俺TUEEEに憧れた凡人は、強者に愛される

豆もち。

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王都編

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 ゔっ。こんな視線を浴びながら食事する日が来るとは。


「特に不自由はなかったか」
「おう。それより、厨房の人員増やせないのか。皆んな倒れそうだ」


 注目される事は慣れているとばかりに、ディオンは澄ました顔でスープを啜る。
 クリスさんも平気そうだ。


「調整しているんだが、難しくてな。
騎士は訓練を怠れないから、手伝いには回せない。
調理スタッフとして、入団テストを行っても落ちる者ばかり。たまに合格者が決まったと思ったら、2週間と経たずに辞めていく」


 嘘だろ。どんだけ人気ないんだよ。


「そんなに応募しないもんなの?」
「いや、殺到してる。
だけど問題があってね。ルーカス君は、どう思う。この団員達を見て」


 どうって……チラッと周囲を見れば、何人かと目が合った。


「まあ、イケメンが多いですかね(ブサイクをよこせ。俺の為に)」
「そうなんだよ」


 自画自賛だとっ。間違ってないだけに腹が立つぞ、クリスさん。
 次のお菓子は、量減らしてやる。


「へー。それのドコガ問題ナンデスカ」
「なんでカタコト。まあいいや。
第3騎士団は若手を中心とした実力主義団体なんだ。
だから貴族も平民も居る。
その為、非戦闘員は平民や下級貴族出身が多いんだけど、貴族のご令嬢方が問題でね」


 読めてきてしまった。
 つまり、イケメン騎士とヨロシクしたい貴族の皆様が、平民を蹴落としていくわけだな。


「条件に合った平民組は、何故か最終選考で辞退するし、貴族も使える奴と思ったら、どこぞの令嬢の息がかかってる」
「うわ~」
「別に、貴族からの推薦だって構わないっちゃ構わないんだ。
だけど、ベラベラ機密情報を喋られたら、たまったもんじゃないだろ」
「そうっすね」
「ルーカス君、誰か良い友人居ない?」


 クリスさんも苦労してるんだな。
そんなしょーもない理由で、玉葱のお兄さんは泣いているのか。辛すぎる。


「俺、王都に出て来たばかりなので、知り合い居ません」
「……だよねー」
「はい」


 俺達が話してるうちに、ディオンはシフォンケーキを食べ始めた。
 食うの早っ。俺、まだおかず食ってない。


「あっ、副団長。それ美味いですよ」
「クリス、何故お前が知っている」
「……ハッ! 申し訳ありません。お先に頂きました!」
 

 ありゃ、不機嫌。手伝ってもないのに、文句はよくないぞ、副団長。


「クリスさんが仕上げてくれたんだぞ。
感謝して食べろよ」
「げっ、ルーカス君っ」
「そうか。さすがルーカスだ、今日も美味い。クリス。今後も距離を保って、しっかりサポートしてやってくれ」
「承知、致しました(絶対、根に持たれてるー!)」



 

 俺が厨房を手伝う日はディオンも食堂で。
そうでない日は、部屋で昼食をとる事、早1ヶ月。
 団員達も食事中に驚く事はなくなった。

 さて、今日は何作ろっかな~。


「よっ、ルーカス」
「ダリオ! おはよう、今日はダリオが担当なのか?」
「おう。嬉しいだろう」
「うん」


 いがぐり頭のザ・凡人オーラを放つ彼は、平民出身の16歳。
 歳もほぼ変わらず、同じ平民という事もあってか、すぐに打ち解けた。
騎士の中で1番仲良くなったのは、間違いなくダリオだ。


「なんだよ、素直じゃねーか。
可愛いな、コイツ~」
「いたっ。おい、小突くなよ。腐っても騎士なんだから」
「おま、腐ってもって何だよ。
傷付くだろ」
「いーや、ダリオはそれぐらいじゃ傷付かない」


 こんな学生みたいなノリは久しぶりだ。
 村では、テオドールが引っ付いてたせいで、仲良い友達が居なかったからなー。


「今日は何作るんだ?」
「んー。ケーキが連続で続いたから、プリン」
「プリンかぁ。そりゃ、争奪戦だな」
「う~ん、ケーキみたいに量作れないからなー。鍋も限りがあるし、20個が限界かな」


 クリスさんに強請られ、毎日の様に作っているデザートは、団員の中でも人気がある。
 本当は全員分作ってあげたいんだが、1人じゃ難しい。
 調理器具だって製菓用は少ないし、オーブンも3台だけ。
厨房も手伝いながらだから、まあ無理。

 だから、ディオン、厨房スタッフ、俺の世話役の人以外は、早い者勝ちとなった。

 今日の世話役は、ダリオらしい。
お世話される事ないんだけどな。
 この1ヶ月、何度も要らないって言ったのに、結局このままだ。


「20か~。いい日に当番きたわ」
「当番ってやめろよ。俺は、そんな問題児じゃねーだろ」
「正気か? ある意味問題児だぞ。
お前に何かあったら、俺らの首が飛ぶ」
「大げさだって」
「バカっ、知らないのか!
お前に言い寄ってた奴、居ただろ? アイツ廃業に追い込まれたんだぞ!」


 マジか。
 ココに通い始めて間もない頃。
食材を納品に来てくれる店の1つに、変なオッサンが居た。
俺を新人スタッフと思ったらしく、まあしつこく誘われた。
「今より良い暮らしをさせてやる」だの「可愛がってやる」だの、毎回言ってきたわけよ。
 はじめは大した事ないから、ディオンに言うなって口止めしてたんだ。
だけど、態度がエスカレートしてきて、見兼ねたクリスさんがチクった。
 ディオンの怒り様は確かにすごかったけど……そうか。店のロゴ見ないと思ったら、潰れてたのか。
 いやぁ、ドンマイ。


「それは良い事じゃないか」
「いや、確かにいい気味だけども!
わりと有名な食品業者だったのに、たった2日で廃業に追い込まれたんだ。
副団長、ヤベーよ」
「有名だったの?
それはヤバイな」
「だろ?」
「ああ。アイツはともかく、従業員は大丈夫かな」


 そんな目で見るなよ。黙るのもやめてくれ。
 従業員達が路頭に迷ってたら、まずいなって思うのは、当然だろ。
 俺がおかしい、みたいな顔すんな。


「副団長もヤバイけど、お前も大概だな」
「どういう意味だ」
「そういう意味だよ」
「……ディオンに言っちゃおうかな」
「バッカっ! マジでやめろ! 洒落になんねーよ。俺を殺したいのか!」


 そんな焦る事ないじゃん。
ディオンは見境ないわけじゃないし。
部下は大事にするって。

ーーと、思ったけど、結構ガチめの説教をされた。30分も。
しばらく、ダリオにディオンの話はしない様にしようと思います。




ーーーー
ーーー


「「「おかえりなさいませ。ディオン様、ルーカス様」」」


 屋敷に帰ると、母さんから手紙が届いていた。
 実は両親以外は、誰も俺の居場所を知らない。村を出る時に頼んだからだ。
 一応、村では旅して回ってる事になってるはずだ。

 開けてみると、延々テオドールについて書かれていた。


『ルーカス元気でやってますか。
 そちらの方に、ご迷惑はおかけしてないでしょうね。
お父さんも心配しています。
 だけど1番の心配事は、テオドールです。
 あの子は、ルーカスが居なくなって、すっかり変わってしまったわ。
笑わなくなったし、ひどく痩せてしまったの。
 毎日毎日、ウチに来ては「ルーカス兄は何処」って泣きながら聞いてくるのよ。
 一度帰って来てくれないかしら。
難しいなら、手紙のやり取りでも良いの。
 テオドールに貴方の居場所を教えて良いかしら。
 もう見てられないわ』



 テオドールが毎日泣く? 俺のせいで痩せた?
有り得ない。だってアイツだぞ。
 だけど、もし本当だったら?
 高校生の記憶はあっても、今は8才だ。
精神的に参ってたら、どうしよう。
 


ーーコンコン


「ルーカス、明日なんだが……」
「ディオンっ」
「どうした、何かあったのか」


 部屋に入って来たディオンに、思わず抱きついた。
 ディオンは優しく背中を撫でながら、話を聞いてくれる。


「俺、1回帰る」
「大丈夫なのか?
テオドールって、あの目つきの悪いガキだろ、ルーカスに執着している」
「目つきは悪くないけど、まあ、うん。
ディオンも会ったよな」
「ああ(会ったどころか、今直ぐ出て行けと攻撃までされた)」
「アイツから離れたくて村を出たから、正直会うのは嫌だ。
でも俺のせいで、そんな状態になったんなら、どうにかしてやらないと。ーーわわっ」


 ディオンの体温を感じて、だいぶ落ち着いた。
もう大丈夫だと、離れようとすると、膝の上に向かい合う様に座らされた。


「オレは危険だと思う。ソイツの演技じゃないと言い切れるか?
アルソン村で見たテオドールこどもは、そんなカワイイ人間に見えなかった」
「それは……」
「今戻ったら、また離れられなくなるんじゃないか?
説得出来る自信はあるのか」


 痛い所を突いてくるな。
言われてみればそうだ。テオドールだったら、それぐらいやりかねない。
 説得も無理だ。出来るなら、そもそも騙すみたいに村を出たりしなかった。


「ディオン、どうすればいい……?」
「そうだな。母親には手紙を返してやれ。外見そとみは自分だとバレない様に。
あと、テオドールとやらにも手紙を書け。
オレが王都から離れた地方で出された様に、偽装する」


 消印を偽装して、居場所を勘違いさせるって事か?


「そんな事、出来るの?」
「ああ、簡単だ。知り合いに出してもらえばいい」
「そっか。じゃあ、そうする。ありがと」


 やっぱりディオンは頼りになる。
俺ときたら、直ぐ取り乱して……情けない。


「お礼はキスで良いぞ」
「俺、男なんだけど」
「知ってる」


 男とキスする趣味なんてないけど、まーいっか。どうせ1回してるし。その、気持ちよかったし。
 俺の感覚、だいぶおかしいな。普通、こんなの真に受けたりしねえのに。


「ーーーちゅっ」


 一瞬触れるだけのキスをして、したり顔で見てやった。
 あ、やば。くるーー…


「足りない。もっと、だ」
「ぁ、んんっ」


 長い長い、溺れる様なキスが始まった。


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