69 / 80
第68話 不気味な女、菜松照代
しおりを挟む
キラリは一人ポツンと部屋に取り残され、これから何が起こるのかという不安に駆られキョロキョロと周りを見回す。
こんな何も無い所でいったい何をするんだろ……
キラリは落ち着かず立ち上がって壁の鏡を覗き込む。
社長夫人かぁ……こんなバカな私が本当になれるの?
キラリは鏡に映る自分に問いかけてみる。
その時ドアがガチャッという音を立てて開いた。先程の若い女性は部屋に入りドアを閉めて
菜松「お待たせいたしました。これから少しの間キラリさんをお世話させて頂きます、菜松照代(なまつてるよ)です。宜しくお願い致します」
そう言って菜松は深々と頭を下げる。
それにつられてキラリもペコッと頭を下げた。
そしてカツカツとヒールの音を立てながら座っているキラリに対面して立った。
キラリの印象としてはこの菜松という女性、かなり垢抜けた都会育ちの教養溢れる女性だと感じていた。
顔立ちは華やかさとは真逆の目は細く切れ長で、鼻筋が通っていて唇も薄い。化粧はその薄い顔立ちを軽く引き立たせる程度の控えめで、情熱とはかけ離れた冷たい印象を受ける。
自分とは全く住む世界が違い、とても仲良く出来そうに無い予感がする。
キラリ「よ……宜しくお願いします……」
キラリはこの女性に引け目を感じてこの場から逃げ出してしまいたい衝動に駆られた。
菜松はキラリの目の前に立ち淡々とした口調で
菜松「それでは早速ですが、カリキュラムを説明させて頂きますね」
キラリ「か……かり……?」
菜松「簡単に言うとこれからどんなお勉強をするか、その予定のことです」
キラリ「あっ……なるほど……」
お勉強……それって絶対学校の勉強とは違って硬っ苦しいやつだよな……何かで見たことあるような……歩き方とか言葉遣いとか色々うるさく言われて……ちょっとおかしなことやったらバシィ~とか叩かれるやつ……
菜松「先ずは初歩的な立ち姿、歩き方、そしてお辞儀等をしっかりと覚えて頂きます。その過程が修了しましたら次は話し方、言葉遣い等を覚えて頂きます。この過程が修了しましたら次は夫人としての心得や、お客様に対しての対応等を覚えて頂きます。その過程が修了しましたら次は…」
キラリはこの話を聞いてるだけで気が遠退いて行くような感覚に襲われる。
キラリ「ちょっ……ちょっと待って……ムリムリムリムリムリ……やっぱ無理だって!私になんか絶対そんなの出来っこないよ!やっぱ無理だって!」
菜松はキラリの顔を無表情で見つめている。
ちょっ……何!?だって絶対無理だもん!!
キラリは菜松の視線から目を逸らすように壁の鏡に目を向けると、菜松はその鏡越しにキラリを見つめ視線が合ってしまった。
うわっ!怖っ!
慌ててキラリは視線をそらし、今度は反対の壁の鏡の方へ振り向く。すると、菜松もまた鏡越しにキラリを見つめていた。
ヤバイって!!この人絶対ヤバイって……
キラリは非常に気まずくなり、うつ向いて黙っている。
菜松は無感情な声で
菜松「キラリさん、立って下さい!」
菜松が冷たい表情で言うので、キラリは気圧され思わずのけぞってしまう。
この人なんか怖い……何考えてるのかさっぱり読めない……もう嫌だよぉ~……もう帰りたい~……母ちゃん助けて~!
しかし菜松はたたみかけるように無感情な声で
菜松「さあ、早くお立ち下さい」
キラリは観念して恐る恐るゆっくりと立ち上がる。
菜松はテーブル越しに立っているキラリの目の前に移動し立ち止まる。
なっ!!なに!?何か怒ってんの!?
キラリが緊張して固まっていると、いきなり菜松の右手がキラリの顔に近づいてきた。
キラリはいきなり殴られるのかと目を細め身構えた次の瞬間、菜松の冷たい手がキラリの緊張で火照った頬に優しく触れた。
菜松「なんて可愛らしいお嬢さんでしょう……」
えっ!?
菜松の目は笑っていないが、薄い唇がほんの少しだけ動いて軽く微笑んでいるようにさえ見えた。
キラリ「あ……ありがとう……」
菜松「キラリさん、心配要りません。あなたならきっとやり遂げますわ!私は貴女を信じてます。さぁ、こちらへ……」
透き通るような静かな口調でそう言って菜松はキラリの頬から手を離し、今度はキラリの汗ばんだ手を引いて壁の鏡の方へ向かった。
菜松「キラリさん、鏡に向かってニッコリ笑って。そして自分に向かってこう言うのです。
『私なら出来る!』
さあ!」
さあ!って……言われても……そんな恥ずかしいこと出来ないよ……
キラリはこの菜松のクールな表情とは裏腹におかしなことを言うギャップに戸惑う。
キラリが黙ってモジモジしている横顔を菜松が覗き込み
菜松「どうなされたの?」
と、聞いてきた。
キラリ「いや、何ていうか……恥ずかしい……」
そう言った瞬間、菜松は大きな声で笑った。
菜松「あはははははは……」
キラリはその笑い声に驚き首をかしげて顔を上げた瞬間、すでに菜松の表情は素に戻りクールな眼差しをキラリに向けていて、その変わり身の速さに驚愕(きょうがく)した。
え!?いま笑って無かった!?
キラリは人間がこんな一瞬でこうも表情を変化させられるものかと驚き戸惑っていると
菜松「さぁ頑張って言ってみて!」
キラリは何とも言い難い怖さを秘めている菜松に逆らえず
キラリ「わ……私なら……で……出来る……」
と、小さな声でつぶやいた。
こんな何も無い所でいったい何をするんだろ……
キラリは落ち着かず立ち上がって壁の鏡を覗き込む。
社長夫人かぁ……こんなバカな私が本当になれるの?
キラリは鏡に映る自分に問いかけてみる。
その時ドアがガチャッという音を立てて開いた。先程の若い女性は部屋に入りドアを閉めて
菜松「お待たせいたしました。これから少しの間キラリさんをお世話させて頂きます、菜松照代(なまつてるよ)です。宜しくお願い致します」
そう言って菜松は深々と頭を下げる。
それにつられてキラリもペコッと頭を下げた。
そしてカツカツとヒールの音を立てながら座っているキラリに対面して立った。
キラリの印象としてはこの菜松という女性、かなり垢抜けた都会育ちの教養溢れる女性だと感じていた。
顔立ちは華やかさとは真逆の目は細く切れ長で、鼻筋が通っていて唇も薄い。化粧はその薄い顔立ちを軽く引き立たせる程度の控えめで、情熱とはかけ離れた冷たい印象を受ける。
自分とは全く住む世界が違い、とても仲良く出来そうに無い予感がする。
キラリ「よ……宜しくお願いします……」
キラリはこの女性に引け目を感じてこの場から逃げ出してしまいたい衝動に駆られた。
菜松はキラリの目の前に立ち淡々とした口調で
菜松「それでは早速ですが、カリキュラムを説明させて頂きますね」
キラリ「か……かり……?」
菜松「簡単に言うとこれからどんなお勉強をするか、その予定のことです」
キラリ「あっ……なるほど……」
お勉強……それって絶対学校の勉強とは違って硬っ苦しいやつだよな……何かで見たことあるような……歩き方とか言葉遣いとか色々うるさく言われて……ちょっとおかしなことやったらバシィ~とか叩かれるやつ……
菜松「先ずは初歩的な立ち姿、歩き方、そしてお辞儀等をしっかりと覚えて頂きます。その過程が修了しましたら次は話し方、言葉遣い等を覚えて頂きます。この過程が修了しましたら次は夫人としての心得や、お客様に対しての対応等を覚えて頂きます。その過程が修了しましたら次は…」
キラリはこの話を聞いてるだけで気が遠退いて行くような感覚に襲われる。
キラリ「ちょっ……ちょっと待って……ムリムリムリムリムリ……やっぱ無理だって!私になんか絶対そんなの出来っこないよ!やっぱ無理だって!」
菜松はキラリの顔を無表情で見つめている。
ちょっ……何!?だって絶対無理だもん!!
キラリは菜松の視線から目を逸らすように壁の鏡に目を向けると、菜松はその鏡越しにキラリを見つめ視線が合ってしまった。
うわっ!怖っ!
慌ててキラリは視線をそらし、今度は反対の壁の鏡の方へ振り向く。すると、菜松もまた鏡越しにキラリを見つめていた。
ヤバイって!!この人絶対ヤバイって……
キラリは非常に気まずくなり、うつ向いて黙っている。
菜松は無感情な声で
菜松「キラリさん、立って下さい!」
菜松が冷たい表情で言うので、キラリは気圧され思わずのけぞってしまう。
この人なんか怖い……何考えてるのかさっぱり読めない……もう嫌だよぉ~……もう帰りたい~……母ちゃん助けて~!
しかし菜松はたたみかけるように無感情な声で
菜松「さあ、早くお立ち下さい」
キラリは観念して恐る恐るゆっくりと立ち上がる。
菜松はテーブル越しに立っているキラリの目の前に移動し立ち止まる。
なっ!!なに!?何か怒ってんの!?
キラリが緊張して固まっていると、いきなり菜松の右手がキラリの顔に近づいてきた。
キラリはいきなり殴られるのかと目を細め身構えた次の瞬間、菜松の冷たい手がキラリの緊張で火照った頬に優しく触れた。
菜松「なんて可愛らしいお嬢さんでしょう……」
えっ!?
菜松の目は笑っていないが、薄い唇がほんの少しだけ動いて軽く微笑んでいるようにさえ見えた。
キラリ「あ……ありがとう……」
菜松「キラリさん、心配要りません。あなたならきっとやり遂げますわ!私は貴女を信じてます。さぁ、こちらへ……」
透き通るような静かな口調でそう言って菜松はキラリの頬から手を離し、今度はキラリの汗ばんだ手を引いて壁の鏡の方へ向かった。
菜松「キラリさん、鏡に向かってニッコリ笑って。そして自分に向かってこう言うのです。
『私なら出来る!』
さあ!」
さあ!って……言われても……そんな恥ずかしいこと出来ないよ……
キラリはこの菜松のクールな表情とは裏腹におかしなことを言うギャップに戸惑う。
キラリが黙ってモジモジしている横顔を菜松が覗き込み
菜松「どうなされたの?」
と、聞いてきた。
キラリ「いや、何ていうか……恥ずかしい……」
そう言った瞬間、菜松は大きな声で笑った。
菜松「あはははははは……」
キラリはその笑い声に驚き首をかしげて顔を上げた瞬間、すでに菜松の表情は素に戻りクールな眼差しをキラリに向けていて、その変わり身の速さに驚愕(きょうがく)した。
え!?いま笑って無かった!?
キラリは人間がこんな一瞬でこうも表情を変化させられるものかと驚き戸惑っていると
菜松「さぁ頑張って言ってみて!」
キラリは何とも言い難い怖さを秘めている菜松に逆らえず
キラリ「わ……私なら……で……出来る……」
と、小さな声でつぶやいた。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
エモパレ ―感情が見えるぽっちゃりな私が、オジさま副局長を無自覚なまま搦め捕るまで―
久乃亜
恋愛
前世の記憶を持つぽっちゃり看板娘ハルネは、
人の「感情の色」が視える魔眼『エモパレ』と、持ち前の経営手腕で、実家の香房を切り盛りしていた。
そんなある日、とある事件から、
オジさま――第二調査局副局長、通称「鬼のヴァルグレイ」に命を救われ、
ハルネの理想のオジさま像に、一瞬で恋に落ちる。
けれど、彼がハルネに告げたのは、愛の言葉ではなく
――理不尽な『営業停止』の通告だった!?
納得いかないハルネは、自らの足と異能で犯人を追い詰めることを決意する。
冷徹で無表情な彼だが、なぜかハルネに同行し、過保護なまでに手伝ってくれて……?
「人生2週目」のポジティブぽっちゃり娘と、不器用な冷徹最強騎士が織りなす、
お仕事×捜査×じれじれの初恋溺愛ファンタジー!
※ 第1部(1~3章)完結済み。 毎日投稿中
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25)
「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」
◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20)
「京都案内しようか?今どこ?」
再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。
「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」
「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる