俺TUEEEに憧れた凡人は、強者に愛される

豆もち。

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婚約者騒動編

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◇◆◇◆◇◆◇◆


 おかしい。
 おかしすぎる。


「《ルゥ様、どうされましたか》」
「どうもこうも、ディオンだよ!
アイツ急に俺の事避けだしたんだぞ。もう1週間だ。
1週間ずーっと、屋敷で菓子作るか、温室で駄弁るかしかしてない。暇すぎてハゲそう」


 ベッドに横になりながら、俺はユキを腹に乗せてもふりまくる。
 時間が有り余って、毎日1時間ブラッシングしたおかげで、毛並みが素晴らしすぎて大変だ。 
 ふわっふわなのに、サラサラで、ツヤ感もバッチリ。
 ユキは世界一綺麗なホワイトウルフに違いない。


「《ワタシは、嬉しいですよ。ルゥ様と1日中、一緒ですから》」
「ユキぃっ。お前はなんて可愛い奴なんだ!」


 ダリオ、どうしてるかな。王都で唯一の友達なのに。
 エリー様だって、機嫌が悪くなってるに違いない。
なんだかんだ言って、毎日厨房に入ってたからな、俺。
クリスさんも、甘味不足で泣いてるんじゃ……可哀想に。


「なあ、ユキは知らないか。ディオンの奴、最近よそよそしいだろ? メアリーママだって、何かおかしいし」
「《ルゥ様に何か隠しているのは、確かですね。でも避けられていると言うのは、誤解です》」
「誤解? どこが」
「《あの人間。ルゥ様が眠った後に、毎晩様子を見に来てますよ。匂い付けも欠かさず》」


 知らなかった。コワ。匂い付けって何されたんだろ。
頭撫でるとか? ユキは鼻が敏感だから。


「何で教えてくれなかったんだよ」
「《コソコソしてましたし、危険はなさそうでしたので》」
「うーん。コソコソの時点で、アウトじゃないか?」
「《そうなのですか? 次からは、吠えて追い返します》」


 いや、追い返さなくても良いけど。
 夜中にコソコソ会いに来るぐらいなら、普通に話してくれれば良いのに。


「何を隠してるんだろ……」





「お待ち下さいっ! 今奥様は出かけてらっしゃって」
「なら、中で待たせてもらうわ」
「ですがっーー」



 誰か来たのか? すげー慌ててる声がするけど。
 気になって、部屋のドアを少し開けると、使用人達がドタバタと走り回っていた。


「《騒がしいですね》」
「ちょっと、見てくる。ユキは部屋で待ってろ」
「《はい》」


 今日は、俺以外全員出払っているはず。
そんな日に来客なんて。この慌て様も変だし。
 モンフォールでも、断りにくい客って事だよな。


 使用人用の休憩室を覗くと、かなりスカスカだった。
いつもなら、この時間は10人弱居るのに、たった2人だけだ。


「ルッ! ルーカス様、どうされましたか?」
「ごめんね、休憩中に。なんか、皆んな慌しそうだったから、誰が来たのかなーって」
「だっ誰も来てませんよっ! 気のせいでは」
「え、でも」


 さっき、聞き慣れない女の人の声がした。中で待つって言ってたし、応接室に居るんだろ?


「ちょっと聞いてよー。あのご令嬢、すごく性格がわるーーーーいっ?! ルーカス様いらしたんですかっ」
「お邪魔してます」


 肩を回して、ボヤきながら入って来たメイドが、俺を見て青褪めた。
 今さっき、来客はないと言った彼女達も同様だ。


「あっ、私、仕事に戻らなきゃ~」
「今休憩室に来たばっかりなのに?」
「うぐっ」
「大丈夫だよ。貴族の人には見つからない様に、部屋で大人しくするから。どんな人が来たのか、気になっただけなんだ。邪魔してごめん」


 休む為に来たはずなのに、Uターンは無理があるだろ。
 メイドさん達を、困らせたいわけじゃないんだ。
それに、平民の俺が貴族に関わっても、良い事ねーだろうし。

 はあ。なんか居心地が悪い。
 モンフォール家で世話になる様になって、初めてかも知れない。
 むしろ、今まで皆んながどれだけ気を遣ってくれていたかが、よく分かった。
 

「……お待ち下さい。その、私共はルーカス様の安全を」


 俺の態度が、よっぽどしょぼくれて見えたのか、気まずそうに呼び止められた。
 てか、安全ってナニ。
俺って過保護気味なディオン達だけじゃなくて、メイドさん達にまで守られてたの?
 えー。俺の存在って……


「どういうこと?」
「レイラ・シトール嬢の事は、ご存知ですか?」
「さっぱり」


 いや待てよ。どっかで聞いた様な。


「シトール侯爵家のご令嬢です」
「侯爵。モンフォール家より格上じゃないか」
「そうです。さらに言えば、シトール家は侯爵家の中でも、特に力を有しています」


 そんな家のお嬢様が、いったい何の用でココに。
 絶対見つからない様にしよ。不敬罪、一発退場もあり得るな。その場合、人生からの退場になっちまう。
 うわ、寒っ。想像しただけで最悪だ。


「そして。シトール嬢は、ディオン様の婚約者候補でした」
「は?」


 婚約者? ディオンのっ?


「ですが、ディオン様は拒否されました。とはいえ、簡単にお断りする事は出来ません。そんなある日、ディオン様は突然1ヶ月程、姿をくらませられて……」


 おいおい、それってまさか1年前とか言わないよな。


「それで婚約話も有耶無耶になったんです。
戻ってこられたディオン様は、嫁を見つけたと旦那様に仰られて。
後継者はフィン様ですし、好きにしたら良いと奥様が」


 あー、その話知ってるわ。そういう事だったのか。
初めて会った時にフィン兄が、嫁がどうたらと言ってたのも、メイドさん達が驚いてたのも。
 ヤロウ、婚約を潰す為に俺を使いやがったな。


「へー」
「あっ勿論、私共はディオン様とルーカス様を応援しておりますわ!」
「あ、うん、そう」


 ちょ。鼻息荒いよ、メイドさん。 
 いつも話すメイドさんじゃないから、名前も分からないし、距離感が掴めん。


「それなのに先日、ディオン様とシトール嬢の婚約が決まったという噂が流れたんです。
当然、そんな事実はありません」
「だったら、じきにおさまるんじゃない。ほら、人の噂も七十五日って言うし」


 本人達が否定してるだろうから、1ヶ月もしないうちに消えそうだ。
 ディオンって、そういうの嫌いそうだし。


「それが……シトール嬢が、他の令嬢達に事実だと言いふらしている様で」
「えっ、でも違うんでしょ」
「はい。旦那様も否定されてらっしゃいます」
「マジか。待って、ちなみに今来てるお客さんーー」
「シトール嬢です」


 ディオーン!!
早く帰って来てくれー!
確実に面倒事だ。もはや押しかけ女房になる気なんじゃっ。
 大丈夫かな。平民ダメな人だったら、どうしよう。

 いやいや、問題はそこじゃねぇ。
 なし崩しに俺達の関係は続いてるじゃねーかっ!
お互い嫌悪感なかったし、性欲だってそりゃ溜まるよ。男だもの。だいたいディオンが上手すぎるのが悪い。
 完全に俺の立場マズイよな。ぜってぇ、誤解される。
違うんです。セフレっていうか、特に意味はないっていうか。
 とにかく、誤解なんです。侯爵家のお嬢様。
だから殺さないで下さい。


「どっどっ、どうしよう」
「今はドビーさんが対応されてます。お帰りになるまでは、お部屋に……いえ、ココに居て下さい!
侯爵家とは言え、勝手に屋敷を動き回る様な真似はされないと思いますが、念の為です。使用人のテリトリーには、絶対入って来ないはずですからっ」


 なるほど。部屋より安全な気がしてきた。


「分かった。ありがとう。
ーーあ、ユキが部屋で待ってるんだけど」
「私が連れて参ります。ですから動かないで下さい。
私、シトール嬢より、ルーカス様の方がお似合いだと思うんです!」


 ん? さっきから、ちょいちょい何言ってんだ、この人。

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