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婚約者騒動編
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おかしい。
おかしすぎる。
「《ルゥ様、どうされましたか》」
「どうもこうも、ディオンだよ!
アイツ急に俺の事避けだしたんだぞ。もう1週間だ。
1週間ずーっと、屋敷で菓子作るか、温室で駄弁るかしかしてない。暇すぎてハゲそう」
ベッドに横になりながら、俺はユキを腹に乗せてもふりまくる。
時間が有り余って、毎日1時間ブラッシングしたおかげで、毛並みが素晴らしすぎて大変だ。
ふわっふわなのに、サラサラで、ツヤ感もバッチリ。
ユキは世界一綺麗なホワイトウルフに違いない。
「《ワタシは、嬉しいですよ。ルゥ様と1日中、一緒ですから》」
「ユキぃっ。お前はなんて可愛い奴なんだ!」
ダリオ、どうしてるかな。王都で唯一の友達なのに。
エリー様だって、機嫌が悪くなってるに違いない。
なんだかんだ言って、毎日厨房に入ってたからな、俺。
クリスさんも、甘味不足で泣いてるんじゃ……可哀想に。
「なあ、ユキは知らないか。ディオンの奴、最近よそよそしいだろ? メアリーママだって、何かおかしいし」
「《ルゥ様に何か隠しているのは、確かですね。でも避けられていると言うのは、誤解です》」
「誤解? どこが」
「《あの人間。ルゥ様が眠った後に、毎晩様子を見に来てますよ。匂い付けも欠かさず》」
知らなかった。コワ。匂い付けって何されたんだろ。
頭撫でるとか? ユキは鼻が敏感だから。
「何で教えてくれなかったんだよ」
「《コソコソしてましたし、危険はなさそうでしたので》」
「うーん。コソコソの時点で、アウトじゃないか?」
「《そうなのですか? 次からは、吠えて追い返します》」
いや、追い返さなくても良いけど。
夜中にコソコソ会いに来るぐらいなら、普通に話してくれれば良いのに。
「何を隠してるんだろ……」
「お待ち下さいっ! 今奥様は出かけてらっしゃって」
「なら、中で待たせてもらうわ」
「ですがっーー」
誰か来たのか? すげー慌ててる声がするけど。
気になって、部屋のドアを少し開けると、使用人達がドタバタと走り回っていた。
「《騒がしいですね》」
「ちょっと、見てくる。ユキは部屋で待ってろ」
「《はい》」
今日は、俺以外全員出払っているはず。
そんな日に来客なんて。この慌て様も変だし。
モンフォールでも、断りにくい客って事だよな。
使用人用の休憩室を覗くと、かなりスカスカだった。
いつもなら、この時間は10人弱居るのに、たった2人だけだ。
「ルッ! ルーカス様、どうされましたか?」
「ごめんね、休憩中に。なんか、皆んな慌しそうだったから、誰が来たのかなーって」
「だっ誰も来てませんよっ! 気のせいでは」
「え、でも」
さっき、聞き慣れない女の人の声がした。中で待つって言ってたし、応接室に居るんだろ?
「ちょっと聞いてよー。あのご令嬢、すごく性格がわるーーーーいっ?! ルーカス様いらしたんですかっ」
「お邪魔してます」
肩を回して、ボヤきながら入って来たメイドが、俺を見て青褪めた。
今さっき、来客はないと言った彼女達も同様だ。
「あっ、私、仕事に戻らなきゃ~」
「今休憩室に来たばっかりなのに?」
「うぐっ」
「大丈夫だよ。貴族の人には見つからない様に、部屋で大人しくするから。どんな人が来たのか、気になっただけなんだ。邪魔してごめん」
休む為に来たはずなのに、Uターンは無理があるだろ。
メイドさん達を、困らせたいわけじゃないんだ。
それに、平民の俺が貴族に関わっても、良い事ねーだろうし。
はあ。なんか居心地が悪い。
モンフォール家で世話になる様になって、初めてかも知れない。
むしろ、今まで皆んながどれだけ気を遣ってくれていたかが、よく分かった。
「……お待ち下さい。その、私共はルーカス様の安全を」
俺の態度が、よっぽどしょぼくれて見えたのか、気まずそうに呼び止められた。
てか、安全ってナニ。
俺って過保護気味なディオン達だけじゃなくて、メイドさん達にまで守られてたの?
えー。俺の存在って……
「どういうこと?」
「レイラ・シトール嬢の事は、ご存知ですか?」
「さっぱり」
いや待てよ。どっかで聞いた様な。
「シトール侯爵家のご令嬢です」
「侯爵。モンフォール家より格上じゃないか」
「そうです。さらに言えば、シトール家は侯爵家の中でも、特に力を有しています」
そんな家のお嬢様が、いったい何の用でココに。
絶対見つからない様にしよ。不敬罪、一発退場もあり得るな。その場合、人生からの退場になっちまう。
うわ、寒っ。想像しただけで最悪だ。
「そして。シトール嬢は、ディオン様の婚約者候補でした」
「は?」
婚約者? ディオンのっ?
「ですが、ディオン様は拒否されました。とはいえ、簡単にお断りする事は出来ません。そんなある日、ディオン様は突然1ヶ月程、姿をくらませられて……」
おいおい、それってまさか1年前とか言わないよな。
「それで婚約話も有耶無耶になったんです。
戻ってこられたディオン様は、嫁を見つけたと旦那様に仰られて。
後継者はフィン様ですし、好きにしたら良いと奥様が」
あー、その話知ってるわ。そういう事だったのか。
初めて会った時にフィン兄が、嫁がどうたらと言ってたのも、メイドさん達が驚いてたのも。
ヤロウ、婚約を潰す為に俺を使いやがったな。
「へー」
「あっ勿論、私共はディオン様とルーカス様を応援しておりますわ!」
「あ、うん、そう」
ちょ。鼻息荒いよ、メイドさん。
いつも話すメイドさんじゃないから、名前も分からないし、距離感が掴めん。
「それなのに先日、ディオン様とシトール嬢の婚約が決まったという噂が流れたんです。
当然、そんな事実はありません」
「だったら、直におさまるんじゃない。ほら、人の噂も七十五日って言うし」
本人達が否定してるだろうから、1ヶ月もしないうちに消えそうだ。
ディオンって、そういうの嫌いそうだし。
「それが……シトール嬢が、他の令嬢達に事実だと言いふらしている様で」
「えっ、でも違うんでしょ」
「はい。旦那様も否定されてらっしゃいます」
「マジか。待って、ちなみに今来てるお客さんーー」
「シトール嬢です」
ディオーン!!
早く帰って来てくれー!
確実に面倒事だ。もはや押しかけ女房になる気なんじゃっ。
大丈夫かな。平民ダメな人だったら、どうしよう。
いやいや、問題はそこじゃねぇ。
なし崩しに俺達の関係は続いてるじゃねーかっ!
お互い嫌悪感なかったし、性欲だってそりゃ溜まるよ。男だもの。だいたいディオンが上手すぎるのが悪い。
完全に俺の立場マズイよな。ぜってぇ、誤解される。
違うんです。セフレっていうか、特に意味はないっていうか。
とにかく、誤解なんです。侯爵家のお嬢様。
だから殺さないで下さい。
「どっどっ、どうしよう」
「今はドビーさんが対応されてます。お帰りになるまでは、お部屋に……いえ、ココに居て下さい!
侯爵家とは言え、勝手に屋敷を動き回る様な真似はされないと思いますが、念の為です。使用人のテリトリーには、絶対入って来ないはずですからっ」
なるほど。部屋より安全な気がしてきた。
「分かった。ありがとう。
ーーあ、ユキが部屋で待ってるんだけど」
「私が連れて参ります。ですから動かないで下さい。
私、シトール嬢より、ルーカス様の方がお似合いだと思うんです!」
ん? さっきから、ちょいちょい何言ってんだ、この人。
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