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婚約者騒動編
連絡網の罠
しおりを挟む夜、ディオンは全てを話してくれた。
「じゃー、何。俺に心配かけない様に、皆んなで隠してたの? 外に出なかったのも、狙われてるかも知れないから」
「ああ」
「嘘だろ。子供とか女性ならまだしも、俺男だぞ?
何で、お嬢様に恨まれなきゃなんねーんだよ」
そりゃ、まあ、その。アッチの方は、しちゃってるわけだけど。それもバレてんのか?
「何でって、本気で言ってるのか」
「え」
「はあ~。いや、いい。シトール嬢は分かってるんだ。オレがどれだけルーカスを大切にしているか」
「おう、ありがと。照れるな」
心配してくれるのは、嬉しい。けど、隠されるのは嫌だ。屋敷にすし詰め状態も辛い。
思っていた事を話すと、ディオンは納得はしてないが、外出は許可してくれた。
「いいか、遊びに行く時は、必ずオレか兄貴と一緒だ。それ以外は、官舎で我慢しろ」
「十分だ! いつもみたいに、ディオンの仕事部屋と食堂を行き来すれば良いんだろ?」
「ああ。だが、なるべくオレと一緒にいて欲しい」
騎士団の官舎でまで、侵入するとは思えないけど。
あの変態なら、出来るかも知れねーが。
だが、俺はこの時の甘い考えを、直ぐ後悔する事になる。
ーーーー
ーーー
「ルーカス、そろそろ副団長のとこ行くぞー」
「おう」
元通りの生活になって、早2週間。
警戒していた、シトール家からの嫌がらせもない。
やっぱり、ディオンの思い過ごしじゃないのかな。
まあ、縁談の申し込みはあったらしいけど。
パパさんが、正式に断ったらしいし。
すごいよな。格上の家相手に。俺が言うのも変だけど、よく無事だと思う。
「ディオン大丈夫かな。シトール侯爵家からの縁談なんて、名誉な事なんだろ? それをあっさり」
「うーん。たぶん、モンフォールが特殊だからじゃないか。領地ったって、作物や資源がとれる訳でもねーし。近衛騎士団副団長に、第1騎士団長、第3騎士副団長だろ。下手に資金源がない分、嫌がらせが出来ないんだと思う」
あー、なる。
貴族は貴族だけど、俺達平民が思う様な貴族とは、生計の立て方が違うんだった。
完全に国からの給与だけだからな。
商売も、領地運営もしてなきゃ、金の動きを止めたり、商売敵に手を回したりも出来ねーもんな。
道理で無傷なわけだ。
「でも、社交界とかじゃ、やっぱ微妙なのかも」
「それは仕方ないさ。相手が悪すぎる。シトール嬢と言えば、社交界の華らしいじゃん? 副団長に、そういう伝手があるとは思えない」
「だよな」
「ああ。まっ、ルーカスが気にしても意味ねーよ。
そんな事気にするより、可愛く抱きつく方が喜ぶと思うぞ」
ダリオ、お前ディオンを何だと思ってるんだ。
失礼だぞ。上司だし、貴族だよ、一応。
「信じてねーな? 俺が伝授してやるよ。
2人っきりになったら『ねぇ、ディオン……ぎゅって、して?』コレで完璧だ。上目遣いを忘れるな。して、の時に、首も傾げるんだ」
キモい。純粋に友達が気持ち悪い。
レクチャーしようと実践したんだろうけど、ねーわ。
ムキムキな平凡顔が、ぶりっ子やるのは、キツい。吐きそうなんだけど、俺。
「おえ」
「よーし、ルーカス。副団長に『ルーカスがベロチューしてって、言ってました』って、言ってくるわ」
「はあっ?」
「俺の善意を無碍にした罰だ。あーショック。可哀想な俺ぇ」
うぜぇ。なんちゅー奴だ。
友達でいるの、考え直そうかな。
「ダリオ、マジでキモい」
「ああ゛?
あ、そーいや、ユキは? 副団長の所か」
「たぶん。もしくは訓練場で遊んでもらってるかだな」
「ああ、アレか」
ユキは、たまに訓練場で団員に混ざって、遊んでるらしい。クリスさんが、練習にちょうど良いって、許可してくれたんだ。
傷つけない様に、手加減されてるみたいだけど、毛並みがなー。砂埃で汚れてゴワつくのが、ちょっと。
そうこうしてるうちに、ディオンの部屋の前に着いた。
ーーコンコン
「副団長、ルーカス殿をお連れしました」
ーーシーン
あれ。席を外してるのかな。
「居ないみたいだね。中入っちゃおうぜ」
「お前は良いだろうけど、俺は……」
「大丈夫だよ。ダリオは今日の俺当番なんだから」
「まあ、1人にするよりマシか」
特にする事もないし、休憩でもするか。
たしかこの辺に、クッキーが。お、あった、あった。
「ダリオお湯ちょーだい。お茶淹れるから」
「おい、勝手に触ったら怒られるぞ」
茶器やクッキーの缶を棚から出していると、あきれた顔で見られた。
失礼な。これは全部、ディオンが俺用に用意してくれたヤツだっつーの。
「平気。自由に使って良いって言われてるから」
「あーそう」
「おう。ほら、お湯。このティーポットに注いで」
「へーへー」
ダリオは面倒そうに、魔法で作ったお湯を入れた。
細かい温度調節は出来ないらしいけど、熱湯出せるなら、十分だよな。はー、便利。
「蒸らすから、先クッキー食っていいぞ」
「いただきまーす」
ーーコンコン
「はーい」
「失礼します。ダリオ、クリス卿がお呼びだ。ルーカス殿の警護は僕が代わる」
「え、クリス卿が?
ルーカスの当番だって知ってるはずなのに、何で」
「急ぎだ。直ぐに第2会議室へ向かってくれ」
誰だろ。初めて見る顔だな。
ダリオの同期か?
「行って来なよ。クリスさん待たせたら悪いし」
「だけど……」
心配症か、お前は。クリスさんが、こうやって代わりの人をよこしてくれたんだ。何の問題もないだろ。
なんなら、ダリオより腕が立ちそうだぞ。この人。
「副団長が戻られるまで、僕がお守りするから安心しろ」
「そ、そうか? じゃー、頼んだ。ルーカス、あとでな」
「おう。クリスさんに宜しく~」
このお茶どうしよ。まだカップに注いでないから、この人に出したっていいよな?
「あ、お茶いかがですか?」
「頂きます」
「座ってて下さいね、えっと~」
「ポールです。ルーカス殿」
「宜しくお願いします」
「ええ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「クリス卿、ダリオですが……え、副団長?」
第2会議室の扉を開けて、ダリオは驚いた。
呼び出したクリスだけでなく、ディオンまで居たからだ。
「ダリオ、何故お前がここに居る。ルーカスはどうした」
「はっ? え、私は、クリス卿に呼ばれて此方に」
「私は呼んでいない。君は今日、ルーカス君の当番のはずだろう」
「えっ、ですが、確かにポールが……っ、ルーカス!」
三者三様に困惑する中、ダリオは来た道を急いで走り出した。
ディオンとクリスも、彼の後を追う。
「副団長、これってまさか」
「……裏切り者が紛れ込んでいた様だ。直ぐにポールを探せ。オレはダリオを追う」
「ハッ」
ディオンとダリオ、クリスは二手に別れた。
「ルーカスっ、無事でいてくれっ」
ーーーー
ーーー
「ポールさん、何処に行くんですか?」
「副団長の所です。ルーカス殿も副団長の訓練姿、見てみたくありませんか」
「それは、興味ありますね! いっつも書類と睨めっこだし」
「ハハ。副団長は忙しいですからね。さっ、此方です」
「ん? この先って、裏門に出ちゃうんじゃ」
「いいんですよ。それで合ってますから」
ポールは人の良さそうな顔を浮かべ、ルーカスの首に手刀を落とした。
「ポールさん? ーーーーゔっ」
「おやすみなさい。ルーカス殿」
ルーカスの意識は、そこで途切れた。
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