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森の民編
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しおりを挟む指揮権がユーリに移され、生存者の捜査と、埋葬の準備が始まった。
アレッシオとトニーの墓は、ユーリ自らが土を掘り、埋めた。
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
国王、王太子、ユーリの3人は、対応について協議していた。
「どういう事ですっ! エカテリーナの虐殺行為をなかった事にするおつもりですかっ!」
「そうだ。民に余計な混乱が起きかねん。エカテリーナは不治の病を患ったと公表し、秘密裏に南の塔に幽閉する」
「馬鹿なっ」
「陛下。では王室の記録書はどうされるおつもりで」
今回の虐殺は、直ぐさま箝口令が敷かれた。
エカテリーナと王しか知らなかった点と、騎士団の中でも精鋭部隊のみ選抜した事から、外部に漏れる心配も低い。現に、城で働く貴族や、使用人もただの合同演習だと信じ込んでいる。
「記録には、終の森についての一切を記さない」
「陛下っ!」
「……それは、私も賛同しかねます」
「ならぬ。真実を記す歴史書にも、書いてはならぬ事もある。しかし、エカテリーナが罪を犯し、幽閉された事は残す」
「王国の繁栄の為に、王族の罪を隠すのですか。せめて、直系の者には、真実を知らせるべきでは」
国王の下した判断に、流石の王太子も反発した。
表に出る事のない、王家の直系にのみ継承される裏の記録にすら、残さないと言うのだ。当然の反応であろう。
血が滲む程、ユーリは拳を強く握りしめた。
王はそれに気づかないフリをしながら、深く息を吐いた。
「これは決定事項だ。異論は認めぬ。
そして、ここからは私個人として話す」
「父上……」
「私は罪を犯した。エカテリーナを可愛がるばかり、目が曇っておったのだ。国民を守る為の行動だと感動さえした。それでも、私は愚かなエカテリーナが可愛い。殺す事が出来ぬ。民に公表する気概もない」
「……貴方は王の器ではない」
「ユーリ、言葉を慎め」
「よい。ユーリ、お前は正しい。だから、真実はお前が後世に遺せ」
ユーリには、意味が解らなかった。
しかし、兄はその言葉で理解した。何故、ユーリなのかも。
「その髪色……あるのだろう? 歴代の記憶が」
「!?」
「初代王妃には、血縁者に記憶を遺す、遺伝性の能力があった。代々、王妃の髪を継いだ者は皆そうだった。
やがて血は薄れ、発現する事も少なくなったが……。
先祖返りとは、よく言ったものだ。初代様が、私達を戒める為に遣わしてくれたのやもしれん」
「俺で最後になるかも知れないのに、無責任です。
必ず伝えなければ、意味がありません」
「ーー必ず、遺伝する。10年、100年先になるやも知れん。だが、全ては必然だ」
ユーリは、その遺伝故に王家から自由になる事を諦めた。親友を救えず、あまつさえ死を隠した罪を背負いながら、70年後、老衰で旅立ったという。
彼には1人の妻と、3人の子供がいた。子供達の髪色は、3人とも母親と同じ、金髪だった。
ユーリは妻子を深く愛したが、髪色だけは何故か固執していたらしい。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ある日、カヴァリエーレ邸を冒険者パーティーが訪ねた。
「旦那様、冒険者が此方を」
「冒険者?」
マールは、良く知った筆跡を見て、直ぐに手紙の封を切る。
「……近々、後継者を発表する」
「という事はっ!」
「いや、継ぐのはホードンだ。アレッシオは戻って来ない」
「そう、ですか」
「ああ。フフ、どうやら結婚するらしい」
「っ! おめでとうございます」
少し淋し気に目を細め、マールは窓の外を眺めた。
まだアレッシオとホードンが幼い頃。よくこの庭を駆け回り、荒らしたものだ。
マールの目には、幼い息子達の姿が映っているのだろう。閉じられた口は弧を描き、スッキリした様にも見える。
「盛大には……祝ってやれないが、贈り物ぐらいはしてやりたかったな」
「左様でございますね。料理長に今晩は、豪勢にするよう、伝えておきます」
「ああ。アレッシオの好物を頼む」
「かしこまりました」
「今日は我等で祝ってやろう。これからの2人の門出を」
「はい」
********
目元を擦ったせいで、ルーカスの目は少し赤くなっていた。
「おはようございます。ルーカス様」
「んん、おはよう」
「あら? どうされました、少し腫れていらっしゃるようですが」
「んー、強く擦っちゃっただけだから大丈夫」
「そうですか?」
「うん」
何だろ。最近、変な夢ばっか見るな。
王弟殿下と会ってからな気がする。
……なんか関係あんのか? 内容もいまいち覚えてねーしなぁ。
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