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星司と月歌(スピンオフ1)
1. 友達
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僕と星司くんとの出会いは、中学生の時だった。
僕のお母さんの経営する小さな街の洋菓子店で、僕が手伝いをしていた時に、お客さんとしてやってきたのが星司くんだった。
父親と一緒にやってきて『母さんの誕生日のケーキを買いに来たんだ』と言っていた。
それから、星司くんは僕のお母さんが作るケーキがとても気に入ったらしく、頻繁に買いに来るようになった。
僕は小学校入学前の健康診断では、ベータと診断されていた。
他の人より体が弱く成長もゆっくりだったけど、ベータにもそういう人はいるだろうと、あまり気にも留めていなかった。
なのに、中学校入学前の健康診断で、オメガと診断された。
もともとの人見知りと、学校も休みがちだったせいか、僕には友達がいなかった。
そのうえオメガと診断されてしまったから、きっと皆嫌がるだろうと自分から距離を置くようになってしまった。
部活動は体が弱いことを理由にどこにも入らず、学校が終わるとまっすぐ家に帰った。
「ただいま。なにか手伝えることある?」
僕のお母さんの営む街の洋菓子店は、最近近くにできた大手洋菓子チェーン店のせいで、客足が減っていた。
材料費が上がってしまっても商品は値上げしたくないと頑張っていたせいで、お店の経営は赤字続きだった。なので従業員も雇えず、僕が手伝える日はお店に顔を出していた。
「月歌、おかえりなさい。いつもありがとうね。今日はお隣さんに頼まれていたケーキを渡したらお店閉めるから、お手伝いは大丈夫よ」
「うん、わかった。じゃあ、家の方の片付けしてくるよ」
一階がお店で、二階が住居になっている。建物自体もそんなに広くないから、住居部分は親子二人がやっと生活できるくらいだ。
僕はお母さんにそう言いながら二階に上がろうとしたら、お店のドアが開き、お客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませー。……あら!」
お母さんの声が一気に明るくなる。その声を聞き僕も振り返ると、そこには制服姿の星司くんが立っていた。
「星司くん、いらっしゃい。今日もお母様に?」
「はい。まだなにか残っていますか?」
この時間になると商品は殆ど残っていなくて、店を閉めるギリギリの時間というのは、星司くんもわかっているからこういう聞き方をする。
今日は比較的よく売れたのか、ショーケースに残っているのは、シュークリームとチーズケーキのみだった。
「ごめんなさいね、今日はこの二種類しか残ってないの。これでも良いかしら」
「残り全部ください」
ショーケースに残っているのは、シュークリーム四個とチーズケーキ二個だ。家族で食べるにしては多いのではないだろうか。
けれど、いつもこんな感じで残り全部を買って帰る。
「いつもありがとうね。シュークリームはひとつおまけね」
「ありがとうございます。ではそのシュークリームは、月歌くんと一緒に食べたいのですが、別の袋に分けてもらえますか?」
「え……?」
「もちろんよ。シュークリームをひとつずつ袋に入れるわね」
急に名前を出されて戸惑っている僕を気に留めることなく、お母さんはシュークリーム二個とチーズケーキ二個を箱に入れた。そして、残りのシュークリームを、それぞれ袋に入れて食べやすいようにしてくれた。
「では、月歌くんを少しお借りしますね。すぐ近くの公園のベンチで、少しお話したら戻ります。ケーキの箱は帰るまで置かせてください」
「わかったわ。お預かりしておくわね」
「じゃあ行こうか、月歌くん」
星司くんは、僕のお母さんとのやり取りを済ませると、僕の手を取ってお店の外へ出た。
いつもケーキを買いに来てくれるけど、こんなことは初めてだった。
戸惑ったままの僕に、星司くんは「同じ年の友達が欲しかったんだ」と言うと、握った手は離さず、僕を見てニコッと微笑んだ。
その日をきっかけに、僕と星司くんは友達になった。
けれど、星司くんはアルファで僕はオメガだ。僕の知っている限り、アルファとオメガの友達なんていなかった。
そのことを伝えると、「俺と友だちになるのは、いや?」と聞いてきた。僕は慌てて首を横に振ったら、「良かった」と、とても嬉しそうに笑った。
僕のお母さんの経営する小さな街の洋菓子店で、僕が手伝いをしていた時に、お客さんとしてやってきたのが星司くんだった。
父親と一緒にやってきて『母さんの誕生日のケーキを買いに来たんだ』と言っていた。
それから、星司くんは僕のお母さんが作るケーキがとても気に入ったらしく、頻繁に買いに来るようになった。
僕は小学校入学前の健康診断では、ベータと診断されていた。
他の人より体が弱く成長もゆっくりだったけど、ベータにもそういう人はいるだろうと、あまり気にも留めていなかった。
なのに、中学校入学前の健康診断で、オメガと診断された。
もともとの人見知りと、学校も休みがちだったせいか、僕には友達がいなかった。
そのうえオメガと診断されてしまったから、きっと皆嫌がるだろうと自分から距離を置くようになってしまった。
部活動は体が弱いことを理由にどこにも入らず、学校が終わるとまっすぐ家に帰った。
「ただいま。なにか手伝えることある?」
僕のお母さんの営む街の洋菓子店は、最近近くにできた大手洋菓子チェーン店のせいで、客足が減っていた。
材料費が上がってしまっても商品は値上げしたくないと頑張っていたせいで、お店の経営は赤字続きだった。なので従業員も雇えず、僕が手伝える日はお店に顔を出していた。
「月歌、おかえりなさい。いつもありがとうね。今日はお隣さんに頼まれていたケーキを渡したらお店閉めるから、お手伝いは大丈夫よ」
「うん、わかった。じゃあ、家の方の片付けしてくるよ」
一階がお店で、二階が住居になっている。建物自体もそんなに広くないから、住居部分は親子二人がやっと生活できるくらいだ。
僕はお母さんにそう言いながら二階に上がろうとしたら、お店のドアが開き、お客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませー。……あら!」
お母さんの声が一気に明るくなる。その声を聞き僕も振り返ると、そこには制服姿の星司くんが立っていた。
「星司くん、いらっしゃい。今日もお母様に?」
「はい。まだなにか残っていますか?」
この時間になると商品は殆ど残っていなくて、店を閉めるギリギリの時間というのは、星司くんもわかっているからこういう聞き方をする。
今日は比較的よく売れたのか、ショーケースに残っているのは、シュークリームとチーズケーキのみだった。
「ごめんなさいね、今日はこの二種類しか残ってないの。これでも良いかしら」
「残り全部ください」
ショーケースに残っているのは、シュークリーム四個とチーズケーキ二個だ。家族で食べるにしては多いのではないだろうか。
けれど、いつもこんな感じで残り全部を買って帰る。
「いつもありがとうね。シュークリームはひとつおまけね」
「ありがとうございます。ではそのシュークリームは、月歌くんと一緒に食べたいのですが、別の袋に分けてもらえますか?」
「え……?」
「もちろんよ。シュークリームをひとつずつ袋に入れるわね」
急に名前を出されて戸惑っている僕を気に留めることなく、お母さんはシュークリーム二個とチーズケーキ二個を箱に入れた。そして、残りのシュークリームを、それぞれ袋に入れて食べやすいようにしてくれた。
「では、月歌くんを少しお借りしますね。すぐ近くの公園のベンチで、少しお話したら戻ります。ケーキの箱は帰るまで置かせてください」
「わかったわ。お預かりしておくわね」
「じゃあ行こうか、月歌くん」
星司くんは、僕のお母さんとのやり取りを済ませると、僕の手を取ってお店の外へ出た。
いつもケーキを買いに来てくれるけど、こんなことは初めてだった。
戸惑ったままの僕に、星司くんは「同じ年の友達が欲しかったんだ」と言うと、握った手は離さず、僕を見てニコッと微笑んだ。
その日をきっかけに、僕と星司くんは友達になった。
けれど、星司くんはアルファで僕はオメガだ。僕の知っている限り、アルファとオメガの友達なんていなかった。
そのことを伝えると、「俺と友だちになるのは、いや?」と聞いてきた。僕は慌てて首を横に振ったら、「良かった」と、とても嬉しそうに笑った。
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