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婚約者騒動編
精霊の大行進
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「《助けてやろうか。同胞よ》」
この声は何処から。
入口から射し込んだ光だけじゃ、よく見えない。
それに、ドアの外も建物の中っぽい。
ならココは、地下室だろうか。
「《上だ》」
「上?」
「何か言ったかしら」
「あっ。いえ、なんでも!」
お嬢様達の視線を気にしながら、そっと見上げる。
……何だ? 淡く光る雲谷みたいなヤツが漂ってる。
精霊にしては、ぼやけ過ぎだよな。つーちゃん達は、もっと光ってた。
それに、今ならちゃんと目視出来るはずだ。
「《む。おぬし、人間か? 同胞の匂いがしたと思ったんだが》」
いや知らねーよ。だが助けてくれ!
けど、声は出せねぇし。どうしたら良いんだ。
とりあえず、上をガン見したまま、コクコク頷いてみる。
「……お前、さっきから大丈夫? 気でも触れたの。上を見たり、首を振ったり。気色悪い」
「(やばっ) あ、あー。ココ何処かな、と」
「ノンキなものね。まあ、少し時間をあげるわ。行き先でも考えておくのね」
行っちゃうのかよ! せめてヒントくらいっ。
「ポール、貴方が見張ってなさい。もし変な真似をしたら、もう二度と会えないわよ。栗毛の彼女と」
「分かってます」
栗毛の彼女? もしかして、ポールさんは脅されているのか。女の人が人質にとられているのかも。
その人の安全さえ確保出来れば、助けてくれるんじゃないか?
ーーバタン
お嬢様ともう1人の男は、俺とポールさんを残し出て行った。
「ポールさん……」
「っ、ごめんね。ルーカス殿には本当に何と詫びればいいのか」
俺が名前を呼ぶと、ビクッと身体を大きく反応させた。謝るポールさんの表情は、暗くて分からない。
ただ、なんとなく。オレより追い詰められている様に聞こえた。
「どうして、こんな事をしたんです。あの2人とは、どういう関係なんですか」
「それは」
「女性の方は、レイラ・シトールですよね」
「知ってたのか」
やっぱり、あのお嬢様が、シトール嬢本人。
ずいぶん危険な橋を渡るんだな。侯爵家の令嬢なのに。
平民相手だったら、罪に問われないとでも思ってるのか?
ディオンがそんなの赦すはずがない。それとも、モンフォール家に圧力をかけるつもりとか。
「俺とポールさんが同時に消えたんですよ。ダリオが直ぐにディオンに知らせたはずです。逃げられないと思います」
「ーーだろうな。門を出る時も検問の準備をしてたから」
「え」
「それでも、運は僕の味方をした。門の警備担当は同期で、僕が抜け出せるよう、事前に手を回しておいたんだ。だから、僕とルーカス殿の名前が通達される前に、簡単に抜けられたよ」
そんなに早くバレてたのか。なら、もうディオンは俺を探してくれてる、よな。
どうにか居場所を伝えられたら。
「理由になってません。どうして、騎士である貴方が、誘拐なんて。犯罪だって、分かってますよね」
「僕だって、やりたくてやったんじゃない!
こうするしか……こうするしか、方法がなかったんだっ!」
何で俺より、辛そうな顔すんだよ。逆だろ。
ズルいわ、そんなん。
「人質でもとられてるんですか? さっき、シトール嬢に言われてましたよね」
「そうだよ。人質ではないけどね」
「じゃあ、何なんですか」
「……恋人がグレモンド王国に留学してるんだ」
それと何の関係があるんだよ。
隣国だけど大きくもないし、特異点だってない。建国して50年も経ってない新興国ではあるが。
「だから?」
「彼女は男爵家の子なんだ。とても頭が良くてね。グレモンドのアカデミーから招待されたんだ。だけど、留学先で公爵家の問題児に見染められてしまった」
「フラれたんですか」
「違う。彼女と僕は、結婚を誓った仲だ。それを、公子が強引に関係を迫って来やがった。彼女が拒否したら、男爵家を潰して、国際問題にするって」
なんだ、そのボンクラは。クソ野郎だな。
とは言え、腐っても公爵家だ。王族の次に高い地位の身分には、違いない。しかも他国の。
向こうに、問題をでっち上げられたら、国はきっと何もしてくれない。穏便に済ませるには、隣国の公爵を無視なんて出来ないだろうから。
「シトール嬢が、こっそり逃してやるとでも言ったんですか」
「いいや。シトール侯爵家とその公爵家は、貿易で繋がりがあるらしい。どっちにしろ、男爵家の彼女は愛人にしかなれないからな。シトール家が、寄子に彼女を紹介するつもりだとでも言えば、手を引くはずだ」
遊び相手の為に、仕事相手の機嫌を損ねたくないだろうからな。いくらボンクラ公子と言えど。
確かに、これはシトール家でないと解決出来ない問題だ。
パパさんが繋がりを持ってたら、ディオンでも何とか出来るだろうけど。
まあ、ポールさんが、ディオンに相談しなかった時点で、結果は明らかだが。
「それしか、方法はないんですか……」
「分からない。けど、時間がない。だから、シトール嬢に頼るしかないんだよ」
「ポールさんの恋人には、同情します」
俺の言葉に、俯いていたポールさんが、パッと顔を上げた。
違うよ。いくら理由があっても、俺は他人の為に自分を犠牲にはしない。
「ルーカス殿っ」
「勘違いしないで下さい。だからって、大人しく言う事を聞く気はありません。自分の方が可愛いですから」
「……そうだよね。うん、本当にごめん」
「悪いと思うなら、ココから逃がして下さい」
「それは出来ない。僕は彼女が1番大切だから」
ダメか。だったら、自力で脱出するしかない。
「おい、聞こえてるか! 助けて欲しい。力を貸してくれ」
「何をーー」
突然、上に向かって叫んだ俺を、ポールさんは戸惑いながら見る。
止められる前に、さっきの声の主とコンタクトを済ませねぇとっ。
「《聞こえている。しかし気が変わった。同胞かと思えば、ただの人間とはな。我が手を貸す必要はない》」
マジかよ。勘弁してくれ。アンタだけが頼りなのに。
「どうしたら、力を貸してくれるんだ? 頼むっ。一瞬でも、俺を仲間と勘違いしたんだろ。何かの縁だと思って!」
「ルーカス殿? まさか、誰かが紛れ込んでいるのか?」
ポールさんは、潜んでいる人がいないか、探し始めた。彼には、この雲谷が見えないらしい。
「なあって!」
「《煩わしいな。ならば、我に何を提供出来る》」
「どんな物の事を言ってるんだ」
こういう場合のセオリーは、マナとかだよな。
……俺には無理だ。
なら、異世界の知識とか?
知識欲がある様には見えない。あまり良い手じゃないな。ポールさんも居るし。
「《さてな。我も思いつかん。とりあえず申してみよ》」
「俺のマナじゃダメか。その、少ないけど」
「《おぬし、自分のマナ量を知らぬのか。むしろ、我と普通に契約を結べば、死ぬぞ》」
え゛。
そんな危険な存在なの。俺が助けを求めた相手って。
え、じゃあ、どうやって助ける気だったわけ。
契約したら死ぬんだろ?
「助ける気はあったんだよな」
「《初めはな》」
「マナが足りないのにか」
「《言っただろう。普通に契約を結べば、と。我が直々に助けてやろうと思ったのだ。生まれたての同胞だと思ったからな》」
「そんなあ。ーーなら、髪の毛とか」
魔法の代償に身体の一部とかは、よくある話だ。外国の王道ファンタジー小説は、大体そうだった。たぶん。
目とか手足は勇気がないけど。無理だろうか。
「《ゴミだな》」
「……はい。あとは何も。料理ぐらいしか取り柄ないし。後払いじゃダメか? 何か考えるから」
「《ふざけておるのか。おぬし》」
「仕方ないだろ。チート能力なんて、そうそう持ってねぇよ、普通。田舎村の人間はそういうもんなんだ」
テオドールみたいな奴が、そうそう居てたまるかっての。
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