、俺にじりじりと近寄ってくる。
「こっちにおいで、もっと君を素敵にしてあげるよ、ヒヒッ!」
「い、嫌だ! 離れろ!」
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「あ、俺は大丈夫です。というか、むしろその後の衝撃がすごくて」
「後?」
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「あ、なんでもないんですっ! とにかく、ありがとうございました」
「こんな路地裏に一人で入っては危険だ。不甲斐ない話だが、路地裏にはああいう輩が出やすい。どうして入ったかは分からないが、今後は気を付けて……」
「お兄さん!」
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「……すまない、配慮が足りなかった」
そう言って、重ねていた手をそっと離した。
助けてくれた男性に申し訳ないと思いつつも、俺としては奴隷商よりも身バレが一番怖いので、さっさとここから立ち去らせてほしいと切に願う。
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