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王都編
モンフォール家
しおりを挟むえーと。どういう状況だ?
大きなテーブルに、豪勢な食事。
歴史物の洋画で見た様な立派な椅子。
ヤベェ。
ディオンさんパパに、たぶんママ。
それからディオンさんと、ディオンさんに似た男性。そして俺。
やだ、もうお家帰りたい。
「さて。自己紹介でもしようか。
私はこの家の主人、ガイザー・モンフォールだ。彼女は妻のメアリー、美人だろう?
仏頂面のそいつは、長男のフィンだ。ディオンの事は知ってるな。あと1人、娘がいるんだが留守でな。またの機会に紹介する」
何でこんなウェルカムムードなわけ。
そして何で美男美女なわけ。
あれか、貴族は皆んなこうなのか?
だから田舎者は直ぐにバレるのか?
不平等だ、コノヤロウ。
ガイザーさんは、ラノベ系イケメンの王道的なビジュアルをお持ちだ。
ツーブロックセンターパートが似合う、パールグレーに輝く髪。
成人済みの子供がいるとは思えない若々しい見た目。
だが童顔ではない。大人の色気がムンムン出てる。羨ましい。
メアリーさん。ハリウッド女優なんて目じゃない美人っぷりだ。
腰まで伸びた柔らかそうなオーキッドの髪。加護欲をそそる華奢な体型。
このお母様から、どうやったらディオンさんみたいな息子が生まれるんだ。
可憐さのカケラも引き継いでないよ。
フィンさん。髪はガイザーさんと同じパールグレー。ヘアスタイルはまさにファンタジー、サラサラストレートを1つにゆるく纏めた長髪だ。
ちょー似合ってる。正直、長髪の男キモいって思ってたけど、馬鹿だった。
すんげえ、カッコいい。
顔はディオンさんを少し綺麗よりにした感じだ。
最後にディオンさん。1年ぶりに会った彼は、身長も顔立ちもかなり大人に成長している。良いなー。俺も1cmは伸びたんだけど、全然追いつかないや。
ドーンピンクのショートウルフがカッコ良さを際立たせている。
そういや髪色が違うな。ガイザーさんとメアリーさんの髪色を足して2で割った様な色だ。
お嬢さんはどんな色なんだろ。
俺なんか、せっかくファンタジーの世界に生まれたのに、アンバーだもんな。
髪色まで平凡だなんて、くそうっ。
テオドールは、プラチナブロンドだけどな!
パーマ風のくせ毛に前髪長めのショートマッシュ。何でもう完成してるんだよ。
お前まだ8才だろうが!
15歳の俺が垢抜けないってのに。
「アルソン村から来ました。ルーカスです。15になると村から出られる決まりで、ディオンさんに…ディオン様に誘って頂いて、王都に来ました。
なるべく、ご迷惑をおかけしない様に気を付けます! 宜しくお願い致しますっ」
バッと立ち上がって挨拶すると、冷たい視線が突き刺さった。
フィンさん……?
「ルーカス、そんな畏まらなくて大丈夫だ。自分の家だと思って過ごせば良い」
「それはちょっと…」
「そうよ、ルーカスちゃん。ママって呼んで良いのよ」
「いや、あの」
「じゃあ私はパパだな」
「ええ」
「まずは座ったらどうだ」
うわ。やけにフレンドリーな3人と、かなり不機嫌なフィンさん。
1人だけ冷気漏れてる。氷属性だろ、絶対。
「おい兄貴。そんな言い方はないだろ」
「何故だ?
私は、ディオンの嫁が予定より早く来たと聞いて、仕事を切り上げて帰って来たんだ。
それがどうだ。嫁どころか男じゃないか。
不愉快だ」
うう、すごい嫌われよう。
まず“嫁”の時点でおかしい。そりゃ怒るよ。どんなお茶目な説明したんだよ!
「兄貴っ!」
「フィン、失礼よ。謝りなさい」
「お断りします。
君も早く出て行きたまえ。
我が家は君が暮らす様な場所じゃない」
「っすみません!
直ぐ出て行きます」
ーーガチャンッ
「ふざけるなっ!!
ルーカス、こんなヤツの言う事は無視しろ。部屋へ行くぞ」
「え、ちょ……」
ディオンさんが、怒りに任せてテーブルを拳でガンと叩いた。
やめて。高級そうな食器が一瞬浮いたし、シルバーカトラリーが床に落ちた。
純銀っていくらすんの。考えるだけで恐ろしいんですけど。
腕を掴まれて、半ば引き摺られる様に食堂の扉に向かう。
「待ちなさい、ディオン。
食事がまだだろう」
「放っといて下さい。父上。
オレとルーカスは部屋で食べます」
「いいから待ちなさい。命令だ」
「ハア?」
「フィン、お前も言い過ぎだ。
義妹が出来る事を楽しみにしていたのは知っている。
だがルーカスだって、大差ないだろ。
可愛いじゃないか。お前は可愛い物が好きだろう。
毎日彼が笑顔で挨拶してくれるんだぞ」
「そうよ、フィン。想像してみなさい。可愛いじゃない」
幻聴?
貴族ジョークか何かか?
頭がおかしいよ、この人達。
俺がおかしいの? それとも夢?
まさか試されてるのか?
これはどう反応するのが正解なんだ。
「…………こほん。まあ、直ぐに出て行く必要はない。とりあえず食べなさい。マナーは目をつぶってやる。そんなにガリガリで追い出しても、目覚めが悪いからな」
えっフィンさん?
それで良いの? 納得したの?
俺は全然納得してないよ。
そんな簡単に怒りを鎮めて良いのか、次期当主様。
「おい、何だよ偉そうに。
ルーカスに謝れ」
「ディオンさんっ、俺は大丈夫だから!」
「……すまない。そもそも君に怒るのが間違いだったな。誤った情報を寄越したのはディオンだ。
ゆっくりしていくと良い」
「あ、ありがとうございます」
180度変わった。言ってる事が180度変わっちゃった。
この家疲れる。
ーーーーーー
ーーーー
「これも食べろ」「あれも食べろ」と、次々に料理を勧められ、腹が異様に膨らんでいる。
うっぷ、苦しい。
歩けねぇ。
ご馳走になったというのに、ディオンさんに肩を貸してもらいながら部屋に戻る、とんでもなく情けない姿を屋敷中の人に晒しながら俺は生還した。
「嫌な思いをさせて、悪かった。大丈夫か?」
「ううん、全然。
それにフィン様?の言う事は、当たり前だったし」
「そんなわけないだろ。
それに、あんなヤツに“様”付けなんかしなくていい」
「でも、お貴族様なんだよね?
俺、ディオンさんが伯爵家の人だって知らなくて……」
現在、俺達は余裕でベッドとして使えそうな、ふかふかなソファーで寛いでいる。
と言っても、俺はディオンさんに膝枕されて頭を撫でられるという、羞恥プレイを強要されてるわけだが。
彼は甘やかすベクトルを間違えている気がする。
「悪い。ワザと黙ってたわけじゃないんだ。タイミングがなくてな」
「うー、困った顔までイケメンかよ。ムカつく」
「ハハッ、ありがと。
まあでも安心してくれ。なんだかんだ言って、兄貴も気に入ったみたいだし」
「え、どこが」
そんな素振り全くなかったけど。
あの後、終始無言だったよ。
ちょいちょい黙って、皿に料理を盛っていくもんだから、対応に困ったのに。
断ったらダメかなって、必死で食ったのに!
途中から美味しさ越えて、苦行でしかなかった。
「ずっとルーカスの様子を見てただろ。
料理も次々やって、好みを把握しようとしてたし」
嫌がらせじゃなくて、その為の餌付けだったの!?
言ってくんなきゃ分かんねーよ。
「俺、ほんとに迷惑はかけたくないんだ。
仕事も早く探すから、申し訳ないけど、それまで置いてくれる?」
「当たり前だ。仕事なんか探さなくても、ずっとココに居れば良い。
いっそ本当に嫁に来るか?」
「なんじゃそりゃ」
「んー? オレは本気だぞ」
「ちょ、前髪くるくる弄らないでよ。ボサボサになるじゃん」
そのまま、撫でられたり、髪で遊ばれるうちに疲れが出たのか寝てしまった。
だから、ディオンさんが何か呟いていたけど、俺の意識は夢の中だった。
「やっとオレのとこに来たな、ルーカス」
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