俺TUEEEに憧れた凡人は、強者に愛される

豆もち。

文字の大きさ
4 / 58
旅立ち編

しおりを挟む


「おいっ! いったい何の目的で門の前にしゃがみ込んでいた! 答えなさい!」


 警備員? 傭兵? 何か知らないけど恐い。
 門番ってこんなもんなのか? コエーよ。


「や、あの」
「キサマが持っていた地図は何だ!
誰に頼まれた!」
「ヒィッ。
ディオンさんに手紙でもらったんで、す」
「ディオン様だとっ?!
キサマ、覚悟は出来ているんだろうな」


 怒りのボルテージが限界突破してらっしゃるー!
 本当なんです! 俺、嘘ついてませんっ。


「ぁした! 明日からお世話になる予定で、それでディオンさんが手紙で、あ、や、そうじゃなくて、えっと」
「明日から?
ーーキサマ、名前は」
「え。ルーカス、です」
「……え?」


 今度は何! 強面お兄さんが固まっちゃったんだけど。誰か助けて。ディオンさーん!


、どこから来た」
「(キミ?) ポンパ領のアルソン村です」
「……やべっ」


 えっ。やべって何。不安が増すんですけど。急に顔を青くするのやめてもらえませんか。心臓に悪いんで。


「あの?」
「すまない。不審者と勘違いしてしまった。手荒いマネをして申し訳ない」
「えっ」


 大男2人に頭を下げられ、俺は混乱した。
 状況が飲み込めないまま暗い部屋から出され、中央に聳える屋敷の中に通される。


「只今、ディオン様をお呼びしておりますので、少々お待ち下さいませ」
「はぃ」


 煌びやかな客間にポツン、と1人に残された俺。
 生まれて初めて見るメイドさんが淹れてくれたお茶を、ビビりながら啜る。


ーーガチャ


「ひょえっ」


 急にドアが開いたから奇声を上げてしまった。
 恐る恐るそちらを見ればーーー


「あっ。ディオンさん」
「ルーカス。本当にルーカスかっ!」


 あの時よりも、ずっと大人の男性に成長したディオンさんが目の前に居た。
 イケメンに磨きがかかってんなーと凝視したら、抱きしめられた。


「うぐっ。くっ苦しいっ、ギブギブ」
「ああルーカス! どれだけこの日を待ったか」


 抱擁レベルを軽く超えた腕力に、息が上がっていく。
 ディオンさんの腕や背中をバシバシ叩いても、全然緩めてくれない。


「ディオン様。お客様が倒れてしまいます」
「あっ…悪い、ルーカス。大丈夫か?」
「ケホッ、ケホッ。ん、だい、じょうぶ」
「やー、悪りぃ悪りぃ。
久しぶりに会えて、つい、な。
それより明日来るんじゃなかったのか?」


 悪いと謝りつつ、全く悪いと思ってない様な笑顔で言われても微妙なんですけど。
 メイドさん、グッジョブ。助かった!


「乗せてもらった馬車が速くて、ちょっと前に着いちゃった。
ごめん。予定狂わせちゃったよね?」
「そうか。それは御者に感謝しないとな。
オレは1日でも早く会えて嬉しいぞ」
「へへっ、俺も」
「ぐっカワッ! ……なんて破壊力だっ」
「ディオンさん?」


 急に胸に手を当てて苦しみ出したけど、大丈夫かな。具合が悪いのか?


「ちょっ、大丈夫?」
「うっ。ああ、大丈夫だ。問題ない」
「でも……」
「それより、もう1回抱きしめさせてくれ。
ちゃんとルーカスが目の前に居る事を実感したい」
「? おう」


 さっきと違って、今度は優しく包み込む様なハグだった。
 そうそう、抱擁ってのはこういうヤツの事を言うんだよ。
ちょっと長いけど。
いや、だいぶ長いけど。
 まあでも、俺も嬉しかったから、ディオンさんの背中に手を回してぎゅっと抱きしめ返すと、ビクッと一瞬震えて、また腕の力を強めてきた。
 それは苦しいかな。緩めて、緩めて。

 5分程経って、ディオンさんは満足した様だ。


「疲れたろう。部屋へ案内しよう」


「ここだよ」と言われて案内されたのは、俺の家のリビングの広さと変わらない、広い部屋だった。
 田舎だから家はある程度大きいよ。
だからリビングもわりと広いヨ。広い、はずダヨ。前世の記憶からすると……。


「あのぉ~ディオンさん?
広すぎません?」
「そうか? こんなもんだろ。
嫌なら部屋を変えるが、他もだいたい同じだぞ」


 さいですか。貴族コワイ。


「ココでお願いします」
「良かった。オレと部屋を隣にしてあるんだ。その方が色々とイイだろ?」
「えっマジ! すご。
何かあったら直ぐ行けるね」
「ああ。何もなくても来て良いぞ」


 んー。ディオンさんは俺を甘やかしてくれる人だから、入り浸っちゃいそうだな。
 それじゃ部屋を用意してもらった意味がなくなるし、迷惑だ。
気をつけよう。


「とりあえず荷物置いて、風呂入ったらどうだ? 着替えたいだろ?」
「入りたい! 汗かいて気持ち悪かったんだ」


 メイドさんに浴場に連れて行ってもらうと、脱衣を手伝おうとしてくれて、テンション上がりました。はい。断ったけどね。

 うひゃー、湯船デカ。温泉みたい。


「ふう。極楽、極楽」


 にしても、風呂までこんな豪華なんて。
本当にお貴族様なんだなー。ディオンさんって。貴族だと知った今も、やっぱり信じられない。
 壁がないっつうか、気さくっていうか。
 格好は完全に貴族なのに。


「あ゛ー、もう分かんねえっ。出よ」


 それより、このままお世話になっても良いんだろうか。
 ご家族はどう思ってるんだろう。
屋敷に仕えてる人達だって、嫌だろうな。

 どうにか住む場所と仕事を見つけねーと!



「俺の着替えが消えた」


 いざ風呂から出て着替えようとしたら、服がなくなっていた。
 荷物を必要最小限にする為に、厳選した服だったのに。
 俺の服が置いてあったはずの籠には、明らかに高そうなブラウスとスラックス。ご丁寧にブリーフまで。
 下着はトランクス派なんだけどな。ブリーフは小学校以来じゃないか?
……あれ、もしかして俺の履き古したトランクスまで持って行っちゃったの?
 うがーっっ。メイドさんだったら、どうしよう。どうか男でありますように。


 部屋はどこだっけと思いながらドアを開けると、メイドさんがスタンバってた。


「もしかして、ずっとそこに?」
「はい。ディオン様よりご案内する様、申しつかっております」


 転生して初めてのデッカい風呂に、テンション上がって長風呂しちまったー!
 ごめんなさい。


「お待たせして、すみません」
「いえ。それでは参りましょう」
「はい」





「やあやあ、待っていたよ。
君がルーカスだね?
ずっと会いたかったんだ」
「???」


 誰、このイケメンな大人は。
 さっきの部屋とは違う場所に案内されたと思ったら、いきなりのイケメンドアップで思考が停止した。


「父上、離れて下さい。
ルーカスが固まってます」
「ハッハッハ、良いじゃないか。
新しい息子なんだから、ハグの1つや2つ」


 父? このイケメン、ディオンさんパパ?
 てか新しい息子って?


「あらあら。いけませんわ、旦那様。
彼はディオンのお嫁さんなのよ?
ディオンが可哀想だわ」
「そうだったな。
だが、嫁にしては凛々しい顔だ。
嫁はやめて息子にしないか?
私が鍛えてやろう」
「父上っ!」
「分かった、分かった。お前に返す、ほれ」


 イケメンパパからディオンさんにバトンタッチされた俺。
 それは良いんだけど、何でまた抱きしめられてるの。
 ディオンさんって、俺の事小さい子供と勘違いしてない?


「ん、良い香りがする」


 頭を嗅がれた。ちょっと嫌だ。
 あと、あなたの家の石鹸の香りです。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...