俺TUEEEに憧れた凡人は、強者に愛される

豆もち。

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王都編

チョコレートのキス

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 治療してもらったは良いが、大事なものを失ってしまった。
 いや。ここはエロゲ展開にならなかっただげ、良しとしよう。
男だから、そんな展開にはなんねーけどな!


「あの、ディオンは」
「もう直ぐ来るよ。店にようにしたから」


 それはつまり入れないように、魔法をかけてたって事?


「でも本当に不思議だね。
モンフォールの次男は、つまらない男で有名だったんだけど。まさかあんなに分かりやすい奴だとは思わなかった」
「はあ」
「その理由が君ってのもね~。ま、分からないでもないけど」
「何の話かよく。
ディオンはいつも優しいですよ」
「……君、大丈夫ぅ?」


 お前がな。
 いったい何をどう誤解したら、ディオンみたいな良いヤツが悪く言われるんだ。



ーードタ、ドカッ


「おっ、戻って来たよ~」
「ーールーカスっ!!」


 わっ。汗だくじゃないか。
必死で走って来てくれたんだな。


「迷惑かけてごめんな。もう大丈夫だから」
「そうかっ、良かった」
「うわー。副団長、汗すごいよ~?」
「誰のせいだとっ!」
「え~、だって邪魔だったしぃ。
副団長もさ、ムリにこじ開けようと魔法ぶっ放してたみたいだけどぉ。
キズ一つ付けられなかったねえ」


 変態が勝ち誇った笑みを!
ムカつく。ディオンが負けたみたいで、腹立つな。
 ディオンは騎士なんだろ?
それなら魔法で勝てないのは当然じゃないか。やなヤツ。


「世話になったな。
ルーカス、帰るぞ」
「おうっ」
「こらこら、お茶がまだでしょー。
はい座る~《止まれ》」


 身体がーー動かないっ? 
 ディオンも同じ様で、苦々しい顔をしてる。
 これも魔法なのか? 詠唱を端折って、こんな強力な魔法。チーターじゃねーか。アリかよ。


「ん~、この部屋じゃ味気ないから移動しよっか」


ーーパチン


「うおっ」
「なっ」


 変態が指を鳴らした瞬間、サロンの様な綺麗な部屋に居た。


「紅茶で良いよねー」
「ココは…」
「此処はねー、僕がお客様をもてなす部屋だよぉ。マナの容量大きくしたから、全然平気だったでしょ? ワープ」
「これが、ワープ。……スゲー! ディオンっ、俺初めてワープした!」
「そこなのか、ルーカス。
もっと別に言う事があると思うんだが」


 子供っぽかった?
 でも瞬間移動だぞ。夢だろう。


「あっはっは!
や~、君は興味深おもしろいねぇ」
「なんか恥ずかしいんで、忘れて下さい」
「え~? 可愛いじゃん。
あ、それより何が目的で来たんだっけ」


 チョコレートだ、コノヤロウ。
 ここまで来たら絶対持って帰ろう。
いっそタダでもらっても良いくらいだ。
俺のファーストキッスをよくも!


「チョコレートです」
「ちょこれぇと?
はて、そんな名前の物、取り扱ってたかなぁ」


 チョコレートは通じないのか。


「看板に描いてあった、茶色い食べ物です」
「……え?」


 何でそんな驚いた顔をするんだ?
 間抜けな表情まで、整って見えるなんて。
変態のくせに贅沢だと思います。
 神様、どうかこの変態に罰をお与え下さい。


「君、本気で言ってるの?」
「はい」
「アレは塗り薬の材料だよ?」
「え」
 

 まさかの食べ物とさえ認識されていなかっただと!?


「食べたら、美味しいデスヨ?」
「…そんなに食べる事に困っているの?
副団長は、ちゃんと食事させてないって事ぉ?」


 可哀想な子認定されたぞ。何でだ。
 チョコレートは嗜好品なんだってばー。


「いや、たらふく豪華な食事をもらってます」
「じゃあ過去に?
ハッ、まさかそういう趣味っ」


 どういう趣味だよ!
ええい、食べたら分かるんだ。
食べさせよう。
 俺の知ってるチョコレートと違う可能性もあるし。


「とりあえず、それ下さい」
「ん~、まあ良いけど」


ーーパチン


「はい、どうぞ~」
「わっ! コレまで瞬間移動っ」
「ふふぅ。すごい?」
「すごいっす!」
「……あ、そう。調子狂うなぁ」


 ではさっそく。パキッと割って、ひと口食べてみる。


「待てルーカス、塗り薬の材……あー、食っちまったか」
「うま。ディオン、やっぱり俺の知ってるチョコレートだよ。コレ」
「うわ、本当に食べちゃった。この子」


 口に広がる芳醇な香り、クセになる苦味。そしてやわらかな甘み。
 うんま~っ!
 思ったよりビターだから、ケーキ作る時は砂糖も入れた方が美味いかも。
カカオ80%ぐらかな。


「身体に異常はないか?」
「うん。ディオンも食べてみなよ」
「え゛」
「大丈夫、美味しいから。あ~ん」
「ん。……しまった反射的に。
苦い。ん? 甘い? どこかでこの味をーー」


 お。チョコレートを食べた事があるのか?
なら嫌悪感なく食べてくれそうだな。


「美味いでしょ」
「ああ、そうだな。薬の味とは思えない」
「驚いた。副団長までそんな事を」
「店員さんも食べてみませんか?」
「そうだな~。君が口移しで食べさせてくれるんなら良いよぉ」


 やっぱり救い様のない変態だ。帰ろう。


「冗談が過ぎるな。いくら魔塔の人間とは言え、こちらはあくまで客だ。忘れないで頂きたい」
「番犬がよく吠えるね~。
別にさっきしたから2回目なんて変わらないと思うけどぉ」
「ああ゛?」
「ブッっ、けほっ」


 何バラしてくれちゃってんのー!
嫌がらせか、この性悪男っ!!
 吹き出したせいで、紅茶が気管に入ったじゃねーか。


「何か今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが、ルーカス?」
「ひっ。お、怒ってんの?」
「怒られる様な心当たりがあるのか?」


 般若が降臨なされた。何で、どうして?
俺がされたんであって、ディオンがされたわけじゃないのに、何で怒るんだよっ。


「舌絡めると、気持ち良さそうな声出してたよねぇ。可愛かったな~」


 お前は要らん事言うな。


「ルーカス?」
「ち、治療だよ。マナを送ってもらう為に仕方なく」
「あ゛?
マナ操作でキスする必要ねーだろ」


 そうなの!? くそ、変態に騙された。


「その方が効率が良いからに決まってるじゃ~ん。
ていうか、副団長に関係あるのぉ」
「ルーカスを預かる者として、黙っているわけにはいかない」
「ふ~ん。なーんか気に入らないなぁ」


 うげっ、またマナが漏れてる。
さっきみたいに苦しくはならないけど、ピリピリするのは変わらないな。
 魔法使いが皆んなこうだったら嫌だ。


「君ぃ。これ欲しいんだよねえ」
「はい、いくらですか」


 手持ちはそんなにないから、足りなかったら仕事が安定するまでお預けかぁ。  


「そうだな~。僕に会いに来てくれたら、その都度ご褒美に10枚あげる。代金は要らないよぉ」
「えっ良いんですか」
「その必要はない。オレが別の店で買う」
「別の店ねぇ。ムリだと思うよ~、この薬を卸してるは魔塔だから。
まあ他国と貿易するってんなら、話はかわるけど~」


 自分の店以外で買うのは困難って言いたいのか?
 嫌味ったらしい言い方せずに、普通に話せば良いのに。ディオンに対して当たりがキツい気がする。
 タダでくれるって言うし、欲しいけど。
やっぱり遠慮した方が良いよな。
ディオンが嫌がってるから。


「あの、とりあえず今日は、コレの分だけ代金支払います」
「それは君にあげる~。
だからぁ、また来てよ」
「えっと…」


 チラッと般若の方を見ると「行く気じゃねーだろうな」ってオーラを出していた。
口で言ってくれよ。なんか恐いから。


「あっ、来る日は連絡欲しいな~。
魔塔に居る方が多いから。
伝書鳩あげるよぉ」
「いえ、要らないです」
「……なんでぇ?」
「や、あの」
「要らないと言ってるんだ。
それの代金は、モンフォール家に請求しといてくれ」


 言うや否や、ディオンは俺を引っ張って出口へ向かう。
意外にも、今度はあっさり店を出る事が出来た。


「またね~、ルーカスくん」


 ドアを開けると同時に聞こえた声に、ちょっと不安になったのは内緒だ。
うう、変態に名前覚えられちゃった。


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