異世界に飛ばされたBA(男)の受難

豆もち。

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BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる

店を持つ……?

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 エリックさんが、あんまり慌てるもんだから碌に説明も出来ず帰って来てしまった。


「おかえりなさいませ。紅茶をお淹れしましょうか?」
「ん」
「(ボーッとされているな。甘い物も用意しておこう)」



 王都に出店=貴族、エリックさんはこう考えたわけだろ。
もしかして報酬もらい過ぎなんじゃ……。
 爺さんは、使ってない持ち家を貸すだけだと言ってたが、実際に賃貸契約したらとんでもない額になるって事か?
 なぁ~にが正当な対価だっ。ぼったくってるじゃねえか! 
俺が!

 けどまあ、手に職をつけるってのは正直願ってもない。
露店みたいなヤツの費用を援助してもらう、とかはどうだろうか。

 うーん。


「トキトゥ様、宰相閣下がお見えです」
「え、まじ?」


 って、もう居るし!
ドア開けて入って来てるじゃん。
 いや、良いんだよ? 偉い人なわけだし。
でもプライバシーってやつが……この人達には関係ないか。諦めよう。


「突然すまないな、トキトゥ」
「いえいえ、どうされました?」


 対面で座ると、宰相さんの眉間に寄ったシワの線がくっきり見えた。
ーーなんか俺しましたっけ?


「トキトゥ」
「はいっ!」
「ウイリアム殿から話は聞いた」
「はい、申し訳ありま、せーー、ウイリアム殿?」


 爺さんは何を伝えたんだ?


「ああ。店を出すそうだな」
「あっ、それか。
まーはい。一応報酬と言う事で。
いつまでも城でお世話になる訳にはいかないですし」


 持ち家は1階を店舗。2階を住まいにすれば良いと言ってくれたけど、露店にするなら予定は変わってくる。
 ある程度稼いで、自立する資金を作って王子から住む所を提供してもらえば良い。
時間はかかるが、元々はそのつもりだったんだ。問題はない。


「……店を持つ事には賛成する。
しかしここから通いなさい」
「でも……」
「ハァ~」


 うわ、めっちゃデカイため息。
何かマズかった?


「まだ自立するには準備が足りない。
そもそも経営学も経済学も授業に含まれていないだろう。どうやって切り盛りしていく気だ」
「それは爺さ、団長が助っ人をつけてくれるって」
「トキトゥ」
「はい」


 アホな子を見る目で見られているんだが。
甘過ぎるって思ってるんだろうけど、爺さんがだっこにおんぶ状態でやってくれるから、俺はそんなに心配はしていない。


「たしかに店は回っていくだろうし、恐らく売れる。だが私が問題視しているのは、そこではない」
「えっと?」
「そもそも買い物をした事があるのか?」


ーーーーっ!??!?!?

 そうだ、この世界に来て1度も買い物をした事がないっ!!

 
「通貨の単位は分かるのか?」


 知らん。ヤバくね?
 今まで全て城で用意してもらって、至れり尽くせりだったから、買い物に行こうという発想がそもそもなかった。
 外出だってエリックさん家だけで、後は部屋で過ごすか日向子ちゃんの離宮に遊びに行くくらいだ。
 俺はもしかして今、とんでもない箱入り息子になってるんじゃないか?
 通貨の単位に疑問さえ持たないなんてヤバ過ぎる。
王子より箱入りだ。
 冷や汗が止まらない。


「さっ宰相様」
「やはりな。
必要なかったから無理もない。
後回しにしてしまった私にも責任がある。
だが無理なのは分かっただろう」
「はい」


 自分の馬鹿さ加減に驚きだ。
「はじめてのおつ◯い」の4~5歳児以下だ、
俺は。
 考えただけでゾッとするな。
市場の価値観も分からないし、俺の知る庶民はエリックさんだけだが、彼は役所勤めで一般人からすれば、エリートらしい。
 つまり、生活水準も高いんだろう。
あの家だって市民街よりは貴族街に近い場所らしいし。
 彼等を真似て生活してたら、あっという間に家計は火の車だ。


「(顔が青いな。ショックを受けたのか。異世界から突然連れて来られて、まだ3ヶ月。触れる機会がなかった通貨まで頭が回らないのは当然だ) それともう1つ。貴族向けの店にする気はないのだろう? 価格は考えているのか」
「あ、はい。庶民にも手を伸ばしやすい価格にしようと思ってます」
「ふむ。忠告しよう。考え直しなさい」
「何故ですか?」
「ウイリアム殿から、店舗の場所は聞いているか?」
「はい。オイルや軟膏、フレグランスなんかを取り扱っている店の並びだって」
「そうだ。トキトゥが言う“化粧品”を販売する店がひしめき合った一角だ」


 良い事じゃないのか?
食品売り場のブースで売るのは難しいと思うけど。


「ちなみに、そこの一角は庶民には少し敷居が高い。もちろん、出せない額ではないから庶民にも人気はあるが、通うと言うよりは憧れの方が強いだろう」


 マジか。
 マツ◯ヨみたいなイメージかと思ったら、デパコスか。
 それは所謂、一等地に近いんじゃないだろうか。
 ジジイ、やってくれたな。露店だ。やっぱ露店をお願いしよう。


「……つまり?」
「そんな場所で、自店より上質な品を格安で売る店が現れてみろ。
一斉に各商会、店が潰しにかかるだろうな」


 デスヨネー!
 露店だ! 俺にはそれしか残されていない!


「なる、ほど」
「価格は同等かそれ以上にしなさい。トキトゥの品には、その価値がある。
恐らく同等でも相当な恨みを買うだろうが、そこはおいおい考えれば良い」
「や、相当な恨みを買ったら干されるんじゃ」
「その為のウイリアム殿だろ。
彼を盾にすれば良い。それぐらいしか役に立たんだろうからな」


 今すごい事言わなかった?
 え。宰相さん、ここにきて毒舌?
毒舌オカン?


「(不安だと顔に書いてあるな。やはり私が助けてやるべきか。ウイリアム殿は器用ではないから、頼りなかろう) 講師を増やしてやると言いたい所だが、あいにく庶民向けの商会に知り合いが居ない」


 そりゃあね。宰相さんの商売相手は対国家でしょうよ。
まず土俵が違う。


「だから商業ギルドに依頼して、経理を1人雇うと良い。あわよくば引き抜け」
「はあ」
「安心しろ。私が一筆書いてやる。ギルドも下手な事は出来まい」
「良いんですか?」
「ああ。本当は一緒に行ってやりたい所だが、厳しいからな。それで我慢してくれ」


 やっぱり宰相さんは、オカンだ!
 ありがとうオカン!


「とんでもない!
ありがとうございます!」


 立ち上がって、バッと頭を下げると何故か撫でられた。
 いや、撫でてもらう為に頭を出したんじゃないんですけど。


「ウイリアム殿から店の間取りと詳細を紙に書いてもらうと良い。
それを必ず持って行く様に」
「はいっ」
「馬車は私のを貸そう」
「え゛」


 それは間違いなく目立つ。アンタ公爵家だろ。


「商業ギルドに舐められては困るからな。
それに一筆書いても信じてもらえない可能性もある。
ギルドの前に私の馬車を停めれば、本物であると言う証明になるだろう」


 たしかに。まさか俺みたいな一般人が公爵かつ宰相の手紙を持ってたら、まず偽物だと疑うよな。


「すみません、お願いします」
「気にするな。大した事はない」


 オカン宰相っっっ。


「あ、宰相様もスキンケアアイテム、試しにいかがですか?」
「……」


 ん? また眉間にシワが。
余計な事言ったか?


「宰相様?」
「っあ、ああ。すまない。そうだな、頼もう。
あー、ところでトキトゥ」
「何でしょう?」
「ごほん。
ウイリアム殿の事をウイリアム爺さん、と呼んでいるそうだな」


 ジジイちくったな。


「はい。やっぱマズかったですか?」
「まあマズイと言えばマズイが、本人が喜んでいるから問題ない」
「良かった~」
「私の事もいつまでも宰相様では、呼び難いのではないか?」
「はい?」
「爺と言う程ではないが、父ぐらいであろうか」


 全く話が読めないんだが。
 まさか爺さん呼びが羨ましかったなんて言わないよな?


「え~っと?」
「私の事はハズバンド……いや、ジークさんでどうだ?」
「どうだって、え?」
「異世界で家族もおらず寂しいだろう。
望むなら、父上でも構わない。
幸い、私に息子はいない」 


 いやいやいや、何言ってんの。この人。


「宰相様? (頭大丈夫ですか)」
「何だ。ウイリアム殿は呼べて、私は呼びたくないと言うのか」


 圧がヤバイ。
 この人はどこに対抗心燃やしてんだ?
あと、アンタは父親じゃなくて、母親だろ。
……ん? 違うな。考える事はそこじゃないな。
 なんか俺、日に日にアホになってる気がする。


「そういうわけでは……」
「では、どういうわけだ」
「いやー、宰相様は宰相様なんで」
「それは役職にすぎない。
私の名はジーク・ハズバンドだ」
「あー、はい、そうですね」
「ほら呼んでみろ。
ジークが嫌なら父上でも良いと言っているのだぞ?」


 ズレてるのは俺じゃなくて、絶対アンタの方だと思うけどね。
 不敬にも程があるよ。周りに何て言われるか。
 宰相は政のNo,2だろうがっ!
 余所者の若造が呼べるか、ボケェッ!


「……では、ジークさんで」
「そうか」
「(何でちょっと残念そうなんだよ) これで不敬罪とかにされませんよね?」
「当たり前だろう。私が許したのだから」
「出来れば今まで通りがーーーーヒッ、何でもないです」
「そうか」


 こえーよ。呼び方ぐらいで執着しないでもらいたい。


「私はこれからレンと呼ばせてもらう」
「ご自由にどうぞ」
「ああ」


 何か得意気だな、オカン宰相。
 そんなに爺さんをライバル視しているのか。

 
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