異世界に飛ばされたBA(男)の受難

豆もち。

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BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる






「あら、どなたかいらっしゃっていたんですか?」
「あーうん、まあちょっとね」


 オカン宰相改め、ジークさんが帰ってしばらく経った頃、ミレーさんとトリスが夕食を運んで来てくれた。
 テーブルに置かれたままの2つのティーカップを見て、来客に気づいたんだろう。


「言ってくだされば下げに来ましたのに。
オスカーさんはどうされたんです?」
「用事があったみたいで、お出かけ中」
「まあ! 尚更呼んで下さらないと」
「ごめん、ごめん」


 たいていは俺の側に居てくれるオスカー君だけど、オカンに用があったらしく、一緒に出て行った。
 家の事かな? オカンの計らいで伯爵家から出向してきてくれてるわけだし。
 俺の世話はもう嫌だとかだったら、どうしよう。見捨てないで欲しい。


「トキトゥ様ー!
見て下さい。このほっぺ! もっちもちになったんですよー!」
「こら、トリス。失礼ですよ」


 ミレーさんに嗜められているトリスは、1ヶ月ちょっと前に決まった、専属メイドの最年少だ。
たしかまだ15歳だったか。
 その若さで住み込みで働くだなんて、泣ける。
 仕事は出来るし、とにかく元気が良い。
 王宮の使用人達の中で1番フランクに接してくれる逸材だ。
どうかそのままでいて欲しい。
 妹がいたらこんな感じかな、なんて最近妄想するわけだけど、弟しかいなかったから分からない。


「ミレーさん、俺は気にしてないから大丈夫だよ。
それより、本当にモチモチだな~」
「うっ、いひゃいですぅ」
「あはは」


 見て見てと頬を突き出してくるから、つんつんと人差し指でつついたら拗ねる様な顔で睨まれた。
 うん、可愛いぞトリス。
お兄さんが新しい化粧品を作ってやるからな。
 にしても、良い弾力だ。若いってのもあるが、広告モデルになってもらいたいぐらいだ。


「なくなる前に言いなよ、作るから」
「うへへ~、トキトゥ様大好きですっ」
「はは、現金なヤツめ」
「トリスったら、まったく……」
「ミレーさんも言って下さいね。作りますから」
「あ、う。恐れ入ります(こんなのイケナイわ。だけど欲しいっ。断らなきゃダメなのに)」



 最近は、ミレーさん達以外にも「スキンケアアイテムを作って欲しい」と、お願いしに来るメイドさんが増えた。
 オスカー君は良い顔をしないけど、俺としてはデータも取れるし、有難いと思ってる。


「あっ、そうだ。
トキトゥ様。私と同じ化粧水とクリーム、もう1セットお願い出来ないでしょうか?」
「ん? 構わないけど、誰かにあげるのか?
一応プレゼントするなら許可が必要なんだけど」
「やっぱり、そうですよね」


 何かワケがありそうだな。
 ミレーさんが注意しない所を見ると、彼女も事情を知っているのか。
 ベイリー王子に、宮内の使用人のみアイテムを渡して良いって言われてるしなー。
 王族や貴族であっても渡すなって約束だから、とにかく王子に会わない事には。


「誰にあげるつもりなんだ?
場合によっては、殿下に聞くけど」
「良いんですか?」
「うん。だから話してみて」
「実はーーーー」


 
 話を聞くと、正直微妙だった。
 これは、化粧品どうこうの話ではないだろう。
 トリスの幼馴染であり、姉の様に慕っていたアリセラという少女が、嫁ぎ先で苦労している。
 何でも夫婦仲の問題で夫は余所に愛人を作って家に帰らない、と。

 うん。無理だな。


「それは、いくら肌を磨いた所で厳しいんじゃないか?」
「そんなっ! だってトキトゥ様のスキンケアアイテムを使い始めてから、殿方にモテるという話は私達メイドの中で有名です!」
「そうなんですか?」


 初耳の情報にミレーさんを見ると、無言で頷かれた。
 肌が綺麗だと美人に見える現象は世界共通だな。
 だが、今回は諦めた方が良いと思う。
 だってトリスは、もう答えを言っている。
「性生活がなくて義母にも嫌味を言われて気が滅入ってるんです。アリセラはスレンダーでとっても美人なんです! 愛人の方は無駄に胸がデカイだけで、腰だって締まってないし、顔もアリセラに比べて普通なのにっ」と。
 つまりだ。その幼馴染の夫は、若くて美人な妻よりも、平凡だが巨乳な女性に興奮するという事だ。
 恐らくスレンダー美人な幼馴染は、サイズが小さいんだろう。
 ハッキリ言えば、女性としての魅力を感じないから勃たないわけだ。
 贅沢な野郎め! スレンダー美人のどこが悪いんだ。モデル体型だぞ! 羨ましい、ハゲろっ。


「これは決してセクハラではないと断っておくがーートリス、付き合った事ある?」
「せくはら? おっ男の人とですか?
……いえ、まだ。ずっと働いてきたので」


 ホロリ。泣ける。大丈夫だトリス。お兄さんが良いヤツを見つけてやるからな!
 でもそんな子に言えない。
 ミレーさんに伝えて、ぼかしながらトリスに言ってもらうか?


「そうか、偉いな。
ーー悪いんだが、違う味の果実酒が飲みたくなったから、取って来てもらえるか?
種類は任せる」
「はい、かしこまりました」


 トリスに部屋を出てもらい、ミレーさんに話せば、彼女も薄々察していたらしく、怒りながらも了承してくれた。


「娶っておきながら、何て無責任な男でしょう」
「まったくだ。
でも何で結婚したんだろう。
平民同士なんですよね」 
「外に出ず、生まれ育った村で生きる人達にはよくある話です。
もちろん、恋愛結婚がメインですが、適齢期になっても相手がいないと、周囲が勝手に縁談を纏めてしまうんです」


 お節介にも程がある。よく受け入れられたな。……それが、当たり前の事だったら疑問に思わず、受け入れてしまうのか。
 姑だって息子が原因だと解っているだろうに。ネチネチいびり倒すなんて、陰険な親だ。


「離婚出来ないんですか?」
「女性からは難しいと思います。
その方の家が、夫よりも立場がずっと上なら話は違いますが」
「……トリスには悪いけど、俺は役に立てないと思うんです」
「私も同感です。トキトゥ様がお助けになる必要はございません」


 可哀想だけど、お人好しではないからなー。
 スキンケアで爆乳にはならねーし。


「トキトゥ様、お持ちしました!
こちらでいかがですか?」
「おー、ありがとう」


 持って来てくれたのは、俺がわりと気に入っているワインだった。
 いつか、好みを覚えるのが得意だと言っていたのは伊達じゃないらしい。






 しかし6日後、事態は急展する。


「トキトゥ様っ!! お助け下さいっ」


 今日のお昼は何かな~と、暢気に考えていたら、勢いよくトリスが突撃して来た。
 この部屋のドア、結構重いけどスゲーな。力持ちぃー。


「聞いてますか! トキトゥ様!」
「っはい! 聞こえてる、聞こえてる。どうした? 化粧水切れたか?」
「ちがっ、違うんですっ」


 泣いてるー?!
 ど、どどどうした!


「アリセラがっ、アリセラがあっ!!」
「幼馴染がどうした」
「てくびを……」


 手首ーーまさか…


「無事なのか!」
「ゔっ、はい。でもっ、ひっく、まだ回復もしてないのに、ひっぐ、追い出されたって、村の子から手紙がっ、い゛ま゛」


 追い出す?! そんな事が許されるのか!


「家族は? 彼女は今、親の所に居るのか?」
「いいえっ」
「じゃあ何処に」
「てがっ、手紙の子が匿ってまず。
ただっ。悪評が立ってもう庇い切れないって」
「ハアッ!? 何を馬鹿な事を!
何で親は何も言わないんだ! それにその手紙の子は何なんだ? 友人じゃないのか?」


 有り得ない。夫や姑が悪いのは、分かり切っているはずなのに、何で彼女の親は娘を守ろうとしないんだ!
 しかも自殺未遂を図った娘を、完治もしてないのに放り出すのか?
匿って悪評が立つ? 悪い事をしていない彼女が、事自体がおかしいだろうがっ。
 くそっ、胸糞悪いな。


「わだしっ、私どうずればっ」
「とりあえず落ち着け。
オスカー、トリスにお茶を」


 どうしたものか。俺に出来る事は何もない。何の力も持っていない。
だけど、ここまで聞いてしまったのに何もしないというのは……。


「うゔっ」
「トリス……」


ーーコト


「お茶をどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「いえ。トキトゥ様に言われただけですので。
それを飲んだら、帰って下さい。
ここはメイドの休憩室ではありません。
今日は仕事出来ないでしょうから、上がったらどうですか」
「っ!! も、申し訳ありません!
すぐに戻ります!
トキトゥ様、申し訳ありませんでした!」
「いやっ、とにかく落ち着いて。
ゆっくりしていけば良いから」
「ですが、うう」
「俺が良いって言ってるんだから、良いんだよ。
ごめんね、オスカーは仕事一筋だから許してあげて欲しい」
「ぐすっ」


 オスカー君、この状況で何してくれちゃってるのー!!!
 嘘でしょ。冷血漢なの、君?!
 今のはヤバイよ。立場は違えど、同じ職場の子でしょうが。


「差し出がましい様ですが、私の指示は妥当かと。
いち使用人の私情を、仕えるべきトキトゥ様に聞いて頂くだけでもおかしいのです。
彼女の配置替えについては、私から進言しておきましょう」
「オスカー! ちょっと黙って」


 何でこの子は、こんなに生真面目なのかなあ。まったく。


「はぁ、とりあえず、今は無事なんだよね? 助けられるかは分からないけど、少し方法は考えてみよう。それで良いかな? トリス」
「はい。すみません……」
「君も一緒に考えてもらうからね、オスカー
「……かしこまりました。
ーーーーでは、手っ取り早く現状を打破出来る方法がございます」
「え、マジ?」



感想 1

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みんなの感想(1件)

スパークノークス
2021.08.29 スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.08.29 豆もち。

嬉しいです。
有難うございます!

解除

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