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螺旋の果て(上)
第2章 【再生】
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桜か…
時期が悪いよ
こんな料亭、初めてじゃないか。
時間は少し過ぎていた。
愛想笑いで過ごす二時間が始まるはずだった。
名字を仲居に伝えると部屋に導かれた。
???
部屋には女が一人で待っていた。
『あの、風間です。
お一人ですか?ご家族の方は…。』
コチラは男1人。
大抵、こういった場合、両親とか片親、紹介した第3者が一緒にいるのが定石。
オレの問いかけに、立ち上がり、女は障子の袖に三つ指を付いて応えた。
「私一人です。家族は…来ていませんので…。」
‼オヤジのヤロー‼
‼やりやがった‼
料亭の小部屋に見合いの男と女。
見合いが終わったら、はいサヨナラってワケにはいかないシチュエーション。
実に困った展開。
・・・・・・・・・・・・・・・・
待っていた女。
白いブラウスとタイトなベージュのスカート。
背丈は低い…
髪は長くストレート…
痩せたイメージは、細いウエストのせいか…
不謹慎だが、バストのラインが美しい…
『困りました…私は、結婚の意志はないんです。』
ぶっきら棒かとも思ったが、オレは切り出した。
一人で見合い相手の男を待つ女に結婚の意志がないとは思わなかった。
面倒なやりとりは時間の無駄である。
…と、考えた。
ところが…
驚かされたのは、オレのほうだった。
「はい。私も…です。」
『え?じゃぁ…なぜ…』
覚えているあの日の…裕希…
お前のその眼…アイツと同じ空気…
お前…綺麗だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
いちいち頭にくる女だ。
生意気そうに吊り上がった猫のような大きな眼で、上目遣いにオレを視ては伏せる仕草。
首筋から姿勢の良い正座が醸し出す身体のライン。
愛想笑いに見え隠れする、何か深いものを隠している心。
見合いなどする気もなく向かい合った男女に会話などないはず。
ところが、不思議な空気が流れていることに気付いた。
お互いが、お互いを探りあっている…
探り合いが会話を産み出し、ぎこちない会話は途切れない。
まったく、頭にくる女だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
母親がいること…
オヤジの関連会社の秘書らしいこと…
見合いは初めてであること…
結婚の意志はないこと…
今日は、予定はないこと…
趣味は映画とドライブと…ガンダム?
拭えない疑問。
これだけの美貌と器量ながら、なぜ、お前はここにいる?
・・・・・・・・・・・・・・・・
料亭を出た。
『さて、お送りしますよ。
ご自宅まで。』
助手席のドアを開けて、女を促した。
車高の低いクルマへの乗り込み方でわかる。
…ほう、この女、クルマがわかるようだな…
裕希という女に妙な興味を覚えたのは、これが初めてではなかった。
驚いた。
裕希は、新幹線でわざわざ来ていたのだ。
たかが見合いという行事の、たかが1時間程度で、これほどまでにオレを裏切りやがった。
…この女…
『すみません。ちょっと電話をしてきます。』
明日は、日曜日ではあったが、接待の予定があった。
断りの電話。
…どうせ、もう逢わない女ではあるが、時間を裂く価値はある。…
なぜだろう。
そう決めた。
クルマに戻ると裕希はいなかった。
…まったく、あの女‼…
運がいいのか悪いのか、離れた建物と建物の合間から裕希を見つけた。
早足で逃げるわけでもなく、隠れるわけでもなく、駅の方向へ…どちらかといえばフラフラと歩いていく。
小走りに追い掛け、肩に手を掛けた。
『送ると言いましたよ。裕希さん。』
「2時間かけて?」
黙っていなくなったことに悪ぶりもせず、肩に置いたオレの手に裕希は自分の手を重ね、微笑んで答えた。
『行くぞ。』
オレは強い口調で裕希をニラみ、手を握り返してクルマに引っ張っていった。
違和感を感じた。
行くぞと強い口調で言った、その瞬間に見せた裕希の微笑み。
どうだろうか。
今日、逢ったばかりの男に手を捕まれて連れて行かれたとしたら…
普通は…「離して下さい。」
ではないだろうか。
怒鳴られた時の、ホッとしたような微笑み…
逆らうでもなく着いてくる…
クルマの中で、裕希は随分とお喋りになった。
一番盛り上がった話題はガンダムだったけど、それは…それなりに…
時期が悪いよ
こんな料亭、初めてじゃないか。
時間は少し過ぎていた。
愛想笑いで過ごす二時間が始まるはずだった。
名字を仲居に伝えると部屋に導かれた。
???
部屋には女が一人で待っていた。
『あの、風間です。
お一人ですか?ご家族の方は…。』
コチラは男1人。
大抵、こういった場合、両親とか片親、紹介した第3者が一緒にいるのが定石。
オレの問いかけに、立ち上がり、女は障子の袖に三つ指を付いて応えた。
「私一人です。家族は…来ていませんので…。」
‼オヤジのヤロー‼
‼やりやがった‼
料亭の小部屋に見合いの男と女。
見合いが終わったら、はいサヨナラってワケにはいかないシチュエーション。
実に困った展開。
・・・・・・・・・・・・・・・・
待っていた女。
白いブラウスとタイトなベージュのスカート。
背丈は低い…
髪は長くストレート…
痩せたイメージは、細いウエストのせいか…
不謹慎だが、バストのラインが美しい…
『困りました…私は、結婚の意志はないんです。』
ぶっきら棒かとも思ったが、オレは切り出した。
一人で見合い相手の男を待つ女に結婚の意志がないとは思わなかった。
面倒なやりとりは時間の無駄である。
…と、考えた。
ところが…
驚かされたのは、オレのほうだった。
「はい。私も…です。」
『え?じゃぁ…なぜ…』
覚えているあの日の…裕希…
お前のその眼…アイツと同じ空気…
お前…綺麗だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
いちいち頭にくる女だ。
生意気そうに吊り上がった猫のような大きな眼で、上目遣いにオレを視ては伏せる仕草。
首筋から姿勢の良い正座が醸し出す身体のライン。
愛想笑いに見え隠れする、何か深いものを隠している心。
見合いなどする気もなく向かい合った男女に会話などないはず。
ところが、不思議な空気が流れていることに気付いた。
お互いが、お互いを探りあっている…
探り合いが会話を産み出し、ぎこちない会話は途切れない。
まったく、頭にくる女だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
母親がいること…
オヤジの関連会社の秘書らしいこと…
見合いは初めてであること…
結婚の意志はないこと…
今日は、予定はないこと…
趣味は映画とドライブと…ガンダム?
拭えない疑問。
これだけの美貌と器量ながら、なぜ、お前はここにいる?
・・・・・・・・・・・・・・・・
料亭を出た。
『さて、お送りしますよ。
ご自宅まで。』
助手席のドアを開けて、女を促した。
車高の低いクルマへの乗り込み方でわかる。
…ほう、この女、クルマがわかるようだな…
裕希という女に妙な興味を覚えたのは、これが初めてではなかった。
驚いた。
裕希は、新幹線でわざわざ来ていたのだ。
たかが見合いという行事の、たかが1時間程度で、これほどまでにオレを裏切りやがった。
…この女…
『すみません。ちょっと電話をしてきます。』
明日は、日曜日ではあったが、接待の予定があった。
断りの電話。
…どうせ、もう逢わない女ではあるが、時間を裂く価値はある。…
なぜだろう。
そう決めた。
クルマに戻ると裕希はいなかった。
…まったく、あの女‼…
運がいいのか悪いのか、離れた建物と建物の合間から裕希を見つけた。
早足で逃げるわけでもなく、隠れるわけでもなく、駅の方向へ…どちらかといえばフラフラと歩いていく。
小走りに追い掛け、肩に手を掛けた。
『送ると言いましたよ。裕希さん。』
「2時間かけて?」
黙っていなくなったことに悪ぶりもせず、肩に置いたオレの手に裕希は自分の手を重ね、微笑んで答えた。
『行くぞ。』
オレは強い口調で裕希をニラみ、手を握り返してクルマに引っ張っていった。
違和感を感じた。
行くぞと強い口調で言った、その瞬間に見せた裕希の微笑み。
どうだろうか。
今日、逢ったばかりの男に手を捕まれて連れて行かれたとしたら…
普通は…「離して下さい。」
ではないだろうか。
怒鳴られた時の、ホッとしたような微笑み…
逆らうでもなく着いてくる…
クルマの中で、裕希は随分とお喋りになった。
一番盛り上がった話題はガンダムだったけど、それは…それなりに…
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