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王都編
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しおりを挟む「んん。……ふぁ、朝?」
いつの間にベッドで寝てたんだろ。
つうか、寝心地良すぎ。
二度寝したい。今何時だ。
キョロキョロ見渡すと、サイドテールに綺麗な置き時計があった。
6時過ぎか。起きた方が良いのかな、まだ早いのかな。
ベッドから降りて、ドアから廊下を覗いてみる。
静かだ。けど遠くで物音はする。食事の準備だろうか。
屋敷をウロチョロするわけにもいかないし、ディオンさんに聞く?
でもノックして、もし起こしちゃったらマズイよな。
ーーガチャ
お、隣の部屋が開いた。ディオンさんか?
「…何してるだ、ルーカス」
「あは、目が覚めたんだけど、どうして良いか分からなくて様子を」
イケメンは寝起きでも完璧なのか。
少し気怠げな瞳に、セットされていない無造作な髪。
寝巻きは暑かったのか、胸元がざっくり開いている。
……同じ寝巻きだよね。何でこうも違うんだ。
「まだ寝てても良いぞ?」
「いや、爆睡したから大丈夫。
それより普段も、このくらいの時間に起きるの?」
「んー。いつもはもっとゆったりだな。
今日はドアの音がしたから、ルーカスが起きたのかな~って、目が覚めた」
どんだけ耳が良いんだよ。
俺、これから毎日物音に気を付けなきゃいけないじゃん。
「ごめんね、起こしちゃって」
「全然かまわねーよ。
朝食は7時ぐらいなんだ。せっかくだから家ん中、散歩するか」
「いいの? ありがとう」
「ったく、朝から可愛いな」
やっぱりディオンさんは、頭を撫でるのがクセに違いない。もしくは俺の髪の毛の触り心地が良いかだ。アニマルセラピー的な。
「待ってて、着替えてくる」
「おう。クローゼットに服入ってっから、好きなの着ていいぞ」
「マジっ? ありがとうございます!」
クローゼットを開けると、びっちり服が収納されていた。
全部高そうだ。汚したら洒落になんない。
デザインは、ディオンさんが昨日着ていた様なシンプルでカッコいいものではなく、中性的なお坊ちゃん風の服ばかりが並んでいる。
コレ、着れるかなー。ちんちくりんになる予感しかしねぇ。
「あれ。誰かのお下がりだと思ったけど、やけにピッタリだな」
俺は、どちらかと言うと細身の方だ。
ディオンさんかフィンさんも、昔は細かったとか……?
ダメだ。想像出来ない。あの人等、ガタイ良すぎるんだよ。
筋肉と身長をそれぞれ10分の1ずつ分けて欲しい。
とりあえず動きやすそうな、ベージュのボウタイブラウスと濃いブラウンのスラックスを選んだ。
そもそも、このズボンがスラックスと呼ぶのかさえ判らない。
前世では、ピッタリ系をスラックスと呼んでたから良いとしよう。
まずズボンなの? パンツなの?
女の人はズボン履くコーデをパンツスタイルとか言うけど、ユニ◯ロで「パンツ何処ですか」って聞いたら下着売り場に案内されたからな。ハッキリしてくれよ!
今は関係ないけどっ。
着替え終わって出れば、ディオンさんが待ってくれていた。
「お待たせしました」
「ん。よく似合ってる」
「ありがとうございます。
誰の服なの? サイズがピッタリでビックリした」
「ルーカスの服」
「?」
「ルーカスが来るから用意させた。
風呂入ってる時に、服をちょっと拝借してな」
だから昨日なかったんか!
えっ。というより、風呂から夕食食べ終わるまでに用意したって事?
貴族ヤバイ。いや、この場合は使用人が優秀すぎてヤバイのか。
「すごすぎて、わけ分からん」
「まあまあ。サイズ合ってるんだし、イイじゃねーか。気にするな」
「うん……」
「ちょっと、こっち向け。タイが歪んでる」
上手く結べなかったタイを結び直してくれるらしい。イケメンは面倒見も良いのか。
俺もマネしたら、女の子にモテるかな。
今度、伝授してもらおう。
「ディオンさんのシャツ、カッコいいな。着やすそうだし」
「買いに行くか?
でもオレは、このシャツより今着てる様な服の方が似合うと思うけどな」
俺だって、あと数年すれば大人の男になるんだ!
身長だって超してやる。
……身長は無理かな。筋肉ーーも、無理だな。
顔は生まれた時点で負けてるし。
あれ、何もなくね。勝てる要素。
すれ違う使用人の皆さんに驚かれながらも、丁寧に屋敷内を案内してもらった。
「外は、また後で教えよう。
あの温室見えるか。あそこは母上が管理しているから、入ってもいいが、気を付けてくれ」
「分かった(むしろ入らん)」
窓から見える温室は、太陽に反射してキラキラ輝いている。
ビニールハウスにしては、どっしりしてるな。ガラスで出来てるのかも。伯爵家だし。
「そろそろ良い時間だ。
食堂に行こう」
「うん」
「父上は朝が弱いせいで、顔が怖いが気にしないで欲しい」
「ん。りょーかい」
メアリーさんとフィンさんは、既に席に着いていた。
ガイザーさんは、まだみたいだ。朝弱いらしいから。
「おはようございます。ディオン、ルーカスちゃん」
「ああ」
「おはようございます。
フィン様も、おはようございます」
メアリーさんの「ルーカスちゃん」呼びは、確定なんですね。
ところで、メアリーさんは“様”で良いのか。夫人とかの方が、それっぽいんだろうか。
「寂れた村育ちの君には、敬称など慣れないだろう。
呼びやすい様に呼ぶといい」
親切なのか貶しているのか、いまいち分かんねー。
「では、フィンさん?」
「……」
「ルーカス、フィン兄って呼んでみ」
変な事、耳打ちすんなよ。
まだフランクな呼び方は早いって。
初っ端から嫌われたくない。
もう手遅れな気がしないでもないけど。
「無理だよ」
「いいから。言ってみろ、アイツ喜ぶから」
「絶対怒られる」
「バカ、信じろ。兄貴は甘えられるのが好きなんだ。オレも姉さんも甘えなかったからな。飢えてんだよ」
そんな風には見えませんけど?
まあ、そこまで言うなら試してみよう。
「ーーフィン兄」
「っ! 何だ」
反応しただとっ!
ディオンさんを見れば、したり顔で俺を見てくる。
そんな顔もサマになっててムカつくが、疑ってすみませんでした!!
「や、あの。俺1人っ子なので、フィン兄って呼んでもいいですか……なんて」
フィンさんの目力におされて、モジモジしてしまったのは見逃してほい。
「好きに呼べと言ったはずだ。
許可を取る必要はない。
私に兄の代わりをして欲しいと言うなら、私も呼び方を考えよう」
言ってない、言ってない。
ディオンさんを兄呼びするのは違和感ないけど、フィンさんは何か違う。
「フィン兄」って呼ぶのは、兄としてってより、近所の出来の良いお兄さんに対する気持ちっていうか。
「あ、はい」
断れねー!
しかも、今度はディオンさんが不機嫌だし。
アンタの言った通りにしたのに何でだよ。
「ディオンさん?」
「……オレだけ、よそよそしくないか。
ディオンって呼ぶのはどうだ」
「けどディオンさん、3つも上じゃん」
「別に敬語使ってるわけじゃねーんだから、今更だろ。
ほら、ルーカス」
それもそっか。タメ口きいてるくせに、呼び捨てを躊躇うのも変だな。
「じゃ、ディオン」
「もう1回」
「ディオン」
「……ルーカス」
その目キモい。テオドールみてぇ。
「うふふ、仲良しさんなんだからっ。
ねえ、ルーカスちゃん。フィンが兄なら、私は“お母様”……いえ“ママ”なんじゃなくって?」
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